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zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 オリビア&エリック編

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♪それいけやれいけへいへいほーあらしのうみでものりこえろ~
 
 
……先程の集団音痴歌が今度は甲板の方から聞こえてきた……。
 
「うわ、マジで下手糞な歌……」
 
「どうなってるの!?どうなってるの!?キャー!!」
 
アイシャが甲板目掛けて走り出す……。
 
「……だから!勝手に動くなーーっ!!」
 
慌ててアイシャを追ってジャミルも走って行く。
 
「……ふうー……」
 
……甲板に行くと数人の男達がオールで船を
漕いでいた……。今度はちゃんと人の姿が確認
出来たが……、どう見ても幽霊には見えないのである。
 
「おい、本当にどうなってんだ?乗り込んだ時には
確かあんな奴らいなかったよな?」
 
「あの人達って……、やっぱり幽霊なのかしら?」
 
「けど、あいつら足があんぞ……」
 
「……あっ、大変!私達の乗ってきた船が……、
無くなってる……」
 
「何!?」
 
「ここは幽霊船の筈……、僕らの乗って来た船が無い……、
うーん……、もしかして……、この船が沈没する前の
時代にタイムスリップでもしちゃったのかな……」
 
「……んな、アホな!!」

「……其処に誰かいるのか!?」
 
一番前でオールを漕いでいた男がオールを漕ぐ手を止め、
他の船員も一斉にジャミル達の方を振り返る……。
 
「……まままま!まずいっ!」
 
3人は急いでその場を逃げようとしたがあっさり捕まる……。
 
 
……
 
 
「おいお前ら、こんな船に乗り込んでどうするつもり
だったんだ?此処は流刑船だぞ……」
 
「え……」
 
「うそ……」
 
「もしかしてこの船乗っ取るつもりだったのか?だったら
面白れえな!がはははは!」
 
男達は集団で声を揃えて笑った。ジャミル達3人は
ちらっと目線を合わせる。
 
「でも船長、こいつらどうします?無断で船に乗ったんですぜ?」
 
「そうだな……、定番の……、簀巻きで海に放りこんでやるか……?」
 
「……嫌っ!!」
 
アイシャが脅え、ジャミルの後ろに隠れた。
 
「もういいじゃないですか、船長……」
 
……人の良さそうな、綺麗な顔立ちの青年が
ジャミル達の前に立つ……。
 
「この子たちも反省してるみたいだし……、でも、君達……、
幾ら悪戯とは言え度が過ぎるよ……、もう二度とこんな
事はしては駄目だよ……?」
 
(俺は小学生か……)
 
「甘えなあー、おめえは相変わらず……」
 
結局、ジャミル達は青年に免じて許して貰える事に
なったのだが……。
 
「もうすぐ、休憩で船が一旦港に着くから……、そうしたら
降ろして貰えるよ」
 
「……」
 
「ねえ、あの兄さんなんて言う名前だい?」
 
ジャミルは少し一休みしているおっさんに庇ってくれた
青年の事を訪ねる。
 
「エリックの事か……?」
 
「……エリック?」
 
「何処かで聞いた事が……」
 
 
「……あーーーっ!!」
 
 
3人が一斉に声を揃える。岬で聞こえた
不思議な少女の声はエリックに会いたいと
小さなか細い声で言っていた。もしも岬の声の
少女が探しているエリックが此処にいる
エリックだとしたら……、此処で岬の声の主と、
エリックとの関係が何か分るかもしれなかった。
 
「……コラ!!ガキ共!!てめえら静かにしてねえと
本当に海に放り込むぞ!!」
 
船長が3人に向かって怒る。
 
「本当にいい奴だよ、あいつは……」
 
「?」
 
「何処で人生がとち狂っちまったのか知らんが、
あいつは無実の罪で
此処に送られたらしい……、かわいそうにな……」
 
「何でまた……、酷えな……」
 
「あいつは余分な事は喋んねえからこっちもあまり
詳しい事は聞かねえけどよ……」
 
「……エリックさん……」
 
アイシャがエリックを見た……。
 
「でもな、アイツのお蔭で俺達は救われたのさ、
エリックの真っ直ぐな心を見てるとな……、
もしも生きて此処を出られたら……、今度こそ
真っ当な人生を送りてえなーって……」
 
「すみません、少し交代して下さい、手が痛くて……」
 
エリックが此方にやってくる。おっさんは快く漕ぎ手を
エリックと交代した。
 
「ああ、いいよ、休め休め」
 
「ねえ、ジャミル……、流刑船て言うから、もっと怖い人達
ばっかりなのかなーって思ってたけど……、そうでもないのね……」
 
「そうだな……、イメージと大分違うな……、この流刑船の奴ら、
幾ら何でも呑気過ぎるなあ~……、何だこりゃ……」
 
……極悪人ばかりが送られる様な通常の恐ろしい
イメージと違い、この流刑船は本当にクルーもいい人
ばかりの変わった船の様である……。
 
「やっぱり僕らは……、この船が沈む前の時代に
来ちゃったみたいだね……、……不思議だね、そんな事が
あるのか本当に考えたくないけど……」
 
「だとしたら……、おい、やべえぞ、早く元の時代に
戻んねーと……、この船の先の未来が幽霊船なら……、
俺らも海の底に沈んじゃうんじゃね……?」
 
「ええーっ!?ど、どうしよう……!!」
 
「……落ち着いて二人とも、まずは落ち着こう……、
必ず元の時代に方法が有る筈だから……、多分……」
 
落ち着こう、落ち着こうと言っているものの、やや
アルベルトも不安げな声である……。
 
「多分……?」
 
 
「オリビア……」
 
 
「うーん?何見てんだ?」
 
「わあっ!?」
 
……一休みしているエリックの処に早速ジャミルが
お邪魔。……茶かし始める……。
 
「ペンダント?あ、写真入ってんなあ、どれどれ?」
 
「……これは僕の……、恋人の写真だよ……」
 
「……恋人お!?」
 
「……こ、こら!声が大きいよ……!」
 
エリックが慌ててジャミルの口をぱっと塞いだ。
 
「す、すいません、どうもプライベートを……、
駄目じゃないか!もう!たくっ、お邪魔虫っ!……糞虫っ!!」
 
アルベルトが慌ててジャミルをぐいぐい引っ張る。
 
「だってよお……、てか、最後のは余計だっ!!」
 
「ははは、エリックう、又彼女の写真見てたな!」
 
「にくいねえ、この!」
 
船員達もオールを漕ぎながらエリックを茶化す。
 
「……あわわわわ!」
 
「わ、悪ィ……」
 
「いいんだよ、いつもの癖でね……」
 
そう言ってエリックは淋しそうにペンダントを眺めた。
 
「僕はもうもしかしたら……、彼女の所には戻れないかも
知れないのに……」
 
「エリック……」
 
「そんな事ないわよ!」
 
アイシャがエリックの前に立った。
 
「え……?」
 
「諦めちゃ駄目よ、信じなきゃ……、大切な人の所へ
絶対に帰るんだって……」
 
「で、でも、アイシャ……、エリックの未来は……」
 
「……ジャミル」
 
そう言いかけたジャミルをアルベルトが突く。
 
「信じて、願いはきっと届くわ……、あなたの
恋人さんだってエリックさんが帰ってくるのを
きっとずっと待ってる筈よ!」
 
「そうだね……、お嬢さん有難う、僕は大切な事を
忘れ掛けていたよ……、絶対に生きて彼女に又会うんだ、
その信じる気持ちをね……」
 
「そうよ、エリックさん!」