地下の宇宙
達哉達は、息を切らしながら平坂区の若葉探偵事務所へ向かい走っていた。
「はぁ…はぁ…まさか達哉君の学校内部に、ラスト・バタリオンが現れるなんてね。」
「カス高にはそいつらは現れていないみてーだが、
カス高はカス高ですっかり活気が無くなっちまった。
ひでー世界だぜ。」
「イデアル先生も拐われちゃうし、まずいよー!」
「拐われたのはきっとマイヤの託宣を進めるためだ。父さんの指示で…。」
「とりあえず、先に探偵事務所の様子を見てから、セブンスに向かうぞ。」
4つの水晶髑髏を手に入れ、後は天の水晶髑髏をフューラーから取り返せば、というタイミングで、舞耶姉の携帯に、探偵事務所にいたイデアル先生が拐われたと連絡があったのだ。
ギイ!といつもより乱暴にドアを開けることになってしまったが、急いで中に入り、様子を確認する。
先生が拐われた当時、いなかったと聞いていた轟所長とたまきちゃんは戻ってきていた。
もう既に手当てされたのだろう、ただしくんの無事そうな様子を見てほっとする。
探偵事務所には普段は轟所長とたまきちゃんもいるのだが、事務所の一員である、ただしくんだけが先生と一緒に残っているタイミングを狙われての襲撃だった。
「ただし。」
急いで話しかけた。
「お!周防、聞いてくれよ〜、あいつ、いきなり襲ってきたんだよ。」
「まさかここを狙っているなんてな…。」
イデアル先生を誘拐したのはプリンス・トーラスという、過去に達哉達が倒した敵だった。
「あ・い・つ・め〜!!あさっちやみーぽのこともあるし、うんとお礼してあげなきゃね!!」
ギンコは過去に2人の友人を影人間にされた事もあり、ひときわ怒っているようだ。
「でも、ただしくんが無事で良かったわ。」
舞耶姉がただしくんに安心した様子で話しかけている。
「バイオレンスな体験は好きだけれど、まさかあんな形でバイオレンスされちゃうとはね…。はぁ〜。やっぱり僕にはこういうの向いていないのかなぁ。この際ゲームメーカーにでもなろうか…。」
「ちょっとただし、しっかりしなさいよ!」
近くにいたたまきちゃんが強気な様子でそう言っている。
「俺も、ただしにはここにいてほしいと思う。」
その方が轟所長も安心だと思った。
仮面党やラスト・バタリオンとやりあおうとする人間はこの世界では少ないのだ。
街の人は、たいていこの混沌とした世界に怯えたように静かに生活するか、仮面党に属しているか、イデアリアンの存在を信じて宗教に染まったようになってしまうかのどれかに分かれる。
「周防君、ただしは私がなんとかさせるわ。
それより、周防君は七姉妹学園に行ってあげた方が…。」
「そうだな。それじゃあ、俺たちはセブンスへ行ってくる。」
たまきちゃんは軽く手を振っていた。
「気をつけてね。もしまた雑誌の懸賞の応募があったら、引き続き持ってきてくれれば手続きするから。」
「わかった。その時は頼む。」
そう言って達哉達は、七姉妹学園へ向かうのだった。