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バイオハザード Fの起源 第3話 ソニアの脱走~エイダの罠

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エイダは微笑んだ。
その微笑みは、優しさではなく、むしろソニアの好奇心を煽るような、蠱惑的なものだった。

「知りたいでしょう? 貴方の出生の真実。貴方の母親の悲劇。そして、貴方の父親が命をかけて守ろうとしたもの。全てを」

エイダはソニアの目の前に、小さなデータチップを差し出した。
その表面は、光を反射し、まるでソニアの未来を映し出すかのように輝いていた。

「この中には、貴方が知るべき『真実』が詰まっているわ。ただし、開くかどうかは貴方次第。真実を知ることは、時に残酷なものだから」

エイダの言葉は、ソニアの心を深く揺さぶった。
彼女は、真実を知るべきか否か、葛藤した。
しかし、父親が命をかけて守ろうとしたもの。
その言葉が、ソニアの心に深く響いた。

彼女は、自身の両親について、断片的な情報しか持っていなかった。
その空白を埋めたいという欲求が、エイダの警告よりも強く彼女を突き動かした。

エイダはソニアの葛藤を見透かしたように、わずかに身を翻した。
その動作は流れるように滑らかで、まるで影絵のようだった。

「選ぶのは貴方よ、ソニア・ホークアイズ。貴方の『鷹の目』は、真実を見抜く力を秘めている。そうでしょう?」

そう言い残し、エイダは影に溶け込むように姿を消した。
病室には、ソニアと、手に残されたデータチップだけが残された。

ソニアは、そのデータチップを握りしめた。彼女の「鷹の目」は、そのチップの中に隠された、運命を変えるであろう情報を感じ取っていた。

それは、彼女の人生を大きく変えることになる、危険な誘惑だった。
しかし、彼女は、その誘惑に抗うことはできなかった。
真実への渇望が、彼女を突き動かしていた。

その日の夕方、レオンが到着するまでの間に、彼女は自問自答を繰り返していた。
部屋の白い壁が、彼女の心を映すかのように、どこまでも白く、空白に感じられた。

真実を知ることは、果たして自分にとって良いことなのだろうか。
知ったところで、何が変わるのだろう。
しかし、父親が命をかけて守ろうとしたもの、そして母親の悲劇という言葉が、ソニアの心を強く揺さぶっていた。
彼女の「鷹の目」は、単なる視力ではない。隠された真実を、その微細な手掛かりから読み解く力を秘めている。

ソニアは、意を決してデータチップを起動させた。
指先がタッチパネルに触れると、微かな光が走った。

画面に表示されたのは、膨大なファイルと、その中に隠された、想像を絶する真実だった。
彼女の「鷹の目」は、肉眼では捉えられないほどの速度で情報を読み解いていく。
それは、単なる視覚情報だけでなく、データの流れ、記録された微細な電子信号の揺らぎまでをも感じ取る、彼女の驚異的な知覚能力だった。

まるで、情報そのものが彼女の脳に直接流れ込んでくるかのようだった。
ファイルの一つに、「被験者C-7」と記された記録があった。
それは、ソニアの母親の記録だった。彼女の心臓が、大きく、そして重く脈打った。

記録によると、ソニアの母親は、父親がFウイルス研究の初期段階で、ある組織によって意図的にウイルスを感染させられた。
その事実が、ソニアの体に衝撃を与えた。
母親は、自ら望んで感染したわけではない。
「実験台」として、利用されたのだ。

組織の目的は、Fウイルスが妊娠中の人間に感染した場合に、特定の条件下でFウイルスと適合し、ユニークな能力を持つ「完璧な適合者」が生まれるという、父親の仮説を検証することだった。
ソニアの母親は、そのための冷徹な「実験台」として利用された。

母親はゾンビ化を抑える薬を投与されながら、出産まで苦しみ抜いて生きながらえたという記録は、ソニアの胸を締め付けた。
その壮絶な苦痛を想像するだけで、呼吸が苦しくなる。そして、ソニアが生まれたと同時についにゾンビ化してしまい、用済みとして組織の手で殺される、という悲劇的な最期を迎えていた。

その記録の行間からは、母親の絶望と、胎内のソニアへの最後の愛が、にじみ出ているようだった。

さらに、父親の記録も続いた。
ソニアの父親は、妻が組織に利用され、殺されたことを知り、深い絶望と怒りに囚われた。
彼は、妻の死を無駄にしないため、Fウイルスの研究を兵器応用から「解毒剤」や「救済の力」へと方向転換しようと試みた。

しかし、その動きを察知した組織のボス(元部下)によって殺された。
データは、そのボスが、単なる裏切り者ではなく、Fウイルスで作られた「超人的な力をもつ人間」こそが人類の未来だと信じる、狂信的な思想家であることを示唆していた。
彼の目的は、Fウイルスで人類を「進化」させ、選ばれた者だけが生き残る世界を作り出すことである。そ
れは、ソニアの父親が目指した「救済」とは真逆の、恐ろしい計画だった。

ソニアの視力は、肉眼では捉えられない微細なフォントで記された実験日誌の、わずかなインクのにじみ、筆圧の強弱、そして改ざんされたと思しき箇所のデジタル痕跡までをも見抜いた。
彼女の脳裏に、悲痛な叫び声と、実験室の冷たい光景がフラッシュバックする。
母親が、胎内のソニアを守るため、どれほどの苦痛に耐え、組織によって利用され尽くしたのか。
データが示すその悲劇は、ソニアの心の奥底に静かな、しかし確固たる怒りを点火した。

彼女自身の出生が、この忌まわしい実験の「成果」だったのだ。
彼女は、ただの適合者として、生まれる前から利用される運命にあったことを知った。

「許さない……」

ソニアは、自身の運命を仕組んだ者たちへの復讐と、Fウイルスの悪用を阻止するという、強い決意を固めた。
彼女は、もうペンタゴンに守られるだけの存在ではない。
自分自身の「鷹の目」で真実を見抜き、行動するのだ。

彼女の体内で脈打つ力が、その決意に呼応するかのように、微かに活性化しているのを感じた。
データは、母親が最後に収容されていたとされる、とある廃墟の研究所の場所を示していた。
そこは、Fウイルスの初期研究が行われた場所であり、組織が現在も秘密裏に活動している場所の可能性を秘めている。


[newpage]

ソニアは、静かに立ち上がった。
彼女の「鷹の目」は、既に次なる行動の全てを見通していた。
病室の監視カメラの死角、警備員の巡回ルート、そしてラボの脆弱なセキュリティシステム。
全てが、彼女の脳内で完璧な脱走経路として構築されていく。

(レオン・S・ケネディ…あなたはきっと、私を止めに来るでしょうね)

ソニアの口元に、自惚とも自嘲ともつかない、かすかな笑みが浮かんだ。
彼の顔が目に浮かぶ。
きっと、「危ないからペンタゴンに残れ」「君は保護対象だ」とでも言うのだろう。
彼の、いつもの優しさに満ちた、しかし時として人を苛立たせるような、あの保護的な言葉。

(言っておくけど、あなたのそういうところが、時々鼻につくのよ。私がどれだけあなたに助けられてきたかなんて、百も承知だわ。でも、私はもう、誰かの保護対象でいるつもりはない。自分の目で見つけて、自分の手で終わらせる。私の戦いに、保護者面した色男の口出しは無用よ)

彼女は心の中で、レオンに向かって悪態をついた。