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zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 小悪魔の秘密

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対立……

「……」
 
何かを決意した様に、ダウドは船までの道を歩き出した……。
 
「な~お……」
 
「あれっ?……君、確か、リムルダールの宿屋にいたシャム猫かな?
こんなとこまでお散歩に来るのかい?」
 
「なあ~ん……」
 
ダウドは猫を抱き上げるが……。
 
「……うわっ!……口臭っ!うっかり忘れてたよお!」
 
「ぎゃ~お!」
 
口の臭いシャム猫はダウドの手から逃れると逃げて行った……。
 
「気が緩むなあ、もう……、ふらふらしてないでちゃんとお家に
帰るんだよ……」
 
「ふぎゃ~お……」
 
シャム猫が振り返ってダウドを見、返事をした。
 
「ちゃんとお家に……、か、チビちゃんの帰る場所は……」
 
 
船の近くまで戻ると、甲板でジャミルがダウドを待っている
姿が見えた。
 
「ジャミル……」
 
「……あ、ダウド!何処行ってたんだよ!!」
 
ダウドの姿を見つけるとジャミルが甲板から身を乗り出し
大声を出した。
 
「ごめん……」
 
ジャミルから目を反らしてジャミルとは対照的にダウドが
小さく声を出す……。
 
「はあ……」
 
ダウドは自分が戻って来て安心しているらしい、ジャミルの姿を
見上げながら……、船内へと戻り、ジャミルのいる甲板へと上がる。
 
「ジャミル、……その……」
 
「俺の方も悪かったよ……、きつく言い過ぎた……」
 
「ううん、悪いのはオイラだから、どうにもならない事でうじうじ
悩んだりして……、本当、ごめんね……」
 
「ダウド戻って来たの!?」
 
二人の声を聴いてアイシャとアルベルトも甲板に上がって来た。
 
「うん、アルもアイシャもごめんよ、心配かけて……、処で
チビちゃんは……?」
 
「まだお昼寝中よ……」
 
「そうなんだ、今日はよく眠るね……」
 
「あっ……、おやつに苺のジャムサンドが作ってあるから、
良かったら食べてね」
 
「有難う、アイシャ、気を遣ってくれて、でも今はいらないや、
後で食べるよ」
 
「そう……?」
 
アイシャにそう言いダウドは甲板を降りてチビのいる
下の階に行った。
 
「どうも……、まだ何か様子がおかしい感じがするよ……」
 
「……アル、心配し過ぎよ……」
 
「だな、あの面は頭ん中に色々詰め込んで考え過ぎて、何か良くねえ事
考えてる時だな……」
 
「アルもジャミルも……、二人とも考え過ぎだってば……、
大丈夫よ……」
 
「いや……、俺には判るよ……、長年の付き合いだし、
あいつの悪い癖さ……」
 
 
ダウドは甲板を降り、チビの寝ている船室、……アイシャの寝室まで
勝手に入って行く。
 
「お邪魔します……、チビちゃん……」
 
「ん~?きゅぴ……?ダウ……?」
 
「あはっ……、チビちゃん!!」
 
ダウドは寝ていたチビを無理矢理起こすと抱っこする。
 
「ダウ……、チビね……」
 
「チビちゃん、チビちゃん!チ~ビ~ちゃん!!」
 
ダウドは異様に興奮してチビを更にぎゅうぎゅうと抱きしめる……。
 
「……ダウ……、やめてえ~……、苦しいよおお……」
 
「あっ、ごめんね……」
 
ダウドは慌ててチビから手を放すとベッドの上に置いた。
 
「きゅぴ……」
 
「ダウド、何してるの……?」
 
アイシャが心配して寝室に様子を見に来る。
 
「あっ、ごめんね、勝手に入っちゃって……、チビちゃんと
コミュ中……」
 
「もう……」
 
「またね、チビちゃん!夕ご飯食べたら遊ぼうね!!」
 
ダウドはニコニコと笑顔でチビに手を振り、船室を出て行く。
 
「……やっぱり、様子が変かしら……、何だかいつもと違って
不自然だわ、わざとらしいと言うか……」
 
「……きゅぴい~……、あつい……よ……、お……」
 
ベッドに座っていたチビがコテンと音を立て、ベッドに倒れた……。
 
「……チビちゃん……?」
 
アイシャが慌ててチビに駆け寄り、そっとチビに触れる……。
チビのその身体は熱く、汗が大量に流れ出ていた……。
 
「!すごい熱だわ!……大変っ!!皆ー!!は、早く来てーっ!!
チビちゃんが……チビちゃんがーーっ!!」
 
 
……
 
 
「……チビちゃん……」
 
「どうも今日は異様に昼寝し過ぎだと思ったんだよな……」
 
ジャミルもチビのおでこに触る。身体は熱いままの状態である。
 
「今朝はあんなにご飯食べてたのに……」
 
「どうしよう……、お医者さんに見せるわけにいかないし……、
どうしたらいいの……」
 
「……処で、ダウドは……?」
 
アルベルトがジャミルに聞く。
 
「知らねえ……、アイシャが俺達を呼びに来た時にはもう姿が
見えなかったよ……」
 
「そう……、いつの間にか又何処か行っちゃったんだ……」
 
「チビちゃん……、私の管理不足だね、ごめんね……、
苦しい思いさせて……、本当にごめんね……」
 
「きゅぴ……」
 
熱にうなされながらもチビが小さく返事をし……、アイシャはそっと
チビの手を握った。
 
「……違う……、アイシャの所為じゃねえよ、やっぱりもう……、
限界なんだよ……」
 
「ジャミル……?」
 
「……本来なら……、この時期はきちんとドラゴンの親が育てる
期間なんだ……、俺達はドラゴンの病気なんか全然解んねえし、
もう人の手で面倒見るには限界がありすぎんだよ……、人間世界
独特のウイルス、変な伝染病にだって感染するかも知んねえし、
これからは腹痛薬飲ませてるだけじゃ済まねえよ……」
 
「僕達が……、甘すぎたんだね……」
 
「かもな……、一刻も早く……、竜の女王のお城へチビを
連れて行こう……、あそこなら本当にチビにとって何の心配も
ない、安全な場所の筈だ……、女王様に使えていたホビット達が
守ってくれる……、人間の俺らなんかよりも遥かに頼りになる筈さ……」
 
「ねえ……、今夜は皆でチビちゃんの傍についていてあげましょ?
その方がチビちゃんも安心すると思うの……」
 
「ああ……」
 
 
しかし、次の日の朝、チビは何事も無かった様に熱が引き、
すっかり元気になっていた。だが、ダウドはあの後、船を
降りたまま、結局戻って来なかった。
 
「きゅぴっ!チビ、お腹ぺこぺこ!」
 
「まあ……、大事じゃなくて良かったけどな……、ホント、
ドラゴンの身体の仕組みってわかんねえモンだなあ……」
 
「結局……、あれからダウド、何処へ行ったんだろう……、
出て行ったまま、一晩戻って来なかったし……」
 
と、言っている処に……。
 
「……ただいま……」
 
数時間ぶりにダウドが帰って来、ジャミルとアルベルトのいる甲板に
顔を出した。
 
「お前……」
 
「ダウド、昨日は帰って来て、またすぐに何処に行ってたの……」
 
アルベルトが問い詰めるがダウドはすぐに開き直る。
 
「別にいいじゃん、そんなのオイラの勝手だよお……、オイラだって
一人になりたい時ぐらいあるよお……」
 
「……チビが熱だして大変だったんだぞっ!!お前、船室で
チビを無理矢理抱いたんだろ、そん時に様子がおかしいのに
気が付かなかったのかよ!」