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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 32

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最終章 戦士達の大団円


 ロビン達のウェイアードを懸けた戦いから、数年の時が過ぎ去った。
 デュラハンとアレクスによる悪しき力で、ウェイアードは大きく傷付いた。それはハイディア村とて例外ではなかった。
 ロビンとその仲間達の最終決戦の地となったアルファ山に程近いハイディア村は、その傷跡を色濃く残していた。
 村の家々は、ほぼ全てが倒壊しており、村人の姿もなかった。
 母親を失ってしまったと思ったロビンは、絶望の縁に立たされた。家族全てを失ったと思われたジェラルドは、ロビン以上に悲嘆にくれた。
 しかし、ハイディア村の人々は誰一人として死んではいなかった。
 これは太陽神ソルの計らいであり、ハイディア村の危機を村民に伝え、近隣の村、クープアップ村へと避難させていた。
 家から何まで失ってしまったが、命の助かった村人達はロビン、ジェラルド、ガルシア、ジャスミンの四人の再会に喜びに浸った。
 それから、ロビン達とハイディア村の民によって、ハイディア村の復興が始まった。
 大戦に付いていけず、レムリアに置いてきたスクレータ達もハイディアへと戻り、復旧を手伝った。
 イリスは、ハイディア村の復興のみならず、ウェイアード全体の復興を担った。いくら神とはいえウェイアードの復興には大変な事が多くハイディア村の復興が大方終了した後、ロビン達も手を貸した。
 邪教徒によって荒廃したキボンボ村とボルケイ村はジェラルドとジャスミンが。アレクスの奸計によって痛手を受けたイミル村はメアリィとピカードが。デュラハンによって魔龍オロチを復活させられたイズモ村には、シンとヒナがそれぞれイリスと共に復興を手伝った。
 イワンとハモは、故郷であるギアナ村の復興を手伝おうとしたが、デュラハンの魔の力を色濃く受けていたため、人が住めるようになるには、イリスの力を用いても更に数年の月日を要した。
 アネモスの巫女であるシバは、ラリベロへと帰った。アネモス族の末裔であるシバは、融合の媒体の力を持っていたが、ウェイアードの危機が去ると、その力が無くなっていた。
 レムリア人のピカードは、翼を携えたレムリアの船で故郷へと帰っていった。
 住むべき所が無くなってしまったイワンとハモは、ハイディア村に身を寄せることにした。
 天界の女神イリスは、ウェイアードのほぼ全域を復興すると天界へと帰還していった。
 ロビンら戦士達の復興活動が行われて数年後、ウェイアードは元の姿に戻りつつあった。
 そして今日、ウェイアード復興を記念して、ロビン達はハイディア村へと集まっていた。
「みんな久しぶりだな!」
 ロビンは嬉々として言った。
 二十歳を過ぎたロビン達はすっかり変わっていたが、誰が誰か分かっていた。
「ロビン、すっかり大人っぽくなったわね」
 ヒナは言った。ヒナは元々二十代だったため、それほど変わりはなかった。
「それにしてもジェラルドはずいぶん変わったわね」
 ヒナは少し驚いた様子であった。
 ジェラルドは髭を蓄え、いかにも大人の容姿をしていた。
「男なら髭を生やしてなんぼだろ?」
「単に髭剃りが面倒になったんじゃないの?」
 ヒナは訊ねる。
「まあ、そうとも言う、かな」
 ガハハとジェラルドは笑った。
「ハイディアでの生活はどうだった、イワンにハモさん?」
 シンが訊ねた。
「四季がはっきりしてて、とても住みやすいところです。ギアナ村は冬が厳しかったですからね」
 ハモが答えた。
「ごめん、遅くなったわ」
 光の粒が人型になり、その正体が露となった。『テレポート』でやって来たのはシバである。
「シバか、久しぶりだな。ラリベロでの暮らしはどうだ?」
 ガルシアが訊ねた。
「ギョルギスさんにはよくしてもらってたわ。ガルシアも元気そうね」
 シバは明るく答えた。
「皆さーん、お待たせいたしました!」
 遠くから手を振って、メアリィはロビン達に駆け寄ってきた。
「お、メアリィも来たか」
 ジェラルドは言った。
 イミル村の治癒役を行っていたメアリィは、何とかこの日を空けるために一生懸命に働いていた。
 灯台が灯り再びヘルメスの水が出るようになり、イミル村の疫病も良くなり、数日であればメアリィが不在でも大丈夫であった。
「久しぶりだなメアリィ!」
「へっ? 熊? あ、いえ、ジェラルドですよね、すみません。そんな髭面でしたから……」
「く、熊……」
 ジェラルドは、軽くへこんでしまった。
「うんうん、みんな元気そうでなによりだな。シバにメアリィ、シンとヒナさん、みんな揃ったか?」
 ロビンは誰にともなく訊ねた。
「おい、何だあれ!?」
「船が空飛んでるぞ!」
 村の男達が驚きの声を上げた。
「あの船は、レムリアの船です」
「となると、最後の一人のお出ましね」
 翼を持ったレムリアの船に乗っていたのは、ピカードであった。ロビン達が力を合わせてもエナジーの消費が大きいと言うのに、ピカードは立った一人でハイディアまでやって来た。
 ピカードは、村の外に着陸すると、船を降りてロビン達のもとへ歩いてきた。
「すみません、お待たせしました」
 ピカードは、一度お別れした時から数年経ったと言うのに、全く姿が変わっていなかった。レムリア人特有の長命がなせる事であった。
「派手な登場だなピカード」
「いえいえ、僕だけの力じゃここまで飛んでこられませんよ。むしろ彼女の力がほとんどだったくらいですよ」
「彼女?」
「着替えは済みましたか、イリス?」
 ロビンは驚いて言った。
「イリスだって!? イリスってあの!?」
 ソルに導かれし虹の女神、天界で最強の力を持つかの女神、イリスの名をロビンは叫んでしまった。
 虹の女神の名を持つ者であるイリスは、ハイディアの民を驚かさないために、普段の装束ではなく、変装を行っていた。
 ピカードに呼ばれると、イリスは船から降りてきた。純白のワンピースに髪を一つに束ねた、とても質素な風貌をしていた。しかし、それでも打ち消せぬ神性が溢れ、とても美しくロビン達の目に写った。
「皆さんお久しぶりです」
 イリスは軽く挨拶をした。
「二人とも、何年も経ったのにあの時のままね……!」
 ジャスミンは驚いていた。
「数年くらいではレムリアでは半年過ぎたくらいですからね。むしろこっちが驚きましたよ。皆さんがそこまでお変わりになった事に。特にジェラルド、立派なお髭ですね」
「お、ピカードは分かってくれるか? この髭の良さに」
 ジェラルドは髭を撫でる。
「何だか複雑ですね。皆さんだけ変わって僕だけが変わらない。レムリアを外界から切り離した人の気持ちが分かる気がしますよ……」
 皆と違って変わらない自分に、ピカードは少し寂しさを感じた。
「私は何百年と天界を統治しています。姿も何百年と変わっていませんよ。私からすれば皆さんとアレクスを倒したのは、ほんの数日前の事のようですよ」
 イリスは、ピカードを慰め、微笑みを向けた。
「ピカード、湿っぽくなるのはここまでだ。今日はとことんまで楽しむ日だ。心行くまで飲んで食べて、歌って踊ろう!」
 ロビンは、村民を向いた。
「皆も村の復興を祝おう!」
 おー、と言う村人達の返事と共にハイディア村の宴は始まった。