炎のような熱気の太陽光、深淵のような混沌の闇
この日、達哉達は街から少し離れたところにぽつんとある、商業施設を訪れていた。
「わ〜!1階はご飯屋さんがたくさんあるんだね!情人!」
「そうだな」
この日も晴れていてやたら暑く、炎のような熱気を感じていた。そして、太陽光がずっと離れないかのように照らし続けている。
今回ここに来たのは、気分転換のためだった。
シバルバーを探索し始めてからしばらく経ち、B9Fにて最深部らしき扉の場所はわかった。
あとは、準備を整えてフューラーや淳の父親と対峙するために乗り込むだけだ。
…ただ、舞耶姉や淳は過去の思い出によって心を振り回されたりといった事があり、しかもシバルバーの内部は長い道のりだった。
一度街に戻って、ゆっくり回復し、準備してから向かうつもりだ。
…そして、この内部にお気に入りの場所があったので紹介したいと思ったのもある。
「けっこう広々しているのね〜」
舞耶姉は元気そうだ。
ここは、色々なお店が入っていて、中も広々していて居心地が良い。
ラスト・バタリオンも出現する世の中だからか、人は居るものの、そんなに多くないためか、やたら解放的に感じる場所だった。
…ただ、残念なのは定期的にお店が閉店していく事だった。
「…本当はもっと前には、本屋もあったりしたんだが…」
「閉店しちゃったのかい?」
達哉は頷いた。
「だが、淳にとって嬉しいお店もあると思って、来たんだ」
「わー、情人、木の家具が置いてあるよ!
色がきれーい!!」
建物の中には、食べ物屋や家具屋、コンビニ等様々なお店が入っているのだった。
「タッちゃんが来たかったお店って、どこにあるんだ?」
「…この上の階なんだ」
そして、エスカレーターで3階に向かう。
上がった後、少し歩いて行くと、左右に広い、植物を扱う大きなお店が現れた。
入り口近くには、化け物のような、アートのような大きな木が色々な場所に飾ってあった。
横に広い店内には数多くの様々な植物がそこら中に置いてあり、建物の中なのにジャングルみたいになっている。
珍しい植物やユニークな雑貨が、色々と置いてあった。
「色んな植物や、ガーデニングとかにも使える道具とかも色々置いてあるんだね」
淳は興味津々といった様子で、楽しそうに店内を見ていた。
「ここから上に行けるぞ」
店内を色々見た後、そう言って、達哉はその植物のお店の中にある、エスカレーターの場所へ案内した。
そうして上がった4階、そしてさらに上の5階には庭園がある。
そこが達哉の最近のお気に入りの場所だった。
お店の透明なドアを押して、外に出る。
だだっ広い空間に、あちこちにたくさんの植物が見受けられた。
自由に座れる椅子や机があちこちにあるが、
人はあまりいないし来ない。
屋外でありながら、辺りにたくさんの植物があるからかやたら風が気持ちいい。
気にせずのんびりできて落ち着けるところだった。
相変わらず太陽光が照らしているものの、植物がたくさんあるからか、そんなに暑く感じない。ここでしか感じることのできない空気の気持ちよさが、癖になっていた。
「こっちには小さな畑もあっていい所だね、達哉」
「あぁ。静かな場所で過ごしたい時に、よく来るんだ」
淳は、少し遠くに見えているオレンジの花を見つめながら話し出した。
「…僕も、まだ皆に伝えていないけれど、おすすめの場所があるから、今度紹介するよ。たくさんの花が咲いて、綺麗な場所なんだ」
「そうか…。楽しみだな」
決戦の日は近いはずなのに、不思議と、皆と一緒なら大丈夫と思えた。
庭園を見て回り、下の階に降りてきた後、永吉がコンビニで買いたいものがあるという事で、皆で入ることにした。
永吉が店内をうろうろして買いたかったものは、化粧崩れをサッと取るシートだった。
「この時期は俺様のビューティフルなお顔が崩れやすいからな、大変だぜぇ。」
ギンコは呆れた様子で見つめている。
「さっすがナルシストよね〜。
でも!情人はパンツと違って変な化粧しなくても十分かっこいいよ!」
ギンコはそう言って、先ほどまで達哉がいた場所に振り向いたが、そこに達哉の姿はなかった。
「あれ?」
「おい、ギンコのやつ今変な化粧とかって言わなかったか?」
そこへ、舞耶姉がちょうど歩いてきた。
「フフフ、二人とも仲がいいわね〜」
達哉は、店内を適当にうろうろしていた。
最近のお菓子はこういう物があるのか…と思いながら、ふらふら歩いていた時だった。
特別そこを見ていたわけではないのに、通路を通り過ぎようとしたら、文字が目に飛び込んできたみたいに、やけにそこだけはっきりと、視界に映った。
『濃いめのり塩』
(…濃いのり塩だと!?)
かなり驚きながら、立ち止まりポテチの袋をしばらく凝視していた。
近くに来た永吉が反応する。
「そうか、タッちゃんのり塩のポテチ好きだったのか。」
「あぁ。…濃いのり塩なんて初めて見たぞ。」
「ポテチかぁ…俺はスタイルのためにもうずっと食べてないけどよ、癖になる味だよなぁ。」
その後、その濃いめのり塩ポテチをお買い上げした。
…広めで、品揃えもいいコンビニだった。
そうして、皆とはその後解散する事になった。
作品名:炎のような熱気の太陽光、深淵のような混沌の闇 作家名:きまま