zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 光と闇
「あたいだって……、チビちゃんのママなんだから……、
全部終わったら……、チビちゃんの食べたい物、大好きな物
作ってあげる……、皆で一緒に暮らそう、ね?……チビちゃん……、
……?あ、雨……!?」
ファラはチビを抱いたまま慌てて窓辺に駆け寄る。
「……ただでさえ暗い中……、雨なんか降られたんじゃ……、
皆、本当に本当に絶対戻って来てよ……、じゃないと……、
あたい、怒るよ……」
……そして、ダークドラゴンと死闘を繰り広げる仲間達は……。
「おりゅーーっ!!」
「リトルっ!!」
アルベルトがダークドラゴンに弾き飛ばされそうになった
小悪魔を受け止める。
「大丈夫かい!?」
「りゅー……、MPが限界りゅ……、早くケリつけんとそろそろ
団子もやばいかもしれんりゅ……」
「くそっ、やっぱり僕も魔法が使えたなら……!」
アルベルトはこんな時に何も出来ず、どうにも出来ない
自分を強く責めた……。
「アイシャ、大丈夫!?雨もどんどん強くなって視界も
悪くなってきたし……、このままじゃ……」
「……今は信じるの、信じるしかないの……、ジャミルを待ちましょ、
ダウド、ねっ?」
「……アイシャ……」
(ジャミル……、お願い……、早く戻って来て……、私達も頑張るから……、
だから……)
アイシャは時折挫けそうになる自分を必死で励まし、只管ジャミルの
無事を強く願った……。
全ての始まり
そして、場面は再び竜の女王の城へと戻る……。
「そう、僕はあの日、女王が卵を産み、力尽きたあの日に
この場所を訪れ、卵を盗みました……、感じたのです、卵の中から
強く聞こえた闇の鼓動を……、闇の方の声が微かに生きたい、
生きたいと……、そう言っている気がしたんです、この、光溢れる
目障りな女王の城で闇の声が聴こえるなどと、凄い事でした……、
僕が触れると闇の鼓動は益々強くなりました……、その時、僕は
思ったんです、必ず、闇の力を持つ最強のドラゴンを僕のこの手で
誕生させてやりたいと……」
闇の国の使者は前髪をかきあげ、ジャミルに向けてポーズを取る。
その姿が今のジャミルには不愉快で不愉快で……、今すぐこの場から
すぐにでも消えて貰いたい、消してやりたいとただ、只管思うのであった。
「人間にも、善・悪、……常に二つの心が存在するでしょう……?フン、
僕は是非とも、悪の方を押してやりたかった、その為のお手伝いにと
卵を盗みました」
「ったく、本当によく口が回る奴だな……、そっちの素性も
いい加減話して貰いたいもんだな、お前はゾーマの意志を
継いでんのか……?手下なのかよ……、おい……」
「物事には順番があります、ちゃんと話を聞きなさい、サルめが……、
僕は卵がすぐ孵ってしまわない様、魔法を掛け、眠らせました、
ゆっくりと……、闇の力を育む為……、そして、下の世界へと降り立ち、
ゾーマ亡き後に現れし、封印の洞窟にいた地竜の元へ卵を隠し、
魔法を解いて預かって貰う事にしました、自分で管理するのが
少々面倒くさくなりましてね、竜族は信頼出来るお友達ですから……、
フフ……、僕自身も休憩を取り、時を待つ事にしたのです、
ああ、僕は常に上の世界だろうが下の世界だろうが、何時でも
何処でも移動出来る力を蓄えていますから……、フフ……」
きざったらしいのと、話が長いのとで……、ジャミルはもう
爆発寸前であった……。
「そして……、暫らくたって様子を見に、もう一度、地竜の洞窟へ
行ってみましたが、地竜はおろか、卵も見当たらないのです……、
地竜の気を探し当ててみた処、すでにこの世界にはいないと
分かりました……」
闇の国の使者は再びジャミルの顔を見ると、ニヤニヤと笑った。
「あの洞窟は……密猟者に目を付けられてたんだぞ……」
「知っていましたよ……」
「知っていた……?……なんでだよ!もしも、密猟者の奴らに卵を
持っていかれたらどうするつもりだったんだよ!!」
「それも承知の上でしたよ、……何故だか分かりますか……?
……奪われたら奪われたで、すぐに取り返す事など簡単ですよ、
僕にとっては……人間の母親は妊娠時、これから産まれてくる
お腹の赤ちゃんに良い影響を与えようと綺麗な音楽を聴かせたり
する事も有ります、花や植物などを側に置いたり……、実に下らない
洗脳教育の一つかと……」
「……」
「それと同じ様に……、闇のドラゴンとして誕生させる為の
お勉強ですよ、人の残酷な心、……行動……、密猟者が徘徊する
洞窟に置き、人間のエグさを植え付ける為です……、ドラゴンは
卵の中にいる時からでもそういった血生臭い物などを何となく
感じる事が出来るんですよ、人間と違い、卵生動物は卵から
孵ってこそ、一生が始まるのですから……」
「てめえっ!!」
「……話をちゃんと聞けと言ってるだろう!……人が大人しくしてやれば!!」
「うわあああっ!!」
ジャミルはあっさりと弾き飛ばされ、部屋の壁に叩き付けられる……。
「……フン、お前もいずれ、教育が必要ですね、お猿さん……」
「ち、ちくしょう……」
「あなた方がチビと呼んでいたドラゴンでしたか?あの日……、
僕が山竜の塔に行った日に初めて、産まれたドラゴンと漸く
対面しました、が……、明らかに闇の意志を持つドラゴンでは
ないと言う事を悟り、疑問に思いました、誕生の前に、僕が卵の中から
感じていた気は同じ筈……、なのにどうして光の力の方が強いのかと……」
「……」
「そして、出会えたのです、僕が探し求めていた本当のあの子に……、
精神と身体が二つ……、産まれる時に闇と光に別れた事も分かりました……、
あなた達が光の方を育てている事も分かり、度々目撃していましたが、
見ていて実に馬鹿らしく、面白かったので僕も少しだけ余裕を持ち、
光が育つ様子を見させて貰う事にしました」
「……チビ……、はっ、早く戻せよ……!このままじゃ……、チビが、
チビが死んじまう……!!」
ジャミルの脳裏に消え掛けているチビの姿が浮かび、思わずジャミルは
錯乱して闇の国の使者に掴み掛った。
「もう、そんな心配しなくていいでしょう……?あなた方の
下らない教育期間は終了ですよ、ご苦労様でした……、愛だの、
人の優しさなどと……、本当に実に下らない、どうもあのドラゴンは
教育が悪すぎると思いましたが……、全部あなた方の馬鹿な
教養の所為だったのですね……」
「……っ!!」
ジャミルは再び王者の剣を握りしめると、闇の国の使者を
強く睨み返した。
「僕が育てていれば光の方でも幾らか性格が違ってきた筈です、
洗脳など幾らでも可能ですから……、ま、身体が二つに分かれて
しまっている以上、いずれは消えて頂かないといけないのが現状ですが……」
「もう許さねえ……、今すぐ此処でテメエを倒してすぐに
皆の所へ戻るっ!!そして必ずチビも助けてみせるっ……!!」
「……やれやれ、飼い主も本当に教育がなっていない……、
あのドラゴンが出来損ないの屑の訳だ……、僕とゾーマの事は
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 光と闇 作家名:流れ者