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バイオハザード Fの起源  第一話 ホークアイズ(鷹の目)

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ニューヨーク、マンハッタンの煌めく夜景を眼下に、超高層マンションの最上階。

そこにレオンが手配したセーフハウスがあった。
防弾ガラスの向こう、無数の光の粒が宝石のように瞬き、大都会の喧騒は嘘のように遠ざかっていた。
室内は、ミニマルながらも選び抜かれた家具と、最新の通信機器が整然と並び、間接照明が仄暗く、しかし洗練された大人の空間を演出している。

夜遅く、重厚な扉が音もなく開いた。レオンは、ガラスのローテーブルに広げられた数枚の資料に目を落としたまま、その人物の登場を待っていた。
入ってきたのは、暗闇の中でも一際その存在感を放つクリス・レッドフィールド。
引き締まった体躯を包むのは、ミリタリーテイストのシャツではなく、ダークデニムのジャケットと、控えめなバンドロゴがプリントされたチャコールグレーのTシャツ。

任務中のフルアーマーの下では隠されている胸板や腕の筋肉の隆起が、わずかに透けて見える。
40代特有の渋みと、幾多の死線を越えてきた男にしか宿らない、深みのある眼差しが、部屋の隅々までを見渡した。
疲労を一切感じさせないその姿は、まるで街の獣が獲物を追うかのようだ。

「遅くなったな、レオン」

レオンは、グラス片手に窓辺へと向かう。

普段のワイルドな革ジャン姿とは異なり、今日の彼は、襟元を大胆にはだけさせた純白のドレスシャツを着こなしている。
タイトなパンツと、シャツから覗く鍛え抜かれた胸筋のわずかな影が、彼の持つ秘めた色気を際立たせていた。

アッシュブロンドの髪が、高層ビルの光を反射して淡く輝く。
都市の夜景を背負ったその横顔は、危険な任務と無数の死線を潜り抜けてきた男特有の冷静さと、どこか憂いを帯びた知的な美しさで、見る者を惹きつける。

クリスは無言でレオンの向かいのソファに腰を下ろした。
革のソファが軋む音も、彼の存在感にかき消されるようだ。
彼の視線は、すぐにテーブルの上の写真に吸い寄せられる。

れは、おぞましい姿に変異したB.O.W.や、破壊された研究施設の残骸を写したものだった。
写真の隅には、東欧の凍てつく地の雪が写り込んでいる。

「連中は、新たなウイルスを使っている。フォルティスウイルス(Fウイルス)だ。既存のデータにはない、強力な感染力と、何より感染した妊婦の胎児に異常な影響を与える能力を持っているようだ」

クリスは、重々しい口調で東欧での任務について語り始めた。
ソファに深く沈み込みながらも、彼の体から放たれるオーラは、部屋の空気を張り詰めさせる。
彼は、修道院の地下で発見した培養槽や輸送機の写真を示しながら、続けた。

「そして、最も警戒すべきは、これだ」

クリスは、一枚のデータチップをレオンに手渡した。
彼の指先が、一瞬レオンのそれに触れる。
その指は、銃器を握り慣れた武骨さと、細部にまで気を配るプロフェッショナルな繊細さを併せ持っていた。

「施設に残されていたログファイル。この中であるバイオテロ組織が恐るべき計画を語っていた」

レオンはデータチップを受け取り、用意されていた小型のリーダーに挿入し、壁面の大型モニターに映し出した。
そこに映し出されたのは、複雑な科学データと、狂信的な言葉の数々だった。

「フォルティス(最強の)ウイルス…か。『優れた人間』の量産、だと?」

レオンは、画面に表示されたキーワードを読み上げた。唇の端に、かすかな嘲笑が浮かぶ。

「人類の『進化』と称して、結局は自分たちの都合のいい『兵器』を創り出そうとしているらしい。いつの時代にも、愚かな理想を掲げる者は後を絶たないな」

クリスは、深く頷いた。
Tシャツ越しにもわかる彼の厚い胸板が、静かに上下する。

「奴は、このFウイルスを利用して、異常な身体能力や感覚を持つ人間を創り出そうとしている。そして、そのための成功例、あるいは研究の鍵となる存在を探しているようだ」

ここで、クリスはレオンに対し、東欧で得られた輸送先の候補地(アメリカ合衆国の地名と東南アジアの孤島の座標)を伝える。
レオンは、クリスの報告を聞きながら、自身の調査で得られた情報を整理していた。

「奇妙な符合がある」

レオンは、モニターに映るFウイルスのデータと、ペンタゴンで見た機密情報を照らし合わせながら言った。

「ペンタゴンが保護しているフォルティスウイルスと、そしてそのウイルスに完璧に適合したとされる人物…コードネームは『ホークアイズ』だ。さらに、お前の報告にある科学者…」

レオンは、ある人物のファイルを開き、クリスに見せた。
それは、かつてアルバート・ウェスカーの研究チームに所属していた科学者のデータだった。

「ソニア・ホークアイズの父親アーサー・ホークアイズ教授…彼の研究テーマは、フォルティスウイルスと、それが妊婦に与える影響、そして胎児への特異な改変だった」

レオンの声は、次第に重みを増していく。

「そして、お前が言ったフォルティスウイルス…恐らく、それは彼の研究の成果なのだろう。奴らはホークアイズを、その成功例として利用しようとしている可能性がある」

二人の間には、重い沈黙が流れた。
それぞれが、別々の場所で追ってきた点が、一つの線に繋がろうとしていた。
マンハッタンの夜景だけが、二人の背後で無関心に輝いている。
クリスは、決意を込めた目でレオンを見つめた。彼の瞳には、これまでの

数多の戦いの経験と、人類を守るという揺るぎない使命感が宿っている。

「奴らの計画を阻止しなければならない。フォルティスウイルスが、新たなバイオテロの脅威となるのは明白だ。これ以上、ホークアイズのような犠牲者を出してはならない」

レオンは、モニターの光を浴びながら、静かに頷いた。
グラスに残った琥珀色の液体が、彼の指先でわずかに揺れる。
二人の視線が交錯する。

深夜の隠れ家で、二人の英雄は、人類の未来をかけた新たな戦いの始まりを静かに誓うのだった。

[newpage]

ペンタゴンの最奥、機密情報が渦巻く極秘フロアの一角。

ジェイク・ミュラーは、腕を組んで足をデスクに投げ出して、踏ん張り 帰った姿勢ではいるが、眉間に皺を寄せながら目の前の端末を睨んでいた。

まだ20歳そこそこにもかかわらず、190cm の長身に、細めだが鋼鉄をまとったような筋肉。
ベリーショートの栗色の髪に、ネコ科の猛獣のような鋭い 青い瞳。
左頬に1本 走る切り傷は、傭兵として生きていた頃のものらしい。

「ジェイク、まだか?」

しかし、その静寂は長くは続かない。
隣にいた、ペンタゴンの同僚エージェント、ソニア·ホークアイズの声が、ジェイクの集中を途切れさせた。
波打つ黒髪に、光を放つ金色の瞳。
小柄で華奢な体、日系の祖母譲りのシミ一つない真っ白な肌。
どちらかと言えば童顔と、鋭い眼光がうまく合わさって彼女をより美しく見せている。

「まだだ、バカ女。そう急かすな」

ジェイクは反射的に吐き捨てた。
プライベートでのいつもの呼び方だ。

プライベートでは、普段から振り回されっぱなしだったが、それでも、ジェイクの脳裏には、ソニアの並外れた能力が鮮明に焼き付いていた。