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zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 テドン編

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「味の方は如何ですか?男の私が作った物ですからあまりお口に
合わないかとは思うのですが……」
 
「そんな事ないです、とっても美味しい!」
 
鳥のマリネを一口、口に入れ、アイシャが笑った。
 
「ね、ジャミル!凄く美味しいわよね!」
 
「ん?あ、ああ……」
 
「どうしたの?お腹でも壊したの?さっきから
黙りこくっちゃって…」
 
いつもはガツガツ食事をするジャミルが異様に大人しく
食べているのを見て、普段と様子が違うのでアルベルトも
気になるらしかった。
 
「い、いや……、別に……」
 
ジャミルはこの村の事を聞きたかったのだが何故か言葉に
詰まってしまうのである。
 
「お父さん……」
 
階段から女の子が降りてくる。
 
「フィラ、駄目だよ……、まだ寝ていなくては……」
 
「もう平気よ、それよりお兄ちゃん達にお礼が言いたくて…」
 
「よかったねえ、ペンダント戻ってきて!」
 
ダウドが嬉しそうに笑う。
 
「うん……、このペンダントは病気で死んでしまったお母さんが
くれた大切な宝物なの……」
 
女の子がペンダントをそっと握りしめた。
 
「もうあいつらに取られたりすんなよ?」
 
「うんっ!あ……」
 
「ピキ?」
 
女の子がスラリンをじっと見つめている。
 
「この子も一緒に旅をしているの?うわあ、かわいい!」
 
「スラリンて言うのよ、良かったら一緒に遊んであげて?」
 
「ピキー!」
 
「いいの!?おねえちゃんありがとう!」
 
「あそんでくれるのー?うれしーい!」
 
「じゃあね、じゃあね、フィラのおへやいこ!」
 
「ピキー!」
 
女の子、フィラはスラリンを抱いて部屋に入っていった。
 
「ああ……、本当に有難うございます……、娘のあんな顔を
見るのは何年ぶりでしょうか……、母親が病気で死んでからと
言うもの、あの子は本当に笑顔を人前で見せる事は
しなくなったんです、それがあんなに……」
 
「ねーねー、お兄ちゃん達も一緒に遊ぼうよ!」
 
フィラが部屋から顔を出した。
 
「え……」
 
「玉にはいいかもよ、ジャミル」
 
「よし、一緒に遊んでやるか!」
 
「お兄ちゃん達もみんなであそぼー!」
 
4人はフィラの部屋へと移動し、お邪魔する。
 
「ねえ、フィラちゃんは何して遊びたい?おままごと?
だったら私、お母さん役かしらっ!ダウドはペットの犬で、
ジャミルは痴呆のボケおじいちゃん!えとえと、アルは……」
 
……何故かままごとの配役に闘志を燃やし、張り切っている
アイシャを見てジャミルは咄嗟に逃げたくなった。しかし、
フィラのご希望の遊びはと言うと。
 
「まくら投げーっ!」
 
「おいおい……、修学旅行かよ……」
 
「ここにあるの使っていいよ、フィラ、お父さんの部屋に
あるの借りてくる!」
 
「……おわっ!?」
 
ダウドが早速ジャミルの顔に枕をぶつける。
 
「わーい!1ヒットー!だよおー!」
 
「クソッ!やりやがったな!」
 
「お待たせー!まくら借りて来たよー!」
 
「貸してくれっ!クソ、ダウドてめーこのやろ!
撃沈しろこのやろ!」
 
負けじとジャミルも枕をポイポイ投げる。
 
「特別に僕も入ってあげるよ……」
 
アルベルトがにやっと笑った。
 
「わーい!二人でやっつけちゃおー!」
 
「……上等じゃねえか!かかってきやがれ!」
 
「もう……、何そんなにムキになってんのよ……」
 
白熱の枕投げ合戦は夜遅くまで続いた……、とは言っても
終いまでムキになって投げ続けたのはアホの男3人だけで
アイシャは呆れ、フィラはその様子を楽しそうに幸せそうに
いつまでも眺めていた……。
 
「あー楽しかった!お兄ちゃん達といると凄く楽しいよ!」
 
フィラがニコニコと笑った。心からの本当に幸せそうな笑顔だった。
 
「そ、そうかい?」
 
「これ、フィラからお兄ちゃん達にプレゼント、
四葉のクローバーです」
 
「おー、ありがとな!」
 
ジャミルが代表でフィラから四葉を受け取る。
 
「皆さんがいつまでも幸せであります様に……、それから……」
 
フィラは一瞬俯く様な素振をみせたがすぐに顔を上げて
皆の顔を見た。
 
「……フィラ、お兄ちゃん達に会えた事……、
絶対忘れないよ……」
 
「ど、どうしたんだい?急に……」
 
「フィラ、もう寝る時間だぞ」
 
父親がドアを開けて部屋に入って来た。
 
「はい、お父さん」
 
「どうもすみません、皆さまお疲れの処をこんなに遅くまで
娘と遊んで頂いて……」
 
「いや、俺達も楽しかったよ、な?」
 
フィラの顔を見てジャミルが笑った。
 
「うん!」
 
フィラもとびきりの笑顔で笑う。
 
「お休みなさい……」
 
「お休み、また明日な……」
 
4人は客室用の部屋に移動し眠りについた……、が。
 
「ジャミル、まだ、起きてる……?」
 
「アイシャか……?寝れねえのか?」
 
「うん、……何となく……」
 
ダウドとアルベルト、そしてスラリンはとっくに爆睡していて
起きる気配なし。
 
「俺もなあ、何だか落ち着かねえんだ……、
どうしたんだろう……」
 
「少し、お外歩こうか?」
 
「そうするか……」
 
ジャミルとアイシャは寝ている2人とスラリンを起こさない様、
そっと部屋を出る。フィラの父親はまだせっせと夜なべで
仕事をしている。
 
「はあ、働くお父さんて大変ね……」
 
「そりゃあな、男手一つで娘育ててんだもんな、
スゲエよな……」
 
「あら、珍しくジャミルが感心してる!」
 
「おい……、そりゃどういう意……、おいっ!」
 
アイシャは笑いを堪えながら家の外に飛び出し、
ジャミルに手を振った。
 
「……たく~!」
 
二人は静かな夜のテドンを歩いてみる。……夜空には大きな
月が出ている。本当に静かな夜であった。……外を歩こうと
言ったものの、何故か会話が上手く出て来なくて、二人は
黙りこくってしまう。
 
「おい、何か喋れよ……」
 
「ジャミルこそ……、今日はおかしいわよ、いつもみたいに
何でお喋りしないの?」
 
「……」
 
こんな感じで。ウロチョロ外を歩き回る事、約30分。
このままではどうしようもないのでやはりもう、フィラの家に
戻って寝ようかとも思ったが……。
 
「ジャミル、ここ、牢屋だわ……」
 
アイシャの言葉に正面を見ると……、淋しげな牢屋が
ひっそりと。そして近くには……、大きな毒の沼地が
広がる場所が……。のんびりとした感じの村にこんな
場所があるとは思いも寄らなかった二人であった。
 
「本当だ……、最初に村を彼方此方歩いてた時は
気が付かなかったけどな……」
 
「ジャミル、何だか……、毒の沼地を見ていたら急に気分が……、
不安になって恐くなってきたの、……どうして……?」
 
「アイシャ、大丈夫だろ、別に……、色々考え過ぎだよ、
偶々村ん中に……沼地があったって言う事だけだよ……、な?」
 
「そうなのかな……」
 
「……アイシャ……」
 
アイシャはまた無意識にジャミルの手をぎゅっと握っていた。