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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL30

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『リード・テレパシー』
 アレクスは、ロビン達の脳裏に言葉が伝わるようにした。
『聞こえますか? ロビンとその仲間の皆さん』
『その声は、アレクス!?』
 メアリィの声がアレクスの頭に届いた。
『ほう、貴女が真っ先に反応しましたか、メアリィ。ですが私は単なるアレクスではありません。超神(ゴッドエクセッサー)アレクスです』
 アレクスは、言葉を返した。
『ゴッドエクセッサー……神をも超えたと言うのですか?』
 再びメアリィの言葉がアレクスに届いた。
『フフフ、その通り。貴女のお仲間にイリスという、ソルに導かれし虹の女神がいらっしゃいますよね? なんでも天界で最強の力を持っているとか。私はその何十倍も大きな力を得たのです!』
 アレクスの言葉はハッタリではなかった。
『アレクス、と言いましたか? 確かに力はこの私をも超えているようですね……』
 遠く離れた場所にいるイリスであるが、アレクスの力は感知していた。
『イリスさん。貴女の最強の力を、私は見てみたいのです。アルファ山までご足労願いますか?』
 アレクスは戦いを挑んだ。
『ああ、そうだ。ロビンとその仲間達も一緒に来てくれても構いませんよ? 超神の力の前では何人たりとも敵わない事を、その身を持って知らせてあげましょう』
 超神と化したアレクスは、どんな力にも負けない自信に満ちていた。
『もっとも、私が起こした吹雪の中、突き進めるのは、イリスさんだけかも知れませんけどね』
 ロビン達の船が停泊するのは、雪など降らないアテカ大陸である。そのような環境下で吹雪が吹き付けており、雪の重みで船を飛ばす事ができなかった。
「アレクスめ……!」
 このどうにもならない環境下でロビンは歯噛みをした。
『お待ちしておりますよ。アルファ山の頂上でね。フハハハ……』
 アレクスの声は聞こえなくなった。
    ※※※
 アレクスの誘いを受けたロビン達は、これからどうするか話し合っていた。
「全ての黒幕はアレクスだったんだな。オレ達に錬金術を解放させて、それを得るつもりだったんだな……!」
 ロビンは言った。
「それで、どうするつもりだロビン? 奴の言う通り、アルファ山へ向かうのか?」
「当然だ、ガルシア。だが、問題はどうやってアルファ山まで行くかだ」
 世界は今猛吹雪に包まれている。船で飛んでいくのは危険であり、歩いて進んでは何日もかかる。
「なあ、こういう時こそ『テレポート』じゃねぇか?」
 ジェラルドは言った。
「それが、できないのよ」
 シバが答えた。
「できないとは、一体どうしたことだ?」
 ガルシアが訊ねた。
「アレクスの気配がどうしてか世界中にあって、本物の位置が分からないのよ」
「気配がウェイアード全域にだと? そのようなことがあるはずがない。奴はアルファ山頂上にいるのだからな」
「本当なのガルシア。アルファ山に飛ぶための念を込めているんだけど、どう言う訳かぐちゃぐちゃしたものが返ってくるだけなのよ」
 空間転移を行う『テレポート』はその性質上、行き先がどこか分かっていなければ発動できなかった。もしも無理に発動すれば、異次元に飛んでしまう危険があった。
「私が少し調べてみます」
 ハモが闘霊の力を使って予見をした。
『プリディクト』
 ハモの目にアルファ山が写った。
「これは……!?」
 ハモは驚いた。
「どうしました、姉さん?」
 イワンは訊ねた。
「アルファ山の全てが、結界に包まれています。『テレポート』を使おうにもできないのは、結界に阻まれてしまっているからです」
「そんな……!」
「アレクスめ、自分から誘っておいて結界に閉じ籠るなんて、一体どういうつもりなんだ!?」
 ジェラルドが憤りを見せた。
「試されているんじゃないか? この程度の結界も破れないようじゃ、テメェと戦う価値が無いってな」
 シンは、落ち着いて考えを述べた。
「気に入らないわね、少し神の力を得たくらいで神様気取りなんて。今すぐにでも叩き斬ってやりたいわ!」
 メガエラもかなり怒っていた。
「けれど困ったわね。『テレポート』も使えないし、歩いてなんて移動手段はとても考えられないし、どうすれば……」
 ヒナが頭を抱えた。
「ここは、オレの出番やな」
 言い出したのはアズールである。
「アズール、何か考えがあるのか?」
 ロビンは訊ねた。
「せや、オレがこの船を引っ張って行ってアレクスとか言う奴のとこまで行くんや」
 一同は驚いた。
「ちょっとアズール、何を無茶な事を言い出すのよ!?」
「メガエラさん、オレの本来の姿を忘れたんか? オレは水竜。水のエレメンタルに属する化身や。吹雪の中でもすいすい進めるで」
「アズール殿、疑うわけではないが、本当にその様なことが可能なのか?」
 ユピターも不安げであった。
「ユピターさんも疑り深いなぁ。大丈夫や、オレの真の姿はこの船より大きい、水のエレメンタルに覆われた今なら空だって進める。これ以上ない見せ場やで」
 アズールはかなりの自信を持っていた。それと同じくらいに、あまりにも大きな話すぎて一同は不安になっていた。
「はぁ、そこまで信用されてへんのやったら、さすがのオレも悲しくなるで。まあでも、論より証拠っちゅうやつや。みんな外に出てや」
 アズールは、言うと甲板に出ていった。
「ロビン、どうする?」
 ガルシアが訊ねた。
「どうって言っても他に方法はなさそうだし、アズールの話に乗っかるしかないだろう」
「オレもアズールを信じるぜ、ロビン。オレには分かるんだ。今のアレクスの力はハッタリなんかじゃねぇ、本当にヤバい大きさだ。ここにいる全員でかからなきゃとても敵わない」
 シンは言った。
「他のみんなはどうだ? アズールの提案を受けるか?」
 シンが訊ねた。
「ボクは受けてみたいと思います。アレクスを止めるためなら、少しでも可能性を信じたいと思います」
「オレもイワンに賛成するぜ。アレクスの野郎にオレ達の力を見せつけてやろう!」
 ジェラルドは嬉々として言った。
「私は行くわよ。ウェイアードをこんなにして、許せないわ!」
 ジャスミンは、小さな怒りを表しながら言った。
「アズールにいい気になられるのは癪だけど、ジャスミンが言うなら……」
 メガエラは賛同を示した。
「反対する方はいない。と言うことでよろしいでしょうか?」
 イリスが確認の言葉を述べた。
 全員がアレクスと戦う道を選んでいる中、一人だけ躊躇している者がいた。
「……私は……」
 アレクスと同族のメアリィであった。
「そうでした、メアリィは……」
 ピカードは同情した。
「同族でしたね、アレクスと……」
 戦う事しか考えていなかったイワンは、すまなそうに言った。
「メアリィ」
 ロビンが呼び掛けた。
「君の気持ちは痛いほど分かるよ。けれども、今のアレクスは倒すべき敵だ。ウェイアードを救うには戦うしかないんだ。どうか分かってくれないか?」
 メアリィからすぐに返答はなかった。しかし、間を置いてメアリィから決意したような言葉が返ってきた。