黄金の太陽THE LEGEND OF SOL30
「私もアレクスと戦うべきだと思います。いくら同族とは言っても、彼はそんな理由で許されない事をいくつもしてきました。同族として私にできることは、彼を止める事。ロビン、私も戦います!」
メアリィは思いもよらず、完全に決意していた。
「 メアリィ、無理をしていないか?」
ロビンは訊ねた。
「私の心は揺るぎません! 早くアレクスの所に行きましょう、全てが手遅れになる前に……!」
「メアリィ……君の決意、ひしひしと感じるよ。分かった、一緒にアレクスを倒しに行こう!」
もはやアレクスを倒すことに躊躇する者はいなくなった。
「よし、アズールを追いかけよう」
一同は甲板に出た。
「ふわっ、寒っ!」
誰かが寒さのあまりに声を上げた。
外は猛吹雪となっており、その寒さは痛いほどだった。
すっかり雪の積もった甲板に、アズールが立っていた。
「話しはついたようやな?」
アズールは、誰にともなく訊ねた。
「ああ、待たせたな。オレ達は行くぞ、アレクスを倒しにな!」
ロビンが言った。
「そうか、ほんなら行こか。この猛吹雪、かなりの水のエレメンタルを宿しとる。水中とそないに違いはない、オレの本当の姿、力を十二分に発揮できるで……!」
アズールは念じると、その身を宙に浮かばせた。
「はああ……!」
更に気合いを込めると、アズールの体の周りの雪が水に変わり、アズールを中心に渦が巻き始めた。
渦は人一人包む程度であったが、次第に巨岩ほどの大きさとなり、最後にはレムリアの船の半分を包むほどになった。
そして巨大な渦は弾け飛び、中から蒼く、一角を持った水竜が姿を露にした。
「グアアア!」
完全に水竜の姿となったアズールは咆哮を上げた。
アズールは、金色の瞳をハモに向けた。ハモの心の中に語りかけていた。
「分かりましたわアズール。『リード・テレパシー』」
ハモは、心で語ることのできるエナジーを発動した。
『オレの心、読めとるようやな、ハモさん。この姿だと言葉が喋られへんからな』
アズールは皆の心に語りかけた。
「アズール、変身は成ったようだが、これからどうするつもりだ?」
ガルシアが訊ねた。
『この船を泡に包むで。このまんまやったら、みんな寒さでやられてまうからな』
アズールは身を翻し、顔を船に向けた。そして大きく息を吸い込むと、大きな泡を風船を膨らませるように吹き出した。
レムリアの船は巨大な泡に包まれた。
ウェイアードを襲う吹雪の風は、アズールの出した泡に阻まれ、船上は思うほど寒くはなくなった。
『これでよしや。アレクスの所まで行くで!』
アズールは再び身を翻し、レムリアの船の船首に尾を絡み付けた。
『引っ張っていったる。浮遊できるか? このままやったら、船を引きずり回す事になるからな』
「よし、みんな、一斉にエナジーを発動するぞ!」
ロビンが先陣を切った。
それぞれが返事をすると、仲間達もエナジーを発動した。
エナジーを受けたことで、レムリアの船の翼は光り輝き、 羽ばたき始めた。
ーー待っていろ、アレクス!ーー
ロビンが思う中、レムリアの船は、アズールに引かれて空を進むのだった。
作品名:黄金の太陽THE LEGEND OF SOL30 作家名:綾田宗