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バイオハザード Fの起源 第4話 ケネディ捜査官 F

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ソニアの病室の窓から見下ろす夜景は、彼女の視界を通して、もはや日常的な風景ではなかった。

街の灯り一つ一つが、単なる光源としてではなく、そこから放たれる微細な熱、電磁波、そして肉眼では捉えられないほどの空気中の塵までもが、複雑な情報の粒子として視界に飛び込んできた。
それは美しくもあり、同時に脳を疲弊させる情報の奔流でもあった。

「はぁ…」

ソニアは深くため息をついた。
右腕のギプスはまだ外れない。
だが、この異常な視力だけは彼女の一部となって、戦う武器として顕在する。

その時、病室のドアがノックされた。クリスか、それともレオンか、あるいはジェイクか。
ソニアが返事をすると、ドアがゆっくりと開き、そこに立っていたのは意外な人物だった。

「傷の具合はどう、ソニア、少し話せる?」

そこにいたのは、Gウイルスから得た強靭な肉体を持つ、ホワイトハウスのエージェント、シェリー・バーキンだった。

彼女は控えめな笑顔を浮かべていたが、その瞳の奥には、どこか深い不安が宿っているように見えた。

「シェリー…もちろんよ。どうしたの?」

ソニアはベッドに座り直し、彼女を迎えた。
シェリーはそっとベッドサイドの椅子に腰掛けた。

「ジェイクが、心配していたわ。ソニアが意識を取り戻したって聞いて、少し安心したみたいだけど…彼はああ見えて、不器用だから」

シェリーはふわりと笑った。
ジェイクが自分のことを心配していると聞いて、ソニアは少しだけ胸が温かくなるのを感じた。
あのひねくれた態度が照れ隠しなのを知っているが、素直に心配してくれていたことが嬉しかった。

「ありがとう。うふ…ジェイクちゃんらしいわねぇ。でも、それだけじゃないでしょう?何かあったの?」

ソニアの視力は、シェリーの表情の奥に潜むかすかな動揺を見逃さなかった。
シェリーは少し躊躇した後、意を決したように話し始めた。

「ええ…実は、今日の午後、私、ある報告書を見たの。Fウイルスに関するものだけど…」

シェリーの声が小さくなる。
ソニアは身を乗り出した。

「Fウイルス?どういうことだ。詳しく聞かせくれ」

「その報告書には、今回のバイオテロで採取されたウイルスのサンプル分析結果が記されていたわ。その中で、通常のFウイルスとは異なる、『変異株』の存在が示唆されていたの。しかも、その変異株は、これまでのFウイルスよりも、空気感染能力が非常に高い可能性がある、と…」

シェリーの言葉に、ソニアの顔から血の気が引いた。

空気感染。

それは、これまでのバイオテロの中でも最大の恐るべき脅威だ。
もしそれが事実なら、世界は未曽有のパンデミックに直面することになる。

「それはどの程度、真実味がある?」

「まだ確定的ではないと書かれていたわ。でも、ウイルスの構造が、これまでのものとは明らかに異なると…そして、その変異株が、ごく初期段階で、意図的に分散された可能性も指摘されていたし」

意図的に分散。
それは、今回のバイオテロが、周到に計画されたものであることを意味する。

ソニアの脳裏に、浮かんだあの時のクリスの表情。
彼は何かを隠している。

「…その報告書は、今どこにある?」

ソニアは冷静を装い尋ねた。

「今は機密指定されていて、一般の人間が見られる場所にはないはず。私も偶然、レオンが持っていた書類の中に紛れ込んでいるのを見つけてしまって…」

シェリーは不安そうに眉を下げた。
レオンもこの情報を掴んでいるのか。
それならば、なぜ彼らはこの情報を隠しているのか。

その時、ソニアの視界に、シェリーの微細な喉の動きと肩の揺れがうつった。
ほんのわずかだが、不安と緊張からくるものだろう。

同時に、彼女の言葉の裏に嘘がないことも、ソニアには分かった。

「分かった、シェリー。教えてくれてありがとう。」

ソニアはシェリーを安心させるように言ったが、心の中では、情報の隠蔽に対する不信感が募っていた。

シェリーが病室を出て行った後、ソニアは一人、深く考え込んだ。

変異株。
空気感染。
意図的な分散。

これら全てが、今回のバイオテロが、何か大きな計画の一部である可能性を示唆していた。

「私に隠すとは…後ろ暗い証拠だなペンタゴン…」

ソニアが吐き捨てた。

[newpage]

翌日、ソニアは医療ラボで、ゆっくりと右腕を動かしていた。
まだ痛みは残るが、少しずつ動かせるようになってきている。
そこに、レオンがやってきた。彼の顔には疲労の色が濃い。

「ソニア、調子はどうだ?」

レオンは優しい声で尋ねた。
彼の目は、ソニアの怪我を気遣っているようだった。
だが、ソニアは彼の顔を真っ直ぐに見つめた。

「エージェント・ケネディ。Fウイルスの変異株のこと、私に隠しているだろう?」

これ以上なく直球で聞いた。
この場合、この方法が一番手っ取り早く効率的だ。

ソニアの突然の問いに、レオンの表情が一瞬硬直した。彼は眉をひそめ、辺りを見回した。
レオンは、誰もいないことがわかってほっとする。

ビンゴ

ついでにもう逃げられまい。
逃がすつもりもない。

「どこでそんな情報を…」

「蛇の道は蛇。私の祖母の国のことわざだ。なぜ隠していた?空気感染の可能性があるのだろう?それは、世界を巻き込む大惨事になる可能性を秘めている。当の私にそれを隠すと言うことは、そっち(ホワイトハウス)と、うち(ペンタゴン)にどういう裏取引がある?場合によっては父(国務長官)の横っ面を張り倒した後、キスでもしてやろうかと思っているのだが」

ソニアの金色の目が、レオンの僅かな動きも見逃さない、とばかりに爛々と輝いている。

レオンは大きくため息をついた。

「絶対に周囲に知られるなよ。…まだ確定的ではない情報だった。それにお前は怪我をしていた。混乱させたくなかったんだ」

レオンはそう説明したが、ソニアにはそれが言い訳にしか聞こえなかった。

「そもそもこの建物は、ここに住みこんでいるような一部の人間しか入れないから安心していい。確定的じゃなくても、可能性が少しでもあるなら我々エージェントは知っておくべきじゃないのか?危険を冒してでも、対策を練るべきだが?それとも、なにか?ソニア・ホークアイズのようなkiddo(クソガキ)は、知る必要が無いとでも?」

ソニアは挑戦的な視線を向けた。
レオンはソニアが子供扱いされることを嫌っているのを知っていた。
そして若輩ながら、生まれた直後からペンタゴンの訓練を受けたプロのエージェントであることも。
寧ろ彼女からしたら、自分の方がkiddoに見えているかもしれない。

だが、彼としてはソニアとジェイクをまだ純粋な若者と思いたい気持ちがあった。

とくにエイダのような、若者に悪影響を与えるであろう人間からは遠ざけたいという思いが強かった。
だから接触を避けろと忠告しておいた。

ましてや、Fウイルスの変異株という、危険な情報から守りたいとすら思っていた。