zokuダチ。セッション13 ジャミ公の夏休み(?)編・1
「おかしいなあ、コントロールの調子が悪いのかな……」
「プッ、あんなクソ玉投げといてよく言うよ……」
「えいっ、もう一回!!」
「ボール……」
「ヘタクソッ!!」
「シグー、ちょっと交代してくれよ!オレだって打ちたいんだよ!」
「しょうがねえなあ……」
シグはリウにバット代わりのホウキを渡す。
「いくぞっ!……あ!」
「……あたっ!!」
シグが投げたボールは流れに逆らい、後ろで見学していた
倉橋の頭部にポカリと命中した。
「ぎゃはははは!シグ、すげーコントロール!」
「……プロ級だな……」
「そう?オレすげえ!?」
「嫌味で言ってるんだけど……」
「……おい……」
「あ?」
倉橋が当てられたボールを持って3人組の処へと近寄って行く。
シグは倉橋の頭部のコブを見、すぐに理解はした様で……。
「あー、おっさんに当っちまったんだ!わりいなあー、おっさん!」
「……おっさんだと……?」
しかし、倉橋が出るよりも早く、シフが部屋から飛び出、
悪ガキどもを一括する。
「てめーらっ!こんなせまっちいとこでボール遊びすんなって
何回言ったら分かんだっ!!」
「やべえ、逃げろ!ジェイル、リウ!!」
「合点っ!!」
「……承知の助、だ……」
「バカ共めっ!ちゃんとマリカにも言っておくからねっ!!」
シフは悪ガキを外に追っ払うと部屋に戻って行った。シフが
いなくなったその後で、出勤で出掛ける支度を調えたラグナが
2階から降りてきたが廊下で滑って転がって転倒。
「へえー、やるモンだね、豪快なお姉さん……、ふーん、
もしもウチにも女子マネ入れるんなら、ああ言うのがいいね……、
そうすりゃもっと、ウチの弛んだ馬鹿先輩にも喝を入れて
貰えんだがね、……ま、ありゃ見た感じ、齢が行き過ぎてるけど……」
倉橋はにやにや笑いながら再び、割れた顎を摩った。
「おかえり~」
「ボ……」
「あはは、ただいまだよ、しんちゃん……」
「いってきまーす、わん!」
「……こむぎ、それじゃ又外出しちゃうでしょ……」
「……はあ、やっと一区切りだ……、流石に疲れたなあ……」
丁度、しんのすけの付き添いでプールに一緒に行っていた、
いろはとこむぎが、しんのすけ、ボーちゃん、ひまわりと
帰って来る。どうにか後輩達の喧嘩騒動を収めた谷口も一緒に
マンションへ帰宅。ひまわりはもう疲れていろはにおんぶされ
背中ですやすや。
「よう……、ご苦労さん!」
「……倉橋っ!お前、あれだけ言ったのにっ!!」
「わ、谷口さんのお友達ですか?」
「わん!?」
「ああ、そうなんだけど……」
「おおー……」
何を思ったのか、しんのすけが倉橋に近寄って行った。
「おじさん、お顔にお尻があるの……?」
「……な、何だとっ!?」
「いやあ~ん、さわらせてえ~、……お顔のお尻は何か
すべすべじゃないゾ……」
「しんちゃんっ、駄目だよう!!本当にすみませんでした~、
それではごゆっくりー!行こう、こむぎ!」
「……ま、またねえ~!タカオー!」
いろはとこむぎはしんのすけを倉橋から引っ剥がすと慌てて
2階へ連れて行こうとしたが。その間にもしんのすけの口から
暴言が飛び出す。
「……いろはちゃん、あのおじさんはお顔からおウンチが出るの?
おならも?」
「……しんちゃんっ!」
「……ぷぷぷ、きゃはははは!」
「……こむぎっ!な、何一緒に釣られて笑ってるのっ!めっ、だよっ!」
「……ボ」
「はあ、あの子にも相変わらず困ったもんだなあ……、倉橋……?」
谷口が倉橋の顔を見ると……、顔中引き攣らせて固まっており、
石膏の様に動かなくなっていた。……さすがの毒舌男も嵐を呼ぶ
5歳児の出現には敵わなかった様であった……。
……その様子を陰でこっそり覗っていたジャミルは腹を抱えて
ザマミロと大笑いしたのだった……。
作品名:zokuダチ。セッション13 ジャミ公の夏休み(?)編・1 作家名:流れ者