黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 31
第百章 激戦、希望の力、ハルマゲドン
「あなたの考え、筒抜けにしてあげます!」
イワンが先陣を切った。
『ブレイン・コネクト!』
イワンは、指先から光線を照射した。
光線はアレクスの額に当たった。
『ふん、こんなもの当たったところで……!』
強がるアレクスは、イワンのエナジーの恐ろしさを知ることになる。
「ロビン! アレクスの弱点は角です!」
イワンは、さっそく脳裏に伝わってきたアレクスの考えを教えた。
「よしっ!」
ロビンは、すぐさまアレクスの一角を狙った。
アレクスの角は、他の部位と違い、ロビンのソルブレードを弾くこと無く、叩き斬られた。
『なんと、何故分かったのです!?』
完全に侮っていたアレクスは、驚愕してしまった。
『ですがこんな角、斬られた所で私はやられませんよ!』
アレクスはまた、息を大きく吸った。
「ブレスが来ます! 離れましょう!」
イワンは言った。
「止刻法!」
シンがアレクスに向かって指を指すと、アレクスの周りだけ時が止まった。
「今だ! オレが奴を止めている間にバラバラに逃げるんだ!」
散開して逃げられるよう、シンは僅かな間時間を止めていたのだった。
シンの言う通り、仲間達は散った。全員が逃げたのを確認すると、シンは呪術を止めた。
時間停止が無くなると、アレクスは動き出した。
アレクスは、吸った空気を極寒の息として吹き出した。しかし、息の当たる場所には既に誰もいなかった。
『またしても……! 一体何故……!?』
困惑するアレクスである。
考えを全て読めるイワンの力であるが、アレクスはそれに気がつく事はできなかったのである。
イワンは、再びアレクスの弱点を読み取った。
「左前足の守りが手薄になっています! 切り裂いてしまえば動きを封じることができます!」
「私が行くわ!」
ジャスミンが前に出た。
「待て、ジャスミン、オレも行くぜ! オレ達の炎で焼き尽くしてやろうぜ!」
ジェラルドも躍り出た。
「そうね、じゃあジェラルドはアレクスの動きを止めて……」
「止刻法!」
シンが再びアレクスの時を止めた。
「奴を引き留めるならオレに任せとけ。二人揃って全力のエナジーで奴を叩くんだ!」
「ありがとう、シン! さあ、行くわよジェラルド!」
「任せな、ジャスミン。オレがサポートするからお前が奴の前足を叩き切ってやるんだ!」
作戦は決まった。
『ヒートバーナー』
ジェラルドは、逆巻く炎を放った。炎が当たった瞬間、アレクスが纏う氷が溶けた。
『プロミネンス・ファイナル!』
ジャスミンは、全身に炎を纏い、炎の剣を出してアレクスに斬りかかった。
炎の前では氷の守りは無力であり、ジャスミンの炎の剣は、アレクスの前足を斬り裂いた。
しかし、思いのほかアレクスの前足は固く、真っ二つに斬ることはできなかった。
「さすが超神竜とかいうだけあるわね……完全に断ち切れないなんて……」
シンの呪術は解けてしまった。しかし、ダメージは遅れてアレクスに現れた。
『グアアア! よくもやってくれましたね! 最早許しません。全員揃って八つ裂きにして差し上げます!』
アレクスは、エナジーで傷を回復させた。
『ブレイン・コネクト』
イワンは、再びアレクスの心を読もうと、指先から光線を出した。
『そのエナジーは見切りましたよ。私の考えを読んでいるのでしょう!?』
イワンは、図星を付かれ、光線をはずしてしまった。
「ボクの最大エナジーを読むなんて。アレクスはなんと言う……」
「まずはイワン、貴方から始末してあげましょう!」
アレクスの爪がイワンに襲いかかった。
「止刻法!」
『それも二度と通用しませんよ』
アレクスは、シンの呪術の発動する瞬間の光を眼を閉じて防いだ。
「なんだとっ!?」
シンは止刻法を防がれ、驚いた。
『光の速さで私の動きを縛っていたようですが、甘かったですね。まともに光を見なければ貴方の術は発動しない』
アレクスは、シンの呪術までも見切っていた。
『さあ、今度こそ小細工は意味はありません。自らの無力に悔いて死んでいきなさい!』
アレクスは、上空へと飛び上がった。
『フハハ、空を飛ばれては貴方達の攻撃は不可能でしょう? ここから超神竜の息をお見舞いして差し上げましょう!』
アレクスは、絶対零度の息を地上にいる全員に吹き付けた。
「くそっ! どうすりゃいいんだ!?」
ジェラルドは、悔しそうに歯噛みをした。
「みんな、俺の近くに!」
ガルシアは、何か策があるようだった。
『サモンクロス・カロン』
ガルシアは、魔導書ネクロノミコンから、召喚獣カロンを呼び出し、それと融合した。
「呪詛の竜巻、カース・サイクロン!」
ガルシアが詠唱すると、闇の力の含まれたつむじ風が吹き始めた。
「行け!」
ガルシアは竜巻を放った。
ガルシアの呪詛の竜巻とアレクスのブレスがぶつかり合った。
闇の力を持つガルシアの黒魔術は、聖なる力から成るアレクスのブレスを飲み込んで行った。
「我が黒魔術よ、対する光の力を飲み尽くせ!」
ネクロマンシーで召喚できる悪魔の中で最強の力を持つ悪魔の竜巻の前で、アレクスのブレスは消し去られてしまった。
『バカなっ!?』
竜巻の勢いは衰えず、そのままアレクスをも飲み込もうとした。
「グオアアアア!」
アレクスは竜巻に飲まれ、その身を切り裂かれていった。
やがて竜巻は収まった。
ズタズタになったアレクスは地面に落ちていた。
「グッ、ゴアアア!」
しかし、咆哮を上げながらアレクスは立ち上がった。
「ぐっ、カロンの力でも死なないとは……!」
ガルシアは悔しそうに舌打ちした。
「なかなか大きな力でしたが、残念でしたね。『アーネスト・プライ』」
アレクスは、治癒のエナジーを使い、傷を回復した。
「ならば、これならどうだ!?」
ガルシアは魔導書のページを最終ページまで繰った。ガルシア自らが禁呪としていた魔術である。
「魔界の王、『サモンデュラハン!』」
辺りがガルシアの放った闇の力により、僅かに暗くなった。
地面に闇の渦が出現した。その中からあの大悪魔が顕現する。
『ほう、デュラハンすらも使役するとは、これは驚きですね』
正確にはデュラハンそのものではない。デュラハンの右腕を魔導書ネクロノミコンに取り込ませただけの傀儡である。
それ故に姿の大きさもデュラハンと比べると一回り小さい。
「紫電の一閃、『ファルミナス・エッジ!』」
ガルシアが詠唱すると、小さなデュラハンは剣に雷を纏わせ、アレクスに向かって斬りかかった。
『無駄です!』
アレクスは、前足で紫電の刃を受け止めた。
「止めただと!?」
ガルシアは驚愕する。
アレクスは、受け止めた刃を受け流すと、ガルシアが召喚したデュラハンに牙を向け、噛み千切ってしまった。
召喚したデュラハンが破れると、辺りの闇も消えた。
『デュラハンを使役するのです。少しはやってくれると思ったのですがね……』
表情は変わらないが、アレクスにはかなりの余裕が感じられた。
『まずはガルシア、貴方から消して差し上げましょう』
アレクスは、爪を光らせた。
『イマジン!』
「シバ!」
作品名:黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 31 作家名:綾田宗