土塊に咲く花
「すべての記憶を吸い切ってしまわないように、僕がある程度調節したらどうでしょう。残った記憶の種類によって、人間の味も変わるかもしれませんよ?」
「それでは、高田君の腹が満たされないじゃないか。でも、どうなるのか少し興味があるな」
ぎらぎらと目を輝かせる大内さんに、もう人間の姿の面影はない。鬼である彼がいつまで、仲間のふりを続けてくれるかなんてわからないのに。人ならざる本来の僕が享受してしかるべきこの生き方にこそ、幸せを見出してしまっているんだ。
「折角ですからもうひとつ、頂きに出かけませんか?今夜の空は星が綺麗ですよ」
新しく出来た染みを踏みしめて立ち上がる。血の匂いにあてられてしまったのか、食事の後にも関わらず空腹感が満ちている。嬉しそうに微笑む鬼……大内さんと共に、夜の狩場へ飛び出した。