zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 光と闇
「ダウド、落ち着いて……、どうどうどう……」
「アルうーっ!!落ち着いてなんかいられないよおーっ!!」
「……それを制するのは今の俺達の役目じゃない……、きっと……、
遠い未来の……、英雄達だよ……」
「え、えううう~……?……あう……」
「そうね、……私達も信じて……、思いを託しましょう、いつかの……、
勇者さん達へ……」
儂には見えるのだ……、遠い未来が……、光もある限り、闇もまたある……
いずれまた何者かが闇から現れよう……、その時はさすがにお前も
年老いて生きてはいまい……、フ、フフフフ……
「……ジャミル……、皆さん……」
「チビ……?違う……、その声は……、ルビス様か!?」
「「え、ええええっ!?」」
アイシャに抱かれていたチビを見……、ダウドがびっくり仰天する……。
「少しだけこの子の身体を借りました……、どうかあなた達の力も
貸して下さい……、一緒にこの世界に光を取り戻しましょう……」
「お、俺達でも……、出来るのかい……?」
「ええ、……ジャミル、光の玉を……」
「……」
ジャミルはゾーマ戦後も、いつも肌身離さず持ち歩いていた光の玉を
そっと取り出す……。
「あの、……僕達はどうしたら……」
「あなた方の装備品……、それも光の力の一部になっている筈です……」
「……分りました、……さあ、僕らも光の力をこの世界に返そう、
……アイシャ、ダウド……」
「ええ、ほんの少しの間だったけど、綺麗なドレスが着られて
嬉しかったわ、……ありがとうね……」
愛おしそうにアイシャが自身の光のドレスにそっと触った……。
「うん、でも……、オイラの装備は闇の衣なんだけどね……」
「……そういう突っ込みはしないんだよ、ダウド……」
「あうう~……」
「俺の光の鎧もだな……」
「……ええ、さあ、始めましょう……」
「光よ……、どうか、この有るべき世界に……戻りたまえ……!!」
ジャミルが光の玉を暗い空に高く掲げ……、その後に仲間達も玉に
向かい手を掲げる……。
「っ!……オイラの格好、元に戻っちゃった……」
「私も……」
「……見て、僕達に力を貸してくれていた光が……、空に昇って行くよ……」
「さあ、ホーリードラゴン……、いえ……、チビ……、次は
あなたの力を……」
ルビスはそう言うと、静かにチビの身体から離れた。
「うん、ルビス様……、皆……、チビ、頑張るよお…、
見ていてね……、……きゅぴーーーっ!!」
チビは空に飛び、暗闇に向けて輝きを放つ。暗い闇を今度は
光が覆った……。この世界にも再び光が戻り始めたのである……。
「……何だ……?……儂らは一体……、どうしていたんだ……?」
「一体、何が起きたのかしら……?何も覚えていないのだけど……」
「確か……、空が暗くなって……、それから……」
石化が解け、元に戻り始めた町の民は…、皆揃って一斉に首を傾げる……。
「あっ、ママっ、見て……、白い大きなドラゴンさんだあ……!!」
「本当だわ……、この暗闇の世界に……、光を灯してくれているの……?」
「……何という事じゃ……、おお……、この齢になって……、
伝説のドラゴンの姿を拝む事が出来るとは……、生きていて良かった……、
本当に……」
「……毎日当たり前の様に見ている光が、こんなに眩しいなんてねえ……、
今までこんな事……、分らなかったわ……、夜が来て……、そして、
当たり前の様に訪れる朝をもっと感謝しなくてはいけないのかも
しれないねえ、あたし達は……」
「ほら、リトル……、見てよ……、空が明るいよ、光が戻ったんだよ……、
本当、……皆、頑張ったね……、チビちゃんも……、頑張ったよねえ、
偉かったよ……」
ファラは泣きながら小悪魔を思わず抱きしめ、頬を近づけた……。
「フン……、おい、厚化粧……、あまり化粧くせー顔、近づけんなりゅ、
……口紅がリトルにくっつくりゅ……」
「……ああん!?何だってえーっ!?もう一回言ってみな、
ああっ!?」
「……ぎょえーーっ!暴力反対りゅーーっ!!……グエッ……、
がくっ……」
ファラに首を絞められた小悪魔は舌を出したまま……コテンと気絶した……。
そして……、ジャミル達は静寂の戻った空を只管眺めていた……。
「終わった……、のか?これで全部……」
「うん、空もすっかり青空に戻ったね……」
「本当、綺麗な青空ね……」
「何かオイラ……、泣けてきた……、うっ……」
……きゅぴーーっ!!
「チビ……っ!!」
「チビちゃんっ!!」
役目を終えたチビが……4人の元へ元気に戻ってくる……。
「きゅぴーっ!ジャミルーっ、アイシャーっ、アルーっ、ダウーっ!!
……チビ、皆の所に帰って来たよおーっ、ただいまーっ!!」
「チビっ!あはははっ!!お帰りー!!偉かったなー、よーしっ!!」
ジャミルはチビを抱き上げ、高い高ーいをし、くるくる回る。
「ちょっ、ジャミル、ずるーい!オイラも、オイラもーっ!!」
「きゃー!!私も抱くーっ!!久しぶりにハグさせてーっ!!」
「……たく、皆して、しょうがないなあ、いつまでたっても……、
親バカなんだから、本当に……」
……ジャミル……、皆さん、そして……、チビ……、この世界の
大地の力を借り、こうして語り掛けています……
「ルビス様……!!」
「きゅぴ……、ルビス様……、ごめんなさい……、チビの所為で……、
ルビス様が……」
……いいえ、もう……、私の命は長くないと自分で自覚していました……、
精霊として……この世界での役目も終えなければならないと言う事も……、
私の中に残っていた僅かな力を新たな命に変え……、あなたへと託したのです……
「きゅぴ……」
……時にはあなたのお母様から受け継いだその力の重さに悩む事も
あるでしょう……、ですが、……チビ、あなたはあなたらしく……、
どうか生きて下さい……人間達と共に生き、幸せになるのですよ……
「ルビス様……」
ジャミル、皆さん……、それではこれで本当にお別れです……、チビを……
頼みましたよ……
「……ああ、任せとけっ、……俺達はこれからもずっと一緒さ!」
ジャミルはそう言うと、チビを手元に引き寄せ、強く抱いた。
「ジャミル……、皆……、大好きゅぴ……、ありがとう……」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 光と闇 作家名:流れ者