zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 チビ、いなくなる
「よし、……仕方ねえ、階段まで一気に走るぞ……!!」
「ちょっと待って……!!お土産を置いて行こう、……イオナズンっ!!」
「……ぎゃあああああーーっ!!」
アルベルトの放ったイオナズンがスタンドのモンスター観客もろとも
巻き込み、格闘場は大爆発し、大騒ぎになる……。
「うふふふ♡はあ~、久々にすっきりした……、ざまあみろ……、よ、よし、
行こうっ!!」
「……アル、お前ってさあ……」
「ん?何だい、ジャミル」
「何でもねえよ……、行こう……」
ジャミル達は格闘場が混乱している最中に次の場へと逃げるので
あった……。
「はあ、何かすっきりしねえ、胸糞わりィ……、ブツブツ、
ブツブツ……」
「そう?僕はすかっとしたけどね……」
「お前、ただ暴れたかっただけだろうが……」
「そんな事ないよっ!ねえ、皆!」
「う、うん……」
「アルったら……、ご機嫌だわ……」
「~♪」
階段の先はポルトガの灯台の様な場所であり、そこを通り抜けた先は
お城であった。
「……ハア、次は何処だよ?」
「お城の中みたいだよお!……洞窟は抜けたんだねえ、良かった~!」
ダウドが喜んで燥ぎ回るが、アルベルトが注意する。
「油断しては駄目だよ、……敵の城かもしれないんだからね!」
「でも、全然雰囲気が違うわ、ほら、綺麗なお花!」
アイシャが城内に植えてある花を見て喜んでいる。確かに、場所の感じから
して此処はモンスターとは無縁の場所の様である。其処へ、4人の前に丸々と
肥えた王様が、のしのしと姿を現す。
「よくぞ、参った、儂はこの城の主、ゼニス一世であるぞ、そなた達は
下界から神竜に会いに、わざわざ参ったのであろう?」
「あっ、……国王様でしたか、初めまして……、僕らは世界中を
旅しております……、あそこにいる、……一応、勇者と……、
その連れです……」
アルベルトが頭を下げると、アイシャとダウドも挨拶した。
「……おい、一応とはなんだっ!一応とはよ!!」
「あの……、国王様……?神竜って……、もしかして……、
どんな願いも叶えてくれるって言う……」
アイシャが聞くと、ゼニスは丸っこい顔で笑顔を見せながら答える。
「この城を抜けた先の塔の最上階に住んでいる、……神竜は
手強いぞ……、神竜と戦い、勝利した者だけが褒美を得られる、
それでも行くのか……?」
「下の世界で聞いたあれか……、けど……、今は願い事よりも、
ちょっと、あんたに聞きたい事があるんだよ……」
「ふむ?」
ジャミルが訪ねると、ゼニスは不思議そうな顔をした。
「俺達の前に……、この城に誰か来なかったかい?」
「そう言えば……、真っ白い小さなドラゴンが……、この城を通って、
ぽてぽてと塔に向かって行った様じゃが……、何だかあまり元気が
なかった様じゃったぞ」
「チビちゃんだよお!……それじゃチビちゃんは神竜の所に行ったんだあ!
でも、どうして……?分かんないよおお……」
「それを確める為にも……、この先の塔に行かなきゃな……、
もしかしたら、チビは神竜に捕まってるって事もあり得る、
だとしたら、神竜と戦ってでもチビを助けなきゃ……」
「そうか、……理由は分らぬが……、神竜の所まで辿り着くまでにも
強力なモンスターが塔には潜んでおる、くれぐれも気を付けてな……」
ジャミル達はゼニスに礼を言い、塔へ向かおうとした、その時……。
「お久しぶりです……、勇者さん達……」
「?あ、あんた、確か、詩人だっけ……?」
旅先先で出会った、不思議な被り物の詩人が……、再びジャミル達の前に現れた。
「等々、あなた達も此処まで辿り着いたのですね……、お見事です……」
「ハア……、それはいいけど……、あんた、何で此処に……?」
神出鬼没の詩人にジャミル達は首を傾げ、目をパチクリさせる。
「……私は旅の案内人です、正体を明かす事は出来ません」
詩人はそう言うと、ウインクし、自身の指を口に当てた
「はああ……?」
「ですが、冒険に終わりはありません、これからもどうか、
色々な所を旅し、世界の謎を解き明かして下さい……」
詩人はそう言うと、ダウドに賢者の石を握らせた。
「これって……、貰っていいの……?」
「……神竜は本当に生半可ではありませんよ、覚悟して臨む事です……、
それではいつか又お会いする日まで……、ごきげんよう……」
詩人はジャミル達に頭を下げ、何処かへ姿を消した……。
「行っちまった……」
「でも、ラッキーだったね、これで賢者の石が二つになったよ…、
はい……」
ダウドは喜んで、詩人がくれたもう1個の賢者の石をアイシャに手渡す。
「有難う、ダウド、これがもう一つあるだけでも何だか心強いわね、
私もこれで回復の方にも回れるわ!」
「えへへ、ちょっとだけ気が楽になったよお!」
「けれど、それだけ……、神竜の力は半端じゃないって事だよ、
ダウド……」
「あうあううう~……、うええ……」
「俺達もこの先……、どうなるか分かんねーけど、
とにかく行こうや、チビを取り返しにな!」
仲間達は静かに頷く。4人は神竜の塔へと続くであろう、
階段に向かって歩き出した、が……。
「ちょいと、ちょいと!其処行くお兄さん達!」
「あ?ああ……?」
今度は、謎の鍋を持った変なおばさんがこちらに走って来た。
鍋の蓋からは物凄い湯気が吹き出ている……。
「神竜の所へ行くんだろう?なら、このシチューを食べていきな!」
おばさんは鍋の蓋を開けて、ぐつぐつ煮え立った見るからに
熱そうなシチューを4人に見せる。
「へえ、美味そうだなあ……、でも、何で?」
「神竜と戦う前の、薬みたいなもんだよ!」
(どうも、このおばさん、誰かに似ている様な気がするんだけど、
……気の所為かな……)
「俺、丁度腹減ってるし、貰うよっ!」
「あ、ジャミル……」
アルベルトが止めようとするが、既にジャミルはスプーンで
シチューを一口、口に入れてしまっていた。
「……あ、ああああああっ……、つううううううううーーー
いいいいーーー!!」
「やっぱり……」
「ジャ、ジャミルっ……!大丈夫!?」
アイシャが心配してジャミルに声を掛けるが、ジャミルは舌を大火傷した
様であり、それ処ではない状態であった……。
「あーっはっはっはっ!やっぱり、若い子をからかうと
楽しいねえー!」
(そうだ、……どうも誰かに雰囲気が似ていると思ったけど、ルザミの
変なおばさんだ……)
「もう、ホントに食い意地が張ると、碌な事ないよね……、早く
チビちゃんの所に行かなきゃなんないのにさあ~……」
「……う、ひゃひゃい、ばふゃふぁでゅふぉ……、こんひょ、
くひょばひゃああ……」
もはや、何語だか意味不明である。
「多分、……う、うるさい、バカダウド……、こんの、クソババア……、
作品名:zoku勇者 ドラクエⅢ編 その後編 チビ、いなくなる 作家名:流れ者