zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 助っ人、小悪魔!?
「私はもう駄目です……、私の為に大切なMPをどうか無駄に
なさらないで下さい……」
「何言ってんだよ、怪我人は黙ってろよ!……ごめんな、俺達が
遅くなっちまった所為で……」
しかし、ホビットはジャミルが魔法を掛けようとした手を遮る様に
ジャミルの手に触れた。
「きゅぴ、おじさん……、チビ……、黙ってお城を出ちゃって
本当にごめんなさい……」
「チビ様も……、其処に……いらっしゃるのですね……」
「うん……、おじさん達にちゃんとごめんなさいがしたくて……、
チビ……、帰ってきたんだよお……」
チビがホビットの近くに寄ると、ホビットは弱々しい手で
チビに触れた。
「……ご無事で何よりでした……、本当に良かった……、
安心しました……、チビ様のご無事が分っただけでも……、
私はこれで安心して旅立つ事が出来ます……、女王様の……
主の元へ……」
「きゅぴっ!?」
「……何言ってるんですか、諦めちゃ駄目ですよ!!」
「そうだよお!!……頑張って!!」
「ねえ、ジャミル……、早く魔法を……、お願い……!!」
仲間達もホビットを励ますが、ホビットは黙って首を横に振った。
「……この城を襲ったのは……、どうやら闇の遣いの者……、
らしいのです……、奴は……、世界中のすべての光を闇に変えると
言っておりました……、お、恐ろしい力を持つ黒い波動のドラゴンを
従え……、この城の中の光の力を全て奪い尽くしていきました……」
「あの変態野郎めっ、……くそっ!!」
「あ、あまり考えたくないんだけど……、もしかして、
あの変態お兄さん……、上の世界を闇にしようとしてるんじゃ……」
「可能性はあるね……、はっきりとした目的は分からないけれど……」
ダウドの言葉にアルベルトが顔を曇らせ、強く唇を噛んだ……。
「そんな事の為に……、お城を襲って……、そして行く行くは
チビちゃんの力をも奪おうとしているの……?そんな事……、
絶対許さないんだから……!!」
「……とにかく、今はちゃんと治療させてくれよ、おっさ……、
おっさん……?」
だが、もうホビットは朽ち果てる瞬間であった……。
「きゅぴっ!おじさん、死んじゃダメだよお、チビ……、ちゃんと
此処のお城にずっといるよ……、だから……」
「最後に……、皆さまにお願いがあります……、どうか……、
チビ様の事を……お願い致します……、チビ様もどうか……、
これからはご自身の幸せの為にも自由に生きて下さい……、
そして……、必ず……、この城に隠された……、な……ぞを
……皆さまなら……、き……、… ……」
「……おっさんっ!!」
「きゅぴいいーーっ!!」
ジャミルとチビが必死で呼び掛ける中、等々ホビットは息絶え、
僅かであった女王の城の民は滅びた……。
「……きゅぴ~、……チビの……本当の帰るお家……、もう
無くなっちゃったよお、チビ、独りぼっちだね……、チビが
家出なんかしたから、バチが当たったんだね……」
堪えきれなくなったのか、チビがアイシャに抱き着いた……。
「……チビちゃん……、お願い……、泣かないで……」
「何言ってんだよ、なら、ずっと俺らと一緒にいればいいだけの事だろ!」
「ぴ……、ジャミル……」
「城は滅んじまった、けど、お前は此処にいる、大丈夫だ……、
もうずっと俺達と一緒にいられんじゃねえか、……自由に生きて
いいんだって、おっさんもそう言ってたろ?」
「そ、そうだよお!チビちゃんとオイラ達、本当にもう……、
ずっと一緒にいていいんだよ!」
「きゅぴ、チビ……、皆とずっと一緒にいて、迷惑掛けないの……?」
「……チビちゃんが今よりもっと大きくなったって、
それはそれで後で考えればいいのよ、もう世界を守る力とか
関係ないわ、チビちゃんはずっと私達と一緒にいていいんだからね!!」
「うん、チビ……、今は心も身体もゆっくり休めるんだよ……」
「……アル~、みんな……、きゅぴ……、チビ……、独りじゃないんだね……」
「ああ、けどその前に……、闇の国からの変態をどうにかしなきゃな……、
チビ、此処から出よう、……大丈夫か?」
チビはこくっと頷き、皆を外で待つラーミアの元へと再び運んだ。
そして、4人は再び無人島を見つけて、夜を超す……。
「はあ、だけど……、またエライ事になっちゃったねえ、
……オイラ達……、また世界の命運を掛けた戦いに
巻き込まれるのかあ……」
「仕方ねえだろ、チビとこの世界の為に……、俺らは動かなきゃ
なんねんだよ……」
「きゅぴ……、チビ……、ずっと……、みんなと……」
「チビちゃん……、疲れたのね、悲しい思いさせちゃったけど……、
今日は頑張ってくれて本当にありがとう……」
アイシャが膝の上で眠るチビを優しく撫でると、チビも安心した様に
安らかに寝息をたてた。
「ジャミル……、こうなった以上……、僕も一刻も早く魔法力を
取り戻したい、その為のヒントをもしも貰える事が出来るのなら……」
「分ってるよ、次の目的地だな、ダーマへ行こう」
ダウドとアイシャもアルベルトの顔を見て頷いた。
「有難う、皆……」
「パンに塗る奴かりゅ?」
急に小悪魔がずけずけと話に割り込んで来た。
「それはラーマだろ……、苦しいな、お前……」
「フン、食えないのはいらんりゅ、……ねるりゅ!」
小悪魔はふんぞり返って、すぐに鼾をかき始めた。
「はあ、どうしようもねえ奴だなあ……、たく……」
そして、夜中……、チビの手前上心配させない様、皆には
ああ言ったがジャミルは眠れず何度も不安で目を覚ました。
「ゾーマの時と違って、奴は進出規模だ……、どう対処して
いいんだよ、おまけに非常識なすげー力も持ってる……、
さっぱり分かんねえや……、こうしてる間にも……」
「おい、バカ猿、寝ないのかりゅ?」
小悪魔がジャミルの顔をじっと見つめている。
「あー?お前こそ早く寝ろよ、りゅーりゅーうるせんだよ……、
しかもすげー、ニンニク臭えし……」
「フン、足りない頭で考えるから悪いのりゅ、アホなバカは
馬鹿らしく、ぼーっと鼻でも垂らしておままごとでもしてれば
いいのりゅ!」
「っ……、相変わらずカチンとくんな、お前はよう……」
「けけっ、人を不愉快にさせるのがリトルの趣味りゅー!
けけっけけー!!」
小悪魔はジャミルを散々からかうと急にパタッと倒れ、
眠ってしまった。
「おい……、この野郎……」
「ぐーかぐーか!!」
「……ま、考えた処で、どうにもなる訳じゃねんだけどよ……」
そう言いながらジャミルは、両手を頭の後ろで組み、仰向けになって
星空を見上げた……。
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 助っ人、小悪魔!? 作家名:流れ者