遊十小説その1
本来ならいてはいけない時代に自分の存在。在るべき形に戻るべきなのだ。
――別れの時がそう遠くない日に必ずやってくる。
だけど、
ああだけど、
今はこの自分を包むぬくもりを失いたくない。
遊星の腕の中はとても心地よくて、涙が出そうなほど温かくて…。永く生きていく自分にとって手放しがたいもの。
自分を抱きしめている遊星はまだ眠りの中。先ほどのユベルとのやりとりには気づいていないようだ。項に規則的な寝息があたりこそばゆい。ホッと安堵する。今の話を聞かれていたら色々感づかれるだろう。
逃さないと、がっちり絡む両腕。素肌に触れるかさついた指先。身長差はそれほどないはずだが、遊星の身体は十代をすっぽり包み込む。
ずっとなんて願ってはいけない。だから今だけは、
夜明けはあともうちょっと。
この優しい闇に包まれていよう。