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zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 ダウド大暴走

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もう少しだけ……

「……本当に持って来たんだ……」
 
山竜の目の前に置かれた大量の毒マツタケを前に、山竜が困惑する。
 
「ああ、持って来たぞ!俺達は約束はちゃんと守るからな!」
 
「ハア……、仕方ない……、君達って意外と几帳面なんだね、
顔に似合わず……」
 
ジャミルの顔を見て山竜が呟いた。
 
「何か言ったか!?」
 
「何でもないよ、僕の方も約束だ、この子は返そう……、その前に、
聞かせて欲しい……、どうして野蛮な人間の君達とこの子が一緒に
いるのかを……、何故君達が此処に用があって訪れたのかも……」
 
「チビの為だよ……」
 
「為とは……?」
 
「あんたも知ってんだろ?竜の女王の城で卵が盗まれたのをさ……」
 
「知ってるよ、僕らの処にも情報は届くからね……、ゾーマに
この塔を封印されて長らくの封印が解け、目が覚めてすぐぐらいかな……」
 
「もしかしたらチビが……、その、行方不明になっている女王の
子供かも知れないんだ……」
 
「なんだって……!?この子がかい……?女王様の……!?」
 
山竜はまじまじと、まだ眠っているチビを見つめた。
 
「なるほど……、確かにね、得体の知れない不思議な力をこの子から
感じるのも頷けるかな……」
 
「私達はね、チビちゃんが卵の時に洞窟で出会って、卵から孵した時から
皆でずっと育ててるのよ!」
 
「……この子を?君達が?卵から孵して今まで育ててたって
言うのかい?……嘘言わないでくれよ、人間の君達が?
信じられない、それにどうして、一年以上盗まれていた筈の卵が……、
ずっと洞窟に置いてあって、どうして君達が洞窟に行くまで
卵が孵らなかったんだい……?」
 
山竜はペラペラとジャミル達に質問攻めをする。山竜は顔を近づけ、
唾を4人に飛ばしてくる。
 
「……俺が聞きてえんだよ……」
 
顔に飛ばされた唾を拭いながらジャミルがぼそっと喋る。
 
「嘘じゃないよ!チビちゃんは色んな奴らに狙われてるんだよお!
密猟組織とか……、魔族とか……、オイラ達……、チビちゃんを
卵から孵した時からずっとずっと守ってきたんだよお!」
 
「本当なんだよ、もしもチビが本当に……、竜の女王様の子供なら……、
僕等は一刻も早くチビをお城にお返ししなければならないんだよ!」
 
真剣に喋るダウドとアルベルトの姿に、山竜は複雑そうな顔を
していたが、やがてもう一度ジャミル達の顔を見た。
 
「……ウソを言っている様でもないようだね」
 
「それを確める為にも、俺達はもう一度、上の世界へ……、
地上に戻って竜の女王の城へ行く……、その為にはあんたの力が
必要なんだよ……」
 
ジャミルはそう言って竜の涙を山竜に見せた。
 
「……私のも……」
 
アイシャも自分の持っていたドラゴンの形見の方を見せた。
 
「……チビちゃんが卵だった時にチビちゃんを守ってくれていた
ドラゴンさんの涙の宝石よ……」
 
「……守ってくれていた……、とは……?」
 
「リムルダールの南の、封印されていた洞窟の中で出会った
ドラゴンさんよ……、密猟者から……私を……庇って……」
 
「……洞窟……、そうか、この子がいた場所は地竜の……、
地竜は死んだのかい……」
 
「私の……所為で……」
 
アイシャは俯き、ぎゅっと唇を噛んだ。
 
「……アイシャ……、もういいよ、思い出すな……」
 
「だって……!」
 
「いいんだよっ!何も言うなっ!」
 
……彼女の心の傷になってしまった辛い出来事を又
思い出させない様……、ジャミルは必死でアイシャを抱きしめ、
落ち着かせようとする。
 
「……で、君達は上の世界に行く為に、僕に涙を流させようと
してるんだね……」
 
「そうなんだけど……、いきなり泣いてくれって言ったって……、
無理だよな……」
 
「……いいよ、君達に協力しよう……」
 
「……ええっ!?」
 
あっさりの山竜のいきなりな発言に一同、驚きの声を上げた。
もっと抵抗するかと思ったが。
 
「正直、地竜が死んだのを聞いた時、僕はますます人間が
信じられなくなった……、この子を君達に返すのを止めよう
かとも思った……、だけど、君達はきちんとこの子を女王の
お城に預ける気でいるんだね……?」
 
「もちろんだ!もしも……、チビが女王と正式な血の繋がりが
無かった場合でも……、あそこにいる方がチビは幸せになれる筈さ、
そう、俺達と一緒にいるよりもな……」
 
「ジャミル……」
 
ほんの一瞬……、アイシャが淋しそうな顔を見せたのを
ジャミルは気が付いていなかった。
 
「それを聞いて安心したよ……、野蛮で馬鹿な人間達なんかと一緒に
ずっといさせるのは正直安心出来ないからね……」
 
「何だか、悲しい言い方だねえ、オイラ達……、チビちゃんの事が
大好きで大切だから……、今まで必死に育てて……、守ってきたのにね……」
 
「……ダウド、仕方ないよ、海竜の時もそうだったけど……、
僕ら人間を基本的にドラゴン達は決して心良くは思っていないんだよ……」
 
アルベルトがダウドを宥めながら、山竜を見上げる。
 
「そうと決まれば、一刻も早くこの子を女王のお城へ届けるんだよ?
約束だからね……?約束したよ?もしも守らない場合、それが
分った時には、痛い目にあって貰うよ?」
 
「脅すなよ……、判ってるよ!たく……、脅迫すんな!」
 
そう言いつつも、心から同じ仲間のチビの事を山竜が心配する
気持ちがジャミルには伝わって来たのだった。
 
「んじゃ……、さあ、いくか……」
 
「?」
 
山竜はそう言うなり……、毒マツタケをむしゃむしゃ食べ始めた……。
 
「……オ……、オエエエ~……」
 
「お、おい……」
 
「まずい……、やっぱり涙がでそうだ……」
 
山竜はそう言って涙を一滴流した。涙は直ぐに宝石へと変る。
 
「……アンタの涙、確かに貰ったけどさ……、お前、好物じゃ
なかったのかよ……」
 
「嘘ついてたの……?」
 
「僕らを騙したのかい?」
 
ダウドとアルベルトが揃って山竜を睨んだ。
 
「そうだよ、冗談で言ったんだけど……、まさか本当に……、
持ってくるとは思わなかったよ……、おえっ……」
 
「じゃあ、私達がもしも持って来られなかった場合、
チビちゃんを返さない気でいたんでしょ!?酷いわ!!」
 
「まあ、結果的に僕に涙を流させたんだから良かったじゃない……、
お、おえええ……」
 
「……納得いかねえ…」
 
ジャミルも不満気な顔をした……。そして無理矢理、毒マツタケを
完食した山竜は……。
 
「ねえ、大丈夫……?お腹痛くない……?」
 
優しいダウド一人だけが山竜を心配する。
 
「……フン、関係ないよ、それよりも早く竜の涙を三つ合わせてごらんよ」
 
言われるままに揃った竜の涙を三つ合わせると……。
 
「……鍵に変わった……?」
 
「このアレフガルドの何処かに、奇跡の扉と呼ばれる場所が存在する、
ゾーマに長い事封印されていた場所の筈……、そこを探し出して
扉をその鍵で開くんだ……」
 
「其処から、上の世界に戻れるのか……?」