黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 32
エピローグ
季節は巡り、春がやってきた。
ハイディア村では、村復興のお祝いから続いて再びお祝いが行われていた。
そのお祝いとは結婚式である。
村人達総出で祝われていたのは、ロビンとジャスミンであった。
ずっと長い間愛していた、ジャスミンのロビンへの情が叶った時だった。
思えば、今日この日まで色々なことがあった。
幼い頃からずっと友達であり、ガルシア、ジェラルドと共に野山を日が暮れるまで駆けてはよくままごとをしていた。
その時から父役にはロビンが選ばれており、決してジェラルドが選ばれることはなかった。
成長するにつれて、ジャスミンのロビンへの友情は恋慕に変わっていった。しかし、世界の命運を懸けた旅をする事になり、一時は二人の仲が引き裂かれてしまう。
その後、デュラハンとアレクスを倒し、世界に平和が戻った時を好機と見て、ジャスミンはロビンに想いを伝えた。なんとその想いは、ロビンも同じであった。
世界が平和になったのを記念として、二人はすぐに婚約することにした。
式は、村の神殿にて厳かに行われていた。
「新郎ロビン、お前はいつ如何なる時も妻を永久に愛し続けていく事を誓うか?」
ロビンは、迷いなく答えた。
「誓います」
「よろしい……」
神官は次にジャスミンを向いた。
「新婦ジャスミン、お前は病める時も健やかなる時も夫と共に進んでいくと誓うか?」
ジャスミンは、涙を浮かべながら答えた。
「誓います……!」
「よろしい……」
神官は、神殿にあるレリーフに向かって歩いた。
「新郎新婦の心は聞いた。いざ、新たなる夫婦の誕生に祝福を!」
参列者達は一斉に拍手した。
「妹を頼んだぞ!」
ガルシアが言い。
「ジャスミンを泣かせんじゃねぇぞ!」
ジェラルドが言った。
式には、世界を救った仲間達も参加していた。
「ジャスミン、素敵ですわよ!」
「ロビン、決まっていますね!」
イワンとメアリィが拍手しながら大声で言った。
「羨ましいぜ、このこのー!」
「ほんっとう、綺麗だわ。二人ともお幸せにね」
茶化すようにシンが、うっとりと羨望の眼差しをヒナが向けた。
ふと、空間に光の粒子が集まり、人型を成していった。
「ごめんなさい、遅れたわ!」
『テレポート』のエナジーを使用して出現したのはシバであった。
「シバ、やっと来たか。どこで道草食ってたんだ?」
シンが訊ねる。
「道草なんか食ってないわよ! ギョルギスさんに外泊の許可をもらってたのよ。ギョルギスさんったら心配性だから」
「ふーん、二十過ぎてもその箱入りっぷり、こりゃー結婚するのが大変そうだな。なぁ、ガルシア?」
「な、何故俺を見る、シン?」
「何でもねぇよ」
「な、なんだあれは!?」
「んあ?」
突然村の男が、空からやってくる何かに気が付いた。
ジャスミンのウェディングドレスに、負けず劣らずの純白のドレスに身を包み、背中に虹色の翼を羽ばたかせる者がいた。
それは、天界での礼装姿のイリスであった。
「イリス様だ! イリス様も結婚の儀にいらっしゃったぞ!」
「イリス! 来てくれたのか!」
ロビンは言った。
「ええ、天界での仕事を早めに切り抜けたのですが、遅くなり、申し訳ありません」
「気にするな。来てくれただけで嬉しいよ。それより早く下りてきたらどうだ? みんなの注目の的になってるぞ」
女神であるイリスは、ウェディングドレス姿のジャスミンさえも超える美しさを持ち、村人達の注目を浴びていた。
「ああ、そうですね。このままではあなた方よりも目立ってしまいますわね。すぐ下ります!」
イリスは翼をたたみ、地面に着地した。
「改めまして、ご結婚おめでとうございます。ロビンにジャスミン」
「女神様直々に祝ってもらえて光栄だよ、イリス」
ロビンは照れ臭く言う。
「女神様だなんて、今さら言わないでください。私は女神である前にあなた方の友人なのですから」
「はは、女神様が友達ってのもすごいことだけどな」
ロビンは笑った。
「この後は宴だ。もちろんイリスも参加してくれるんだよな?」
「ええ、儀式が見られなかった分、楽しませてもらいます」
「イリス、お前相当酒に強いらしいな?」
シンは訊ねた。
「はい、デュオニソスに勝てるほどには」
シンはニヤリと笑った。
「なら、今回はオロチを倒すのに一役買ったイズモの酒を飲んでもらうぜ。もちろんロビンとジャスミンにもな」
「それは楽しみだ。それじゃあ宴と行こうか!」
ロビンの言葉で、婚礼の宴は始まった。
歌と踊りの祝福の中、ロビンとジャスミンは派手に祝われた。それは、ハイディアの復興の宴よりも盛り上がるものだった。
新たなる夫婦の誕生に、誰もが祝った。
「ジャスミンと結婚するのは俺だと思ってたのに! チキショー、幸せにしろよロビン!」
ロビンの友人の男は、ロビンに言いかけた。
「ああ、お前の分もジャスミンを大切にするよ」
ロビンは笑顔で答えた。
「ジャスミンったらとっても素敵よ。もちろんロビンもね。ああ、本当、二人が羨ましいわ!」
ジャスミンの友人は、心から羨んでいた。
「ええ、私、とっても幸せよ」
ジャスミンは、屈託のない笑顔を向けた。
「おーい! お二人さん。こっちで一緒に飲もうぜ!」
少しはなれた所からシンが手を振っていた。
辺りの人々は、行っておいで、と言うかのように道を開けた。
「みんなも宴を楽しんでくれよ!」
ロビンは、彼とジャスミンを取り巻いていた人々に一言告げて、シン達のもとへ歩いていった。
「先に始めてたぜ」
シンが仕切る酒宴は、少し前から始められていた。
酒に弱いイワンとメアリィは、既に赤くなっていた。
ピカードは、大して変わらず、ヒナもまだまだ酔いが回っていないようだった。
「うーん……ボクはまだ飲めますよ……」
イワンは、ぶどう酒を四杯飲んだだけであるが、すっかり目がすわっていた。
「わらひもおかわりー!」
メアリィは、舌が回らなくなっていたが、まだ飲むつもりであった。
「二人とも、ちょっと休憩したらどうだ?」
ガルシアは、二人を休ませようとした。
ガルシアは自身の酒癖の悪さを自覚しており、ぶどう酒一杯でひとまず止めていた。
「大丈夫ですよガルシア。悪酔いしても僕の『アンチドウテ』を使えば、たちどころによくなりますから」
「ピカード、それじゃエナジーを使うお前は楽しめないんじゃないのか?」
シンは言った。
「心配には及びませんよ。レムリア人はどういうわけかお酒に強いんです。その昔、ハイドロ様もレムリアの酒を酒樽一個空にして、顔色一つ変えなかったそうですから」
レムリア人は皆、解毒のエナジーを持っており、泥酔する事はなかった。
ピカードも例外はなく、既にぶどう酒を十杯飲んでいるが、酔っている様子はなかった。
「そんな事より、主役のお二人がまだ一滴も飲んでいないではないですか。ぶどう酒でいいですか?」
「フフ……ぶどう酒なんて甘いぜ、ピカード。オレが持ってきたイズモの酒をまず先に飲んでもらうぜ!」
シンは、エナジーで酒樽を出現させた。
作品名:黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 32 作家名:綾田宗