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zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 オリビア&エリック編

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「……やっぱり、この先、話を進めるにはあの岬を
通るしかないよ……」
 
アルベルトが地図を見ながら岬を指差す。突然おかしな
声が聞こえ、岬を通ろうとした船が無理矢理引き戻された
場所である。
 
「だって……、あそこ変な声するし……、頭も耳も
痛くなるし……、通りたくないよお……」
 
「変な声か……、そういや聞き取りにくい声でエリックって
聞こえたな……」
 
「ジャミルもなの!?私もよ……」
 
「僕も聞こえた……」
 
「ひーっ!怖いよぉぉぉー!!」
 
「きっとあそこの岬で何かあったんだな……、
それさえ解れば……」
 
「誰か知ってる人いないかな……」
 
「……う~ん……」
 
あれこれ考えているうちに日は暮れ、夜になってしまう。
更に夜も更け、皆が寝静まった頃、ジャミルは一人で起きて
甲板に出て海を眺めていた。
 
「……しかし便利な船だ……、勝手に動くんだから……」
 
「ジャミル」
 
「アイ……、何だ……、オメーか……」
 
声に振り向いてがっかり。ダウドだった。
 
「アイシャが起きてきたと思った?残念でしたー、
オイラでーす」
 
「……早く寝ろよ……、タダでさえ疲れると愚痴が出る
ヘタレなんだからよ……」
 
「うるさいよお、ジャミルだって起きてるじゃん」
 
「俺はダウドと違って色々悩みがあんの」
 
「朝ごはんの事?」
 
「……」
 
「それともおやつかな?」
 
「……早くねろっつーの!!」
 
「……ちぇ、わかったよお……、そんなに怒らなくても
いいじゃん、ふんだ……」
 
ダウドは口を尖らせてしぶしぶと船室に戻って行った。
 
「……たく、俺だって玉には考える事ぐらいあるんだぞ……」
 
ジャミルが溜息をついた。
 
「……オーブもあと一つ、あと一つで確実に
バラモスんとこまで行けちまうんだ……」
 
……静かに波の音だけが聞こえる。
 
「ま、やれるだけやってみるか、辿り着けたらな……」
 
 
……
 
 
次の日の朝、ジャミルはトーストを3枚齧り、目玉焼きと
サラダをおかわりした。
 
「全く、風邪が治ったと思ったら……、
すぐこれだよ……」
 
この間熱で魘されていた時とは段違い、しっかり
食欲を取り戻したジャミルを見てアルベルトが呆れる。
 
「いいのっ!俺の生きがいなんだから!」
 
ジャミルが幸せそうにトーストを齧った。
 
(私は、ジャミルのそういう明るい所が大好きなんだよ……)
 
アイシャがくすっと笑った。
 
「……どうやったら岬を通れるか、方法考えておいてね……」
 
「アル、判ってるよ……、でも……、どうすりゃ……」
 
 
「うぎゃーー!……ジャーミールうううーー!!」
 
 
ジャミルがまたトーストに噛り付いたその時……。
甲板からダウドの声が響き渡る。やれやれと思いながら
仕方なしにトーストを銜えたまま甲板に行くと……。
 
「……ジャミル!来て来て!!早く!!大変なんだよお!!」
 
「何だよ、どうしたんだ?」
 
「早く来てー!!早く早くー!」
 
「だから何やってんだよ、お前……」
 
ジャミルが行ってみるとダウドはかなり慌てている様子。
 
「ふ、ふざけて……、この船乗りの骨を回して遊んで
たんだよお……、そしたら……」
 
ダウドが海の方を指差す。……確かに見た事の無い
ボロボロの船が一隻近づいてきた……。
 
「何だ?あの船……、まさかあれが幽霊船なのか……?」
 
「急に骨が勝手にくるくる回りだして……、あの船が
近づいてきたんだよお!」
 
「う~ん、行ってみるっきゃねえか……」
 
「……ひいい~っ!オイラ嫌だよお~!」
 
……ダウドは速攻で拒否するが無視してジャミル達は
自分達の船を横付けし、幽霊船に上陸してみる事にした。
 
「スラリン、いい子で待っててね」
 
「ピキー!」
 
一番行く気のないダウドにスラリンを預け、今回は
3人だけで行動する事にした。
 
「……気を付けてね、なるべくお早いお帰りを……」
 
「ピキー!いってらっしゃーい!」
 
ダウドとスラリンに見送られながら3人は幽霊船
内部へと侵入する。
 
「幽霊さんかかってきなー!」
 
「何だかちょっとドキドキするね……、それにしても、
凄い貫録のあるお舟ねえ……」
 
「宝モンがあるといいよな!」
 
「……そんなに簡単に見つからないよ……」
 
「ケッ!夢がねえなあ!アルは!!」
 
「……はあ、ジャミルが夢見過ぎなの、少しは現実を見たら?」
 
「……何だとう!?この腹黒っ!」
 
「ちょっと待って!アイシャが……」
 
……二人が討論しているちょーっと!……の、間に
またいなくなったらしい。
 
「……うー……、チョロチョロすんなって何回言ったら……、
あのジャジャ馬め……」
 
「静かに……!何か聞こえる……」
 
船室らしき扉の前でアルベルトが立ち止まる……。
 
「は?だってこの船、もう無人の筈だろ?
……人なんかいる筈がねえよな、つーことは、
いよいよ幽霊とご対面か!?」
 
 
♪それいけやれいけへいへいほー、あらしのうみでも
のりこえろ~
 
 
しかし、確かに扉の中から声がするのである。しかも
集団音痴な歌声が聞こえる……。
 
「幽霊の音痴集団か……」
 
「……う~ん、僕らよりも先に誰かが入り込んでると
言う事もありえ……」
 
 
♪へいへいほ~、ほいほいへ~……
 
 
「くっくくく……」
 
「駄目だよ……、黙ってなよ……」
 
「分ってるけど、クククク……、も、もうダメ……、
我慢できねえ……、あはははは!」
 
「……ジャミルっ!!」
 
「何すんだよ!放せよ!くすぐってーな!」
 
「……何してるの?ジャミル、アル……」
 
「は……」
 
「アイシャ……」
 
気が付くと、バトルを始めた二人の目の前に
いつの間にかアイシャが突っ立っていた。
 
「……おいコラ!何処行ってたんだよ!」
 
「静かにしてってば!」
 
「ちぇ……」
 
「えへへ、ちょっと探検……」
 
「だから……、勝手に一人で行動しちゃ駄目だよ……」
 
「ごめんなさい……、新しい場所ってつい嬉しくって……、
なんだかワクワクしちゃうの……」
 

「でもやっぱり単独行動は駄目だよ……、
気を付けてね……」
 
「うん、ごめんね……、でもやっぱり冒険て楽しいね!うふふ!」
 
ちょこんとアイシャが謝る。元気でその可愛らしい姿に……、
やっぱりアルベルトもついつい本気で怒れずどうしても
甘くなってしまうのである。
 
「でも、こいつら何してんだ?ちょっと覗いちゃえ!」
 
ジャミルがドアの隙間からちらっと中を覗くが……。
 
「?」
 
「な、何か見えた…?」
 
「おかしいな……、やっぱり誰もいねえ感じだ……」
 
「確かに中から歌声はするのに……」
 
「あーん、気になるわあー!」
 
「……よ、よーしっ、開けるぞおーー!」
 
……ジャミルが思い切って扉を開けてみると、
……やはり中には誰もいないのである。
 
「マジでどうなってんだよ……」
 
「ジャミル……、上……」
 
「は?」
 
「今度は上だよ……」