黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 31
シバの能力で真実の領域が展開した。これにより、どこに逃げればいいのかが、ガルシアにも見えた。
「ガルシア、早く逃げて!」
「あ、ああ! すまない、シバ!」
ガルシアは、攻撃が当たる場所として赤く光って見える地点から離れた。
そして真実の領域は消え去った。
「シバ、くっ、風のエナジストは厄介そのものですね……!?」
アレクスは歯噛みした。
「私のエナジーは強くないわ。けど、こういう小細工は得意なのよ!」
シバは、得意気に両手を腰にやった。
「けど、小細工だけじゃ勝てない。ピカード! 手を貸してくれないかしら?」
「もちろんです、シバ! 真実の領域でどこを叩けばいいのか、見せてくれるのですね?」
「分かっているじゃない、いいわね。それじゃ行くわよ!」
シバは真実の領域を開く。
『イマジン』
真実の領域にて見えた、アレクスの守りの薄い部分が明らかになる。
「見えました。アレクス覚悟!」
ピカードは、拳に氷を纏わせた。
「くらえ!」
ピカードは、氷で強化した拳をアレクスに振るった。
「グルア!」
アレクスに効果てきめんであった。
「効いてる、僕の拳が。このまま一気に砕いて見せる!」
ピカードは、アレクスのあばらを砕こうとした。
『調子に乗るのも大概にしなさい!』
アレクスは、冷気のこもった息をピカードに向けて吹き付けた。
「ピカード、伏せるんだ」
シンが叫んだ。
『爆浸の術!』
シンは、爆発の忍術を発動した。炎がアレクスの息の冷気を消し去り、単なる風とした。
「バトンタッチだ、シバ、ピカード!」
シンは二人の前に出る。
「バトンタッチって、一人で行くつもりですか!?」
「アレクスは弱ってきてる。オレ一人でも戦える。二人は下がっていてくれないか? 巻き添え食らいたくなければな...…!」
シンは、印を結んだ。
「忍封天眼乱解!」
シンの片目に宿った天眼が翡翠色に輝き、瞳に勾玉の光が顕現した。
「行くぜアレクス! 忍者じゃなく乱者になったオレを止められるか!?」
忍ぶ事を止め戦いに身を置くようになったシンは、そのパワーも強力なものとなっていた。
「漆黒の刃よ!」
シンは、自らの持つ漆黒と白銀の刃の内、漆黒の方だけ手に持ち、扇状にゆっくりと振った。すると、その軌跡に数本の漆黒の刃が出現し、シンは両手指に挟んで持った。
「行くぜ!」
シンは、眼にも止まらぬ速さで、アレクスの周りを跳び回った。
『一体何を……』
しているのか、言い終わらぬ内にアレクスは気付くことになる。
アレクスの上空に、数多の漆黒の刃がギラリと刃を光らせながら停滞していたのである。
「気付いたか? だがもうおせぇ。テメェはもう逃げられねぇ!」
シンは漆黒の刃本体をアレクスの前足元に放った。
「止刻法・テンサウザントダガース!」
シンが、アレクスの前足元に放った漆黒の刃の本体に吸い寄せられるように、アレクスの上空に停滞していた幾万の刃が、一気にアレクスに降りかかった。
『こんなもの……! 『バリアアンシル』』
アレクスは、最強クラスの防御壁をドーム状に張った。
しかし、『バリアアンシル』は前方からの攻撃を弾く事が本分であり、全方位に展開したため、守りが薄くなってしまった。
シンの放った万に及ぶ漆黒の刃は、横殴りの雨の如く、防壁に打ち付けている。一つ一つの威力は弱くとも、それが数千を超える数が集まれば威力は絶大であった。
漆黒の刃の数が半分を切った頃、アレクスの防壁にヒビが入り始めた。
『……こ、こんなもの……!』
アレクスは、防御壁の補強を図るも、ヒビは全方位に及んでおり補強は無駄な事であった。
千を切った時、アレクスの防壁は割れた。
「砕けたか! まだ数百はある。そのままハリネズミになりやがれ!」
「グオアアアア!」
漆黒の刃を直に受け、シンの言うようにアレクスは黒いハリネズミのようになってしまった。
シンは、エナジーで地面に刺さった漆黒の刃の本体を引き寄せる。
「哀れだなアレクス……ふっ!」
シンは、刃を回収しながら小さく笑った。
最早勝負の態勢は決まったようなものであったが、超神竜と言うだけあり、数百の刃を受けてもまだ生命力が残っていた。
『ロビン、聞こえますか?』
ロビンの心にイリスの声がした。
『相互テレパシーで貴方の心に話しかけています。思っていただけるだけで私に意思は伝わります』
『こうか、イリス?』
ロビンは、イリスの声の通りにしてみた。
『はい、伝わりましたよ』
『何故オレの心に話しかける?』
直接話せばいいのではないか、とロビンは思った。
『アレクスは、あれほどのダメージを受けましたが、それでもまだ死に至るほどのダメージではありません。ですが後一撃強力な攻撃を与えてやれば倒せるはずです。それを悟られないように心に話しかけているのです』
『なるほどな、でも止めの一撃てのは……』
ロビンには心当たりがあった。
『ロビン、貴方には聞こえているはずです。ソルブレードの声が』
『ああ。だが、これはとんでもねぇ力だ。アルファ山はともかく、ウェイアード全てに影響を与えそうなほどにな……』
『貴方はソルブレードに選ばれ、ウェイアードからも選ばれたドラゴンスレイヤー。力を扱い損ねるような事はないはずです』
『ふっ、根拠は十分ってことか。分かったよ、やってやるよ!』
ロビンは決意した。
「ガルシア、みんな、よくやってくれた。後はオレが止めを刺してやる!」
ロビンのソルブレードは、既に唸りを上げていた。
脈動するソルブレードからは、全てを破壊するほどのエネルギーを感じられた。
「ロビン、放つのです! あなたなら使いこなせる。ソルブレードの真の力を!」
イリスは言った。
「ああ、これで終わりにしてやる……!」
「グググ、ゴガアアア!」
ダメージを受けすぎたアレクスは、テレパシーを使えず、唸り声を上げるしかなかった。
「行くぜアレクス、これで終わりだ!」
ロビンは空高く跳び上がり、ソルブレードを振りかぶった。
「食らいやがれ!」
ロビンの上空に、巨大な隕石が出現した。それは、アレクスすらも優に超える大きさで、アルファ山山頂を包み込めるほどであった。
「なんだあれは!?」
「デカいっ!?」
『止めろ……止めるのです!』
先のシンの攻撃によって、大きな傷を負ったアレクスは、隕石をかわすことができなかった。
「ハルマゲドン!」
隕石はアレクスに当たると、大爆発が起こった。
「グアアアアア!」
アレクスは、爆発の中苦悶の叫びを上げた。
爆風が止むとそこには、生きているのか、それとも死しているのか、竜化が解けて全裸体のアレクスが倒れていた。
「やったのか!?」
シンが訊ねる。状況としては超神竜の姿を保てないほどの傷を、アレクスは受けて倒れているように見えた。
ふと、ざしっ、という音が聞こえた。それはアレクスが土を掴んだ音だった。
アレクスは震えながら起き上がった。
「ちっ、しぶとい野郎だ……!」
シンは舌打ちした。
「……ふざけるな」
アレクスは、立っているのもやっとな状態で、声を絞り出す。
作品名:黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 31 作家名:綾田宗