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zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 テドン編

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「さーて、次はと……」
 
「テドンやだーーっ!!」
 
船に戻るなり、思い出した様に炸裂するダウドの
ヘタレと我儘。
 
「おめえな……、いい加減にしねえと……、
海に叩き落とすぞ!?」
 
「まあまあ、ジャミルも落ち着いて……」
 
アルベルトもジャミルを宥めるが。
 
「ピキー、ねえねえ、おねえちゃん、ボク、おうたを
つくりました~」
 
「なあに?スラリン、歌?」
 
アイシャとスラリンの楽しそうにお喋りする
声が聞こえる。
 
「仲がいいねえ、二人は……」
 
見ているだけなら微笑ましい光景の二人にアルベルトも
にっこりするが、直後……。
 
「♪ジャミルはばか~、ダウドもばか~、アルベルトもばか~、
でもジャミルはもっとばか~」
 
「……」
 
「……うるせーこのウンコっ!何処が歌なんだっ!しかも何で
俺が2回も出てくんだっ!!」
 
「ピキー?」
 
「ピキーじゃねええっ!!」
 
「もうっ、ジャミルったらっ!そんなにムキになって
怒らなくてもいいでしょっ!!」
 
「何で僕まで巻き添え喰らって入ってるんだろう……」
 
「どうせオイラなんて……」
 
……4人がワーワー揉めている間に、既に日は暮れかかり、
結局、テドン付近まで船は近づいてしまっていた。
 
「テドンはこの辺だよな……」
 
「うん、間違いないね……」
 
「……キヤヤヤヤヤーー!!」
 
「ダウド、俺らはテドンに上陸するけど、お前嫌だったら
船に残ってていいぜ……」
 
「え……、じゃ、じゃあ……、それじゃオイラ一人に
なっちゃうじゃない……」
 
「そう言う事だ、さ、行こうぜ、皆……」
 
「ううう~っ!一人になるのも嫌だよおーーっ!
置いてかないでえーっ!オイラも行きますよおーーっ!!」
 
我儘ダウド、結局、皆の後を追い、テドンへ一緒に
同行する事に……。
 
「おっ、いらっしゃい!お客さんだね!」
 
「!?」
 
「君達、見かけない顔だねえ、何処から来たんだい?」
 
「ジャミル……」
 
アイシャが無意識にジャミルの手を取る。呆然とする
ジャミル達……。確かにこの村はバラモスに
滅ぼされたと聞いた。しかし、村人はちゃんと
皆生きており、村の中も別に普通に民家が並んでいる
状態で何も変った処は見当たらず……。
 
「……ふう、なーんだ、魔王に殺されたなんて、
みーんなうそっ……」
 
ジャミルが慌ててぱっとダウドの口を押さえた。
 
「どうなってんだよ………、訳わかんねえ……」
 
村には普通に人々が互いに行きかい皆お喋りをしている。
……通りの方から魚の焼けるいい匂いがしてきた。
時間的に何処の家も、もうすぐ夕ご飯なのだろう。
 
「やっぱり嘘だったんだよお!あーあ、心配して損した!」
 
「……うーん……」
 
アルベルトも首を傾げる。……考えても仕方がないので、
もう暫く村の中を見て回る事にした。

 
「ねえ、ジャミル……」
 
「ん?」
 
アイシャがジャミルを突っついた。
 
「あそこ……、何か揉めてる……」
 
見ると、小さな女の子が少年達に何か必死に
叫んで訴えている。
 
「返して!返してよ!」
 
「やだねー、おいノッポこれ川に捨ててこい」
 
「へーい!」
 
「返してーっ!」
 
「うるせんだよ、ブスっ!」
 
「あ!」
 
少年の一人が女の子の腹にケリを入れた。
 
「何やってんだよ!」
 
ジャミルが女の子に乱暴した方の少年の頭を
ポカリと殴った。
 
「いってーーっ!」
 
「……大丈夫?」
 
アイシャが女の子を助け起こす。女の子は苦しそうに
お腹を抑え、やっと声を絞り出した……。
 
「うう……、いたい……、おなか……」
 
「……コラーーッ!」
 
ダウドがガキ共を夢中で追っ掛けて行った。
 
「……たく、あいつ自分より弱いモンだから……」
 
「お願い……、ペンダントを……、取り返して下さい……」
 
「ペンダント?……あ!」
 
ノッポと呼ばれた少年がペンダントを持ってダッシュで
今にも逃げようとしている。
 
「はあ、どうしようもねえ奴らだな……」
 
「ヒ?……ヒイーーッ!?」
 
ジャミルはノッポを追掛ける。ノッポは必至で
逃げようとしたが、俊足ジャミルの足の速さに
敵う筈がなかった。
 
「放せーーっ!」
 
ジャミルに首ねっこを掴まれたままノッポが
バタバタと暴れる。
 
「放してやるからそのペンダント返せ」
 
「返すよ、返すよーーっ!」
 
ノッポは慌ててジャミルにペンダントを投げた。
 
「ほら、大事なモンなんだろ、しっかりもっとけ」
 
ジャミルが女の子の手にペンダントをぎゅっと握らせた。
 
「あ、ありがとう……」
 
「もーっ!女の子にこんな酷い事するなんて!
許さないわよ!?」
 
腰に手を当ててアイシャが少年達を叱咤する。
 
「ちくしょーっ!覚えてろーっ!」
 
少年達は慌てて逃げて行った。
 
「ジャミル、この子大変だよ!」
 
「どうした?まだ腹が痛てえのか?」
 
「いたい……、ううう……」
 
「顔が真っ青だよお!家まで送ってあげた方がいいよお!」
 
「ほら、俺が家まで送って行ってやるから、
もう少し我慢しろよ?」
 
「うん……、私のお家、靴屋さんなの、お父さんが仕事をしています……」 

「へえ、靴屋なのか……」
 
「はい……」
 
先程まで苦しそうだった女の子はジャミルの言葉に
嬉しそうに返事を返す。少し、お腹の痛みがひけてきた
様であった。ジャミルは女の子に自宅までの
道を尋ね、おぶって家まで連れて行く。
……玄関まで赴き、ジャミルがこんちわと挨拶をすると
父親が血相を変え、部屋の奥から慌てて飛び出して来た。
どうやら仕事中だった様である。
 
「フィラ!どうしたんだ!またいじめられたのか!?」
 
「うん、でも今日はこのお兄ちゃん達が助けてくれたの……」
 
ジャミル達がぺこりと父親に頭を下げた。
 
「……ああ、何処の何方か存じませんが有難うございます!」
 
父親もぺこぺこ頭を下げる。
 
「礼はいいよ、早くこの子を休ませてやんなきゃ」
 
「べ、ベッド……、シーツシーツ!」
 
父親が慌ててドタドタと慌しく部屋に入って行った。
 
 
……
 
 
「フィラ、大丈夫か……?」
 
「うん、もう平気……、お腹痛いのも大分落ち着いたから……」
 
「もう少し寝かせておいてあげた方がいいと思いますよ」
 
アルベルトが毛布を掛け直してやる。
 
「フィラ、ゆっくり休みなさい……」
 
「うん、お父さん……、お兄ちゃん達もありがとう……」
 
女の子は静かに目を閉じた。側で見守っていたジャミル達も
ほっと一安心。

ジャミル達は少女の父親の好意で一晩家に泊らせて貰う事に。
居間でお茶を頂き一息ついている。
 
「さあさあ、皆さん、夕ご飯が出来ましたよ、娘を助けて
頂いたお礼も兼ねまして、今日は腕を振るってみました、
余り大したものではないですが、ささ、どうぞ……」
 
父親が食事を運んでくる。ジャミル達はお腹も空いていた為、
好意に甘えご馳走になる事にした。