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zoku勇者 ドラクエⅢ編 完全版 お嬢の逆襲編

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漸く全てのオーブが揃い、後はレイアムランドに向かい不死鳥
ラーミアを復活させるだけ。一つの大きな仕事を乗り越えた……と、
4人は思っていた。だが、すぐに安心して油断し、必ず騒動に
巻き込まれるのがこのPTのお約束と要ともなっていた。
 
「ダウド、今までのオーブはちゃんと保管してあるだろうな?
アイテム管理係なんだからよ」
 
「大丈夫だよお!オイラ、お宝収集に関してはうるさいんだからねっ!」
 
船内での夕食時、今日はオーブが全て揃った事を記念し、
休憩も兼ねてお祝いパーティの最中。いつもの食事よりも、
ほんの少しだけ、ちょっと豪華なディナータイムを楽しんでいた。
ちなみに、今日は全員で分担して手伝いながら夕食を作ったんである。
 
「この鮭のムニエル、バター風味で美味しいわあー!」
 
「ピキー!」
 
スラリンにおすそ分けしながら料理を食べて燥ぐアイシャ。
 
「だよな、こうやって普通に食ってると、バターじゃなくて、
本当はマーガリンなのも忘れるなあ……」
 
「こ、こらっ!余計な事言わなくていいんだよっ!」
 
「……あいてっ!この腹黒めっ!」
 
「低価格材料でもなんでも、おいひー、おいひーよおお!」
 
「もう、ダウドったら、オーバーねえ、うふふ!」
 
「……」
 
そんな賑やかな彼らの夕食のやり取りの会話を……、船の外で
じっと聞いている謎の人物が……。
 
 
「はあ~、食った食った、世の腹はポンポンじゃ、
うふ、幸せ~……」
 
夕食が済むなり、船室のベットへと即ダイブするジャミル。
 
「また……、そうやって食べた後、直ぐにゴロゴロすると
牛になるよ……」
 
「違うよ、アル、ブタだよお……」
 
「うるせー!バカダウドっ!!」
 
「ジャミル達はお部屋に行ったわね、さあ、スラリン、私達は
夜の水浴びに行きましょうね」
 
「ピキー!いくー!」
 
「……」
 
アイシャはスラリンを連れ、船の外に出て、船から離れた
距離の海の方へ。……そんな一人と一匹の後を窺いながら
こっそり付いていく謎の怪しい影。
 
 
……
 
 
アイシャとスラリンが水浴びに船を出てから一時間が
経過し……。ジャミルはあのまま本当にゴロゴロしたまま
眠ってしまっていた。アルベルトも本を読み掛けのまま、
机に突っ伏し、いつの間にか寝ている。本当にお疲れモード
なのである。ただ、ダウドだけは休憩室で一人、
眠らずスナック菓子を食べ、ボーっと休んでいた。
 
「はう~、こうやって何もしないでいるのって……、
幸せだよお……」
 
「……はう~」
 
「はうっ!?……ア、アイシャっ!?」
 
気が付くと……、いつ戻って来たのか、アイシャが休憩室の
入り口に突っ立っていた。
 
「いやだなあ~、帰って来たのなら帰って来たって
言ってよお~、あはは……」
 
「えーと、オーブはあるです?」
 
「……え?」
 
戻って来るなりアイシャは突然奇妙な事を口走り、
ダウドは首を傾げた。
 
「ちゃんと保管してるってばあ~、ンモ~、アイシャまで
オイラの事そんなに信用出来ないワケ?」
 
「そんな事はどうでもいいんです、さあ、オーブを
お見せってのよ!」
 
「……アイシャあ~……、わ、分ったよお、そんなに
言うなら取ってくるよお~……」
 
ダウドはいそいそと船室へ。……この時点でアイシャの様子が
おかしかったのに全然気付かずの盲点であった。何かが
起ろうなどとは全然予測もしてないしー!?……だった。
 
「ハア、持って来たよ……、ちゃんと数確認してよ、
きちんと6個ある筈だよお……」
 
「ありがとうごぜえます、ダンドさん」
 
「は……、はいい!?……ア、アイシャっ!!」
 
……アイシャはオーブの入っている宝箱をダウドから
引っ手繰ると休憩室を飛び出して、物凄い勢いで廊下を
走って行く。慌てて後を追おうとするダウド。漸くダウドも
アイシャの様子がおかしいのに、感づき始めていた……。
 
「……いないっ!?ど、何処へいっちゃったのっ!?」
 
アイシャは確かに甲板へと続く階段を駆け上がって
行ったのである。しかし、ダウドが甲板に上がった時は、
アイシャの姿など何処にも見えず……。
 
「ピキー……」
 
「スラリン!?」
 
アイシャはいないが、眠そうな顔をしたスラリンが
甲板に上がってくる。ダウドは慌ててスラリンに話を
聞こうと駆け寄るが。
 
「ダウド、おねえちゃんさがしてるの?……おねえちゃんなら
もうおへやですやすやだよ……」
 
「……えええっ!?」
 
ダウドは慌ててスラリンと共にアイシャが寝ている船室へ。
確認を取ると確かにアイシャはもうベッドで眠っていた。
 
「……すや~……」
 
「何がどうなってんのお?……さっきのアイシャは一体……」
 
「ピキ~……」
 
「私ですが、おさしぶりぶりぶり」
 
「えっ?」
 
「……」
 
ダウドの後ろからダウドの肩を誰かがちょんちょんと突く。
後ろを振り返ると、其処にいたのは……。
 
 
……アーーーーーーーッ!!
 
 
「……な、なんだなんだっ!!」
 
「!?」
 
船内に響き渡る只事でないダウドの悲鳴に眠っていたジャミル、
アルベルト、アイシャまで目を覚ました。一番近くで悲鳴を聞いた
アイシャが真っ先に廊下に飛び出ると、ダウドが泡を吹いて
ひっくり返って倒れていた。
 
「ピキー!ダウド、ダウドっ!」
 
「どうしたの、これっ!何があったの、ダウド、しっかりしてよっ、
ねえったら!!」
 
「……あ~う~……」
 
「どうしたんだっ!!」
 
「ジャミル、アル、大変っ、ダウドがっ!」
 
ジャミルとアルベルトも駆けつけ、ダウドの状態を確認するが……。
何かとても恐ろしい物と遭遇してしまった様な……、そんな引き攣った
表情をしていた……。
 
「ダウド、おい、しっかりしろよ、おいったら!」
 
「……ジャミル、取りあえず僕らの船室へ運ぼう……、ん?」
 
アルベルトが周りを見ると、オーブの入った宝箱が放置してある。
盗まれたのかと思いきや、中を開けるとオーブはそっくりそのまま入っていた。
 
「何でこんな所に出しっぱなしに……」
 
「何かあったのか?」
 
「うん、何故かオーブの入った宝箱が廊下に……、
さっぱり分からないよ……」
 
「とにかく、こいつを部屋まで連れて行かないと……、
やれやれ……」
 
この時、アルベルトはオーブが既に偽物にすり替えられていた
事実と状態に全然気が付かなかったのである……。
 
そして、アイシャに化け、ダウドが顔を見て気絶し、
遭遇した人物とは……。アープの塔で会った、あの破壊屋お嬢であった……。

「……あれ?」
 
「ダウド……」
 
ダウドが目を覚ますと、船室のベッドの上。ジャミル達が
心配そうにダウドを見守っている……。
 
「あれ?あれえ?オイラどうしたの……?」
 
「どうしたのじゃねえだろうが、全くよう……」
 
「だ、だって、オイラ、アイシャに……、あ!」
 
「きゃ!?」
 
ダウドは思い出した様にベッドから飛び降りると
アイシャに詰め寄る。