zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 光と闇
「……どうせもう、僕の命は尽きる……、闇の世界の支配者になる事は
もはや不可能……、けれど……、闇を妨げようとする邪魔な光の力だけは
何としても阻止する……、それが僕の……、使命……、お前達も永久に
この闇の世界で永遠に苦しめ……」
そして、遠い未来へ
「りゅーーっ!よくもこの魔界の王子リトル様を……!許さんりゅーーっ!!
……やってくれたりゅねーーっ!!」
「リトルっ!!」
「何だっ!……うわっ!!」
遠くに投げられたリトルが慌てて戻り、闇の国の使者の顔に飛び掛かり、
引っ掻き噛み付き、……闇の国の使者は面食らい、チビの首に掛けていた
手の力を緩める……。
「……凶悪団子娘直伝、暴走暴れるくん攻撃りゅ!!」
ジャミルの方を向いて小悪魔がドヤ顔をした……。
「おいおい……、アイシャに聞こえたら殺されるぞ……」
「……クソッ!ゴキブリめっ!離れないかっ!!」
「りゅっ!りゅっ!」
「……今だっ!うあああーっ!!」
ジャミルはその隙を逃さず、闇の国の使者の顔面に右ストレートで
フックした……。
「……くそーーっ!!し、しまっ……」
ジャミルに殴られた衝撃で、掴んでいたチビを漸く放し、意識を
無くしているチビは地面に落ちそうになるが小悪魔が素早く
チビを拾い上げる。
「ふう、りゅ~……」
「よっしゃ!リトル、よくやってくれたぞ!」
事態を見つめていた水晶の中の3人も、大喜びで互いに燥ぎ合う。
「もうリトルは疲れたりゅ、こんなあぶねー基地害野郎に係るのは、
もういやりゅ、これにてバカ猿の実家にもどりゅます……」
小悪魔はジャミルにチビを手渡すと、疲れた様なしょっぱい顔を
ジャミルに見せた。
「ありがとな、……リトル……、お前がいなかったら……、
チビは今頃どうなってたか……、本当、ありがとうな……」
ジャミルは小悪魔に何度も何度も頭を下げた……。
「……よ、よすりゅ……、ああーっ!ジンマシンがでりゅ……、
勘弁してくれりゅ……、んじゃ、……厚化粧の所に行かせて
もらうりゅ……」
顔を赤くしながらリトルは慌て、パタパタと飛んで行った。
「はあ……、これで……終わり……、か……、フフフ、はははは……」
「……」
闇の国の使者は観念した様に膝をつき……、その場にしゃがみ込み、
俯き加減でジャミルの表情を覗った。
「ジャミルーーっ、大丈夫ーーっ!?」
「……皆!!」
魔法力が緩み、水晶の呪縛から解放された仲間達もジャミルの元へ
走って来る。
「俺は平気だよ、……それよりも、チビを頼むよ!」
ジャミルはアイシャに眠っているチビを手渡した。
「……チビちゃん……、良かった……、また……会えたね……」
「……もうこれで……本当に終わりにするよ……、早く僕の首を
はねるなり何なり、好きにしたらいいさ……、惨めな僕には本当に
何も残っちゃいないのだから……、石に変えた奴らもそろそろ
元に戻るだろう……、こんな下らない世界にはもう生きていたくない、
……早く殺せよ……、さあ……」
「……」
ジャミルは表情を硬くし……、王者の剣を握る右手に力を込めた……。
「……ガ、ガアア……」
「お前……」
……最後の力を振り絞り、其処に立ち塞がったのは……チビの半身の
ダークドラゴンであった……。
「グルル……」
ダークドラゴンはよろよろしながら……、それでもジャミルの前に
立ち塞がり、懸命に闇の国の使者を守ろうとする……。
「俺達がチビを大切に育てていた様に……、お前だって……、
このドラゴンが大切だったんだろう……?例えお互いに立場は
違っても……、……誰かを思う気持ちは同じなんだよ……」
「……気持ちの悪い事を言うな……、僕は自分の私利私欲の為に
こいつを利用していただけだ、他に何の感情などない……」
「グ……ルゥゥ……」
ダークドラゴンは一声上げると……、身体を丸め、その場に倒れ息絶える……。
「一つだけ……、言っておくよ……、何でチビも産まれて……、身体が
それぞれ別れたのかをさ……、お前は人間の残酷さを植え付ける為、
あの洞窟に卵を置いたって言ってたけど……、卵の中で感じ取っていた
感情は残忍さだけじゃなかって事さ……」
「……何だと……?」
「地竜は、密猟者に狙われても、自分が傷ついても……、自分が
本当の親じゃないのを理解していて、それでも卵を本能で守ったのさ……、
その優しさの感情と愛情を光はちゃんと感じ取って、そして、チビも
同時に産まれたんだよ……、だから……身体は光と闇……、二つに
別れたんだ……、恐らくな……」
「フン……、何処までも戯言を言うな……、下らない……」
「……ゲーム感覚であの洞窟に卵を置いたお前の負けだ……」
ジャミルはそう言い、冷たくなったダークドラゴンの亡躯に
そっと触れた。
「フフフフ、ハハハハ!……僕はどうしてもこのままでは納得出来ない……、
余りにも悔しいよ……、お前達を理解出来ない……、許せない……」
「!あ、あなたまだそんな事言ってるのっ!!」
アイシャが咄嗟にチビを庇い身構え、アルベルトとダウドも
闇の国の使者を睨み、もう一度戦闘態勢をとる……。
「僕も一つ……、絶望の未来をこの子に託そう……、……ルビスが光に
新たな命を与えたと言うのなら……、僕もこの闇に新しい命を託す、
……お前達の遠い未来が暗黒の闇で染まる様にね……」
「な、何を……!……うっ!!」
ダークドラゴンの身体がふわりと宙に浮かび……、亡骸は闇の国の
使者の元へと飛んで行き、その姿は黒い闇に包まれる……。
「おいっ、何をする気だっ!!」
「……僕の魂と……、この子へ僕の願いを託した……、フフフ……、この子は
遠い未来、闇の破壊者となり……、再び世界を絶望で満たしてくれる……、
けれど安心したまえ……、恐らくこの子が目覚める時は……、一体何百年先の
事になるのかそれは僕にも誰にも分らない……、けれど……、きっと僕の
意志を継いでくれる……、そう……、信じて……い……る……、闇は……
永久に消える事など無いのだから……、人間の心の闇も……」
「……」
「さあ、お行き……、いつかのその日まで……、静かにお休み……」
「あ……」
闇のオーラに包まれたダークドラゴンは……静かに……何処かへと
飛んで行った……。
「……あの子は誰にも気づかれる事のない安全な場所に封印した……、
後は長い眠りから目覚めるのを待つだけ……、これで……、僕の役目も
終わった……、安心して消える事が出来る……、……さようなら、
どうしようもない、智恵の無い救いようの無いお馬鹿さん達……」
闇の国の使者も徐々に身体が消えていき……、その場には
立ち尽くすジャミル達残された4人だけの姿となった……。
「……ど、どーすんのさ、ジャミルうー!……あああ、あの
ダークドラゴンはいずれまた目覚めて復活しちゃうよ!!そしたら
又大変な事になっちゃうよおーっ!!」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 光と闇 作家名:流れ者