バイオハザード Fの起源 第6話 ペンタゴンから~悪
その時、BSAAとアメリカ空軍の数台のヘリコプターがホバーリングする轟音が上空から響き渡り、地下深くの空間にもその振動が伝わってきた。
そして、冷却装置の作動音とウイルスの光が弱まる中、研究室の奥、大量の培養槽が並ぶ陰から、一人の男が姿を現したが、同時に実験室の入り口にレオンとクリスが駆け込んできたのを見ると、すぐに姿を消した。
彼らはペンタゴン内で発生した異常事態に、ホワイトハウスへ報告し、BSAA(バイオテロ対策部隊)と連携をとってこの地下へと到達したのだ。
ペンタゴン地下深くの秘密研究施設。
冷却装置が唸りを上げ、Fウイルスの危険が一時的に収束したその時、新たな混沌が幕を開けた。
「ジェイク…しっかりしろ!」
共鳴は止まったものの、完全に排除されたわけではない。
ジェイクの顔は青白いままだ。
「ソニア!ジェイク!」
レオンが叫びながらジェイクの異変に気づき、すぐにその容態を確認した。
その傍らで、クリスの視線はすでに、逃げようとする男の背中を捉えていた。
「ジェイクが、ウイルスの活性化を止めてくれた。この冷却装置のおかげで、漏れ出したウイルスも死滅した」
ソニアは早口で説明した。
レオンはジェイクの顔色を見て、事態の深刻さを理解しつつも、ウイルスが収束に向かっていることに安堵の表情を見せた。
「よくやったな、ジェイク!ソニアも!」
レオンはジェイクの肩を叩き、ソニアの頭を優しく撫でた。
ソニアは、このおっさんを蹴り飛ばしてやろうかと笑顔で思った。
「ソニア、ジェイクを頼む!医療チームをできるだけ早くここに呼ぶ!」
レオンがソニアに指示を出す間にも、クリスは躊躇なく男を追って通路の奥へと走り出す。
「貴様、待て!」
クリスの怒鳴り声が、広大な研究室に響き渡った。
レオンはクリスの背中を見送ると、すぐさま無線で医療チームの応援を要請した。ソニアは頷き、再びジェイクの容態を確認した。
彼の体内でウイルスが共鳴を始めた時、一瞬どうなることかと肝を冷やしたが、ソニアが冷却装置の弱点を見抜き、ジェイクがそれを破壊したことで最悪の事態は免れた。
しかし、まだ安心はできない。ジェイクの体内に残るウイルスが、再び活性化しないという保証はない。
彼のアルバート・ウェスカゆずりの最強の抗体が今、なんとか、このフォルティス(最強の)ウイルスを抑え込みかけているところだった。
その時、ソニアの視界に、実験室の隅にある小さな通気口が映し出された。
そこから、ごく微細な、しかし確実に流れる空気の流れが見えた。
そして、その空気の流れに乗って、微量のウイルスの粒子が、ゆっくりと外へと流れ出しているのが見えた。
「…まだ終わりではないようだ」
ソニアは呟いた。
男は逃げた。
しかし、ウイルスの脅威は、まだ完全に去ったわけではない。
むしろ、このウイルスの流出は、新たな局面の始まりを示唆していた。
ソニアの瞳は、ウイルスの粒子が描く微かな軌跡を追い、それが通気口を通じてどこか外部へと向かっていることを明確に捉えていた。
[newpage]
一方、培養槽の奥へと続く隠された通路で、レオンとクリスは先ほどの男を追っていた。
男は驚くべき速度で闇の中へと消えていく。
「クリス!気をつけろ!この先、罠があるかもしれない!」
レオンは、愛用のH&K VP70を構え、警戒しながら進む。
彼のVP70は、レオンが署に配属された当初から愛用する9mm口径の自動拳銃で、特にストックを取り付けることで3点バースト射撃が可能になる珍しいモデルだ。
ポリマーフレームと軽量さが特徴で、レオンは、そのコンパクトながらも信頼性の高い銃を、常に冷静に操作していた。
クリスもまた、コルト M4A1カービンをしっかりと握り、周囲を警戒していた。
彼のM4A1は、5.56mm口径の軍用アサルトライフルで、信頼性の高いガス作動方式を採用し、近距離から遠距離まで幅広い状況に対応できる汎用性の高いモデルだ。
フォアグリップと光学サイトが装着されており、クリスの戦い方は力強くも洗練されており、どんな状況でも冷静さを失わない。
「ああ、承知している。あの男は、まだ何か企んでいるはずだ」
クリスは短く答えた。
彼の視線は、通路の奥に広がる闇を鋭く見据えていた。
通路は迷路のように入り組み、ところどころで崩落が起こり、異臭が鼻をついた。
かつてペンタゴンが極秘研究を行っていた痕跡が随所に見られるが、それ以上に、最近まで誰かが活動していたような生々しい空気が漂っている。
二人が通路の突き当たりにたどり着くと、そこはさらに広大な空間になっていた。
そこには、大量の培養槽がずらりと並べられており、その全てが、禍々しい緑色の液体で満たされていた。
そして、それぞれの培養槽の中で、異形のクリーチャーが蠢いているのが見えた。
それは、Fウイルスによって変異した、新たなゾンビやB.O.W.のようだ。
中には、まだ未完成なのか、奇形化した肉塊のまま培養液の中で脈動しているものもあり、おぞましい光景が広がっていた。
「まさか…こんなに…!」
レオンは息を呑んだ。
クリスの顔にも、驚愕の色が浮かんだ。
これは東欧のテロ組織の仕業とは一線を画す、より大規模で計画的なものだ。
「ここが、Fウイルスによるクリーチャーの『生産拠点』だったのか……!」
クリスの声が、培養槽に満たされた液体に反響し、不気味に響いた。
ペンタゴンの地下にまだこんな大規模な地下施設が存在し、生物兵器の開発が進められていたとは、彼らの想像をはるかに超えていた。
「ペンタゴンがこんなものを……いや、ありえない」
レオンは思考を巡らせた。
ペンタゴンが直接、このような非人道的な兵器を大量生産しているとは信じがたかった。
「ということは、研究施設の拝借と言ったところか……」
クリスがレオンの思考を読み取るように呟いた。
ペンタゴン地下のこの秘密施設は、過去にペンタゴンが行っていたFウイルスの研究施設を、先ほどの男が何らかの方法で乗っ取り、独自の目的で利用していたことが伺える。
長らく放置され寂れた雰囲気の中に、最近使われたような真新しい機材や、生々しい培養液の痕跡が混在していることが、その証拠だった。
男は、かつてここで働いていた元研究員か、あるいはその関係者である可能性が高い。
その空間の中央に、先ほどの男が立っていた。
彼は、レオンとクリスの方を向き、狂気に満ちた笑みを浮かべている。
男の両手には、まるで生物の骨と筋肉で構成されたかのような、おぞましい形状の二丁の大きな銃器が構えられていた。
銃身の先端には、生々しい肉塊が蠢き、そこから粘液が滴り落ちている。
弾倉にあたる部分は、肥大した内臓のようで、見る者に強い嫌悪感を抱かせる。
「よく来たな…『神の裁き』を阻む愚か者たちよ…」
男の声が、培養槽に満たされた液体に反響して、不気味に響いた。彼の目は、憎悪と狂気に満ちている。
[newpage]
「貴様…何者だ!」
クリスが叫び、男に向かって突進した。
彼の鍛え抜かれた体術は、一瞬で男との距離を詰める。
そして、冷却装置の作動音とウイルスの光が弱まる中、研究室の奥、大量の培養槽が並ぶ陰から、一人の男が姿を現したが、同時に実験室の入り口にレオンとクリスが駆け込んできたのを見ると、すぐに姿を消した。
彼らはペンタゴン内で発生した異常事態に、ホワイトハウスへ報告し、BSAA(バイオテロ対策部隊)と連携をとってこの地下へと到達したのだ。
ペンタゴン地下深くの秘密研究施設。
冷却装置が唸りを上げ、Fウイルスの危険が一時的に収束したその時、新たな混沌が幕を開けた。
「ジェイク…しっかりしろ!」
共鳴は止まったものの、完全に排除されたわけではない。
ジェイクの顔は青白いままだ。
「ソニア!ジェイク!」
レオンが叫びながらジェイクの異変に気づき、すぐにその容態を確認した。
その傍らで、クリスの視線はすでに、逃げようとする男の背中を捉えていた。
「ジェイクが、ウイルスの活性化を止めてくれた。この冷却装置のおかげで、漏れ出したウイルスも死滅した」
ソニアは早口で説明した。
レオンはジェイクの顔色を見て、事態の深刻さを理解しつつも、ウイルスが収束に向かっていることに安堵の表情を見せた。
「よくやったな、ジェイク!ソニアも!」
レオンはジェイクの肩を叩き、ソニアの頭を優しく撫でた。
ソニアは、このおっさんを蹴り飛ばしてやろうかと笑顔で思った。
「ソニア、ジェイクを頼む!医療チームをできるだけ早くここに呼ぶ!」
レオンがソニアに指示を出す間にも、クリスは躊躇なく男を追って通路の奥へと走り出す。
「貴様、待て!」
クリスの怒鳴り声が、広大な研究室に響き渡った。
レオンはクリスの背中を見送ると、すぐさま無線で医療チームの応援を要請した。ソニアは頷き、再びジェイクの容態を確認した。
彼の体内でウイルスが共鳴を始めた時、一瞬どうなることかと肝を冷やしたが、ソニアが冷却装置の弱点を見抜き、ジェイクがそれを破壊したことで最悪の事態は免れた。
しかし、まだ安心はできない。ジェイクの体内に残るウイルスが、再び活性化しないという保証はない。
彼のアルバート・ウェスカゆずりの最強の抗体が今、なんとか、このフォルティス(最強の)ウイルスを抑え込みかけているところだった。
その時、ソニアの視界に、実験室の隅にある小さな通気口が映し出された。
そこから、ごく微細な、しかし確実に流れる空気の流れが見えた。
そして、その空気の流れに乗って、微量のウイルスの粒子が、ゆっくりと外へと流れ出しているのが見えた。
「…まだ終わりではないようだ」
ソニアは呟いた。
男は逃げた。
しかし、ウイルスの脅威は、まだ完全に去ったわけではない。
むしろ、このウイルスの流出は、新たな局面の始まりを示唆していた。
ソニアの瞳は、ウイルスの粒子が描く微かな軌跡を追い、それが通気口を通じてどこか外部へと向かっていることを明確に捉えていた。
[newpage]
一方、培養槽の奥へと続く隠された通路で、レオンとクリスは先ほどの男を追っていた。
男は驚くべき速度で闇の中へと消えていく。
「クリス!気をつけろ!この先、罠があるかもしれない!」
レオンは、愛用のH&K VP70を構え、警戒しながら進む。
彼のVP70は、レオンが署に配属された当初から愛用する9mm口径の自動拳銃で、特にストックを取り付けることで3点バースト射撃が可能になる珍しいモデルだ。
ポリマーフレームと軽量さが特徴で、レオンは、そのコンパクトながらも信頼性の高い銃を、常に冷静に操作していた。
クリスもまた、コルト M4A1カービンをしっかりと握り、周囲を警戒していた。
彼のM4A1は、5.56mm口径の軍用アサルトライフルで、信頼性の高いガス作動方式を採用し、近距離から遠距離まで幅広い状況に対応できる汎用性の高いモデルだ。
フォアグリップと光学サイトが装着されており、クリスの戦い方は力強くも洗練されており、どんな状況でも冷静さを失わない。
「ああ、承知している。あの男は、まだ何か企んでいるはずだ」
クリスは短く答えた。
彼の視線は、通路の奥に広がる闇を鋭く見据えていた。
通路は迷路のように入り組み、ところどころで崩落が起こり、異臭が鼻をついた。
かつてペンタゴンが極秘研究を行っていた痕跡が随所に見られるが、それ以上に、最近まで誰かが活動していたような生々しい空気が漂っている。
二人が通路の突き当たりにたどり着くと、そこはさらに広大な空間になっていた。
そこには、大量の培養槽がずらりと並べられており、その全てが、禍々しい緑色の液体で満たされていた。
そして、それぞれの培養槽の中で、異形のクリーチャーが蠢いているのが見えた。
それは、Fウイルスによって変異した、新たなゾンビやB.O.W.のようだ。
中には、まだ未完成なのか、奇形化した肉塊のまま培養液の中で脈動しているものもあり、おぞましい光景が広がっていた。
「まさか…こんなに…!」
レオンは息を呑んだ。
クリスの顔にも、驚愕の色が浮かんだ。
これは東欧のテロ組織の仕業とは一線を画す、より大規模で計画的なものだ。
「ここが、Fウイルスによるクリーチャーの『生産拠点』だったのか……!」
クリスの声が、培養槽に満たされた液体に反響し、不気味に響いた。
ペンタゴンの地下にまだこんな大規模な地下施設が存在し、生物兵器の開発が進められていたとは、彼らの想像をはるかに超えていた。
「ペンタゴンがこんなものを……いや、ありえない」
レオンは思考を巡らせた。
ペンタゴンが直接、このような非人道的な兵器を大量生産しているとは信じがたかった。
「ということは、研究施設の拝借と言ったところか……」
クリスがレオンの思考を読み取るように呟いた。
ペンタゴン地下のこの秘密施設は、過去にペンタゴンが行っていたFウイルスの研究施設を、先ほどの男が何らかの方法で乗っ取り、独自の目的で利用していたことが伺える。
長らく放置され寂れた雰囲気の中に、最近使われたような真新しい機材や、生々しい培養液の痕跡が混在していることが、その証拠だった。
男は、かつてここで働いていた元研究員か、あるいはその関係者である可能性が高い。
その空間の中央に、先ほどの男が立っていた。
彼は、レオンとクリスの方を向き、狂気に満ちた笑みを浮かべている。
男の両手には、まるで生物の骨と筋肉で構成されたかのような、おぞましい形状の二丁の大きな銃器が構えられていた。
銃身の先端には、生々しい肉塊が蠢き、そこから粘液が滴り落ちている。
弾倉にあたる部分は、肥大した内臓のようで、見る者に強い嫌悪感を抱かせる。
「よく来たな…『神の裁き』を阻む愚か者たちよ…」
男の声が、培養槽に満たされた液体に反響して、不気味に響いた。彼の目は、憎悪と狂気に満ちている。
[newpage]
「貴様…何者だ!」
クリスが叫び、男に向かって突進した。
彼の鍛え抜かれた体術は、一瞬で男との距離を詰める。
作品名:バイオハザード Fの起源 第6話 ペンタゴンから~悪 作家名:masa