zokuダチ。セッション18 冒険編2
冒険編6 ヘタレ、開き直る
「……大変だよおおーーっ!!……ひ、ひいい~……」
急いで坂を駆け上がってくる、子犬のこむぎを抱えたいろは、そして、
後からひいひい言いながら走って来るダウドの姿が。……いろはの
真っ青な顔を見れば何が起きたのか一目瞭然であった。
「どうしたんだよ、何かあったか!?……それに、こむぎは一体
どうしたんだっ!?」
「……大変なんだ、全部全部オイラの所為なんだよお!」
「……いろはちゃん、大丈夫!?……こむぎちゃん!酷い怪我!
血が……!それに身体が熱いわ!」
「……アイシャさあ~ん……、こむぎが……、こむ……」
「いろはちゃんっ!」
息を切らしてしまったいろはに慌ててアイシャが声を掛けるが……、
それまで気丈を保とうとしていたいろははアイシャの顔を見た途端、…
…顔をグジャグジャにし、……堪えていた涙を零した。
「……ハア、ハア……、い……、ろ、は……」
「……こむぎ……」
「オイラの所為なんだよおおーーっ!こむぎちゃんが……、
でっかいイノシシからオイラを庇って……」
「……何ですとオオオーーっ!?」
いろははアイシャに縋り付いたまま立ち直れず……。何とか気丈に
振る舞ってはいたが、辛くてやはり堪えきれなくなっていた……。
「……ごめんな、やっぱり俺達も一緒に行っていれば……、くそっ!
しかもこのヘタレ馬鹿の所為で……、……ほんっとーに済まねえ!」
「あああーーっ!アイシャの姿で殴られるのって何かやっぱ
嫌だよおーーっ!……ごめんよおおーーっ!みんなーーっ!」
「ジャミルも落ち着いて!とにかく冷静になろう、此処でダウドを
殴ってても何も解決しないよ!」
「そ、そうか……、とにかく落ち着かねえとな……」
アルベルトに言われ、ダウドを殴っていた拳を漸くダウドの頭部から
放すジャミル。
「……ううん、いいんです……、こむぎはきっと大丈夫!元気出して
信じなくちゃ!」
「いろは……」
「ジャミル、早くこむぎちゃんの怪我を……!」
「ああ、アイシャ、分かってるよ、けど……」
「おお……」
ジャミルはそう言いながら、不安そうにしているしんのすけ達の
方を見る……。早く何とかしてやらないと、このままではこむぎの
命が危ない。けれど、獣医もこんな処にいない今、どうしたらいいのか
……。ジャミルは今直ぐに山を下りて町の方に戻る決断を考え、皆に
伝えようとした。その時。
「大丈夫だよお……」
「チビ……?」
「チビ、直ぐに怪我が治る、薬草の有る場所、知ってる、でもね、
その薬草は凄く数が少ないんだよお、だから少し時間が掛るかも
知れないきゅぴ、でも、頑張って取ってくるから!それまで、
こむぎちゃんの事、どうかお願いきゅぴ……」
「そうだな、結局今から町に戻っても、無理に動かせば
こむぎの身体に返って負担掛けるかもだからな……」
「チビちゃんっ!あ、ありが……とう……」
「ぴいっ!」
チビは涙で濡れているいろはの顔を見て、力強く返事を返した。
「だけど、マジで助かるよ、チビ……、本当にお前がいてくれて……」
「そうだね、少々危険かも知れないけれど、此処はチビに
任せるしかないよ……、頼んだよ、チビ……、信じてるよ……」
「ぴきゅ、アル、任せて!モンブラン山はチビ達ドラゴンの
テリトリーだもん!」
「……チビちゃん……、本当にありがとうーっ!で、でも、くれぐれも
危ない事はしないでね!お願いっ!!チビちゃんにまでもしもの事が
あったら、私、私っ……!!」
「きゅっぴ、うん……」
「チビちゃん……、本当だよ、何かあったら直ぐに戻ってくるんだよ、
……どうか無理しないで……」
いろはは震える手つきでチビを抱擁、ぎゅっと抱き締めると
何回もお礼を言った。
「チビ、すぐ戻ってくるから、だから、信じて待っていてね、
いろはちゃん、……こむぎちゃんも頑張って……、負けちゃ
ダメだよお……」
「チビ、……こむぎ、げんきになる、がんばるわん……」
「こむぎちゃん、本当に約束だよお、チビが戻ってくるまで……」
「わん……」
いろはを元気づける様に、チビがペロッと頬を舐め、頑張ろうと
しているこむぎの顔も優しく舐めた。
「ぴい、それじゃ、チビ行ってくるよお!」
チビはそう言うと、林の奥へと飛んでいき、そのまま姿を消した……。
「チビちゃん……」
「アイシャ、此処はチビに任せるしかねえ、俺らじゃどうにも
出来ねえんだ……」
アイシャは手を胸の前で組んで静かにチビの無事を祈る。
そして、今日は一行はこのまま此処で夜を超すしかなかった……。
焚火を囲み……、皆に沈黙が流れる……。チビが薬草を探しに
飛び立ってから既に数時間が経過していた……。
「ねえ、チビ……、まだ戻ってこない?……こむぎちゃん、大丈夫……?」
「……クゥゥ~ン……」
しんのすけは一旦は眠ったが、目を覚してしまい、心配で
ずっと眠れないでいる。ジャミル達や、いろはの様子が
気になるのか、すぐに目を覚ましてしまう。シロも心配そうに
こむぎの状態を見守っていた……。
「大丈夫だよっ、ごめんね、心配掛けて!、さ、しんちゃんも、
早く寝ないと朝寝坊しちゃうよっ!明日も元気で冒険する為にねっ!
……大丈夫、きっとこむぎは元気になるよ、ねっ……?……こむぎ……」
いろはは眠っているこむぎの手をそっと握る。きっと、きっと……。
チビが薬草を無事に見つけて来てくれて……。明日には又、元気な
こむぎの姿に会えると……。
「辛いのはいろはちゃんでしょ、無理しちゃ駄目なんだゾ……」
「……しんちゃん……」
いろはは声を絞出し、しんのすけを抱きしめる。冒険初日、いろはには
とても不安で長い夜となった……。
「しんちゃん、……チビちゃんを信じましょう、今はそれしかないの、
大丈夫、必ず薬草を持って、元気で戻って来てくれるわ……」
「……そうだね……、オラも信じる……」
「いろはちゃん、ごめんね、ごめんね、……全部私達の所為だわ、
危険な事に巻き込んでしまって本当にごめんね……」
「そんな事ないですっ!私達、ジャミルさん達の為に、
出来る事をお手伝いしたくて、頑張って、そして楽しい冒険を
しようって決めたんですから!ハプニングもへっちゃらっ!!
だから、アイシャさんもそんな顔しないで下さいっ!ねっ!?」
「……いろはちゃん、有り難う……」
アイシャは再びいろはを抱きしめながら、只管謝る事しか
出来ないのだった……。
「……」
一方のダウドは……、皆から顔を背け、俯いて座った状態のままである。
ひまわりは完全に眠ってしまった為、皆で交代で見守っている。
……ボーちゃんも。やがて、しんのすけも今度は完全に眠った様子であった。
「ダウド……」
「何?ジャミル……」
ダウドはジャミルから顔を背けたままの状態で口を開いた。
「全部オイラが悪いんだよ、分かってるよ、オイラが立ち止まったり
なんかしなければ……、でも、オイラどうやっていろはちゃんに……、
「……大変だよおおーーっ!!……ひ、ひいい~……」
急いで坂を駆け上がってくる、子犬のこむぎを抱えたいろは、そして、
後からひいひい言いながら走って来るダウドの姿が。……いろはの
真っ青な顔を見れば何が起きたのか一目瞭然であった。
「どうしたんだよ、何かあったか!?……それに、こむぎは一体
どうしたんだっ!?」
「……大変なんだ、全部全部オイラの所為なんだよお!」
「……いろはちゃん、大丈夫!?……こむぎちゃん!酷い怪我!
血が……!それに身体が熱いわ!」
「……アイシャさあ~ん……、こむぎが……、こむ……」
「いろはちゃんっ!」
息を切らしてしまったいろはに慌ててアイシャが声を掛けるが……、
それまで気丈を保とうとしていたいろははアイシャの顔を見た途端、…
…顔をグジャグジャにし、……堪えていた涙を零した。
「……ハア、ハア……、い……、ろ、は……」
「……こむぎ……」
「オイラの所為なんだよおおーーっ!こむぎちゃんが……、
でっかいイノシシからオイラを庇って……」
「……何ですとオオオーーっ!?」
いろははアイシャに縋り付いたまま立ち直れず……。何とか気丈に
振る舞ってはいたが、辛くてやはり堪えきれなくなっていた……。
「……ごめんな、やっぱり俺達も一緒に行っていれば……、くそっ!
しかもこのヘタレ馬鹿の所為で……、……ほんっとーに済まねえ!」
「あああーーっ!アイシャの姿で殴られるのって何かやっぱ
嫌だよおーーっ!……ごめんよおおーーっ!みんなーーっ!」
「ジャミルも落ち着いて!とにかく冷静になろう、此処でダウドを
殴ってても何も解決しないよ!」
「そ、そうか……、とにかく落ち着かねえとな……」
アルベルトに言われ、ダウドを殴っていた拳を漸くダウドの頭部から
放すジャミル。
「……ううん、いいんです……、こむぎはきっと大丈夫!元気出して
信じなくちゃ!」
「いろは……」
「ジャミル、早くこむぎちゃんの怪我を……!」
「ああ、アイシャ、分かってるよ、けど……」
「おお……」
ジャミルはそう言いながら、不安そうにしているしんのすけ達の
方を見る……。早く何とかしてやらないと、このままではこむぎの
命が危ない。けれど、獣医もこんな処にいない今、どうしたらいいのか
……。ジャミルは今直ぐに山を下りて町の方に戻る決断を考え、皆に
伝えようとした。その時。
「大丈夫だよお……」
「チビ……?」
「チビ、直ぐに怪我が治る、薬草の有る場所、知ってる、でもね、
その薬草は凄く数が少ないんだよお、だから少し時間が掛るかも
知れないきゅぴ、でも、頑張って取ってくるから!それまで、
こむぎちゃんの事、どうかお願いきゅぴ……」
「そうだな、結局今から町に戻っても、無理に動かせば
こむぎの身体に返って負担掛けるかもだからな……」
「チビちゃんっ!あ、ありが……とう……」
「ぴいっ!」
チビは涙で濡れているいろはの顔を見て、力強く返事を返した。
「だけど、マジで助かるよ、チビ……、本当にお前がいてくれて……」
「そうだね、少々危険かも知れないけれど、此処はチビに
任せるしかないよ……、頼んだよ、チビ……、信じてるよ……」
「ぴきゅ、アル、任せて!モンブラン山はチビ達ドラゴンの
テリトリーだもん!」
「……チビちゃん……、本当にありがとうーっ!で、でも、くれぐれも
危ない事はしないでね!お願いっ!!チビちゃんにまでもしもの事が
あったら、私、私っ……!!」
「きゅっぴ、うん……」
「チビちゃん……、本当だよ、何かあったら直ぐに戻ってくるんだよ、
……どうか無理しないで……」
いろはは震える手つきでチビを抱擁、ぎゅっと抱き締めると
何回もお礼を言った。
「チビ、すぐ戻ってくるから、だから、信じて待っていてね、
いろはちゃん、……こむぎちゃんも頑張って……、負けちゃ
ダメだよお……」
「チビ、……こむぎ、げんきになる、がんばるわん……」
「こむぎちゃん、本当に約束だよお、チビが戻ってくるまで……」
「わん……」
いろはを元気づける様に、チビがペロッと頬を舐め、頑張ろうと
しているこむぎの顔も優しく舐めた。
「ぴい、それじゃ、チビ行ってくるよお!」
チビはそう言うと、林の奥へと飛んでいき、そのまま姿を消した……。
「チビちゃん……」
「アイシャ、此処はチビに任せるしかねえ、俺らじゃどうにも
出来ねえんだ……」
アイシャは手を胸の前で組んで静かにチビの無事を祈る。
そして、今日は一行はこのまま此処で夜を超すしかなかった……。
焚火を囲み……、皆に沈黙が流れる……。チビが薬草を探しに
飛び立ってから既に数時間が経過していた……。
「ねえ、チビ……、まだ戻ってこない?……こむぎちゃん、大丈夫……?」
「……クゥゥ~ン……」
しんのすけは一旦は眠ったが、目を覚してしまい、心配で
ずっと眠れないでいる。ジャミル達や、いろはの様子が
気になるのか、すぐに目を覚ましてしまう。シロも心配そうに
こむぎの状態を見守っていた……。
「大丈夫だよっ、ごめんね、心配掛けて!、さ、しんちゃんも、
早く寝ないと朝寝坊しちゃうよっ!明日も元気で冒険する為にねっ!
……大丈夫、きっとこむぎは元気になるよ、ねっ……?……こむぎ……」
いろはは眠っているこむぎの手をそっと握る。きっと、きっと……。
チビが薬草を無事に見つけて来てくれて……。明日には又、元気な
こむぎの姿に会えると……。
「辛いのはいろはちゃんでしょ、無理しちゃ駄目なんだゾ……」
「……しんちゃん……」
いろはは声を絞出し、しんのすけを抱きしめる。冒険初日、いろはには
とても不安で長い夜となった……。
「しんちゃん、……チビちゃんを信じましょう、今はそれしかないの、
大丈夫、必ず薬草を持って、元気で戻って来てくれるわ……」
「……そうだね……、オラも信じる……」
「いろはちゃん、ごめんね、ごめんね、……全部私達の所為だわ、
危険な事に巻き込んでしまって本当にごめんね……」
「そんな事ないですっ!私達、ジャミルさん達の為に、
出来る事をお手伝いしたくて、頑張って、そして楽しい冒険を
しようって決めたんですから!ハプニングもへっちゃらっ!!
だから、アイシャさんもそんな顔しないで下さいっ!ねっ!?」
「……いろはちゃん、有り難う……」
アイシャは再びいろはを抱きしめながら、只管謝る事しか
出来ないのだった……。
「……」
一方のダウドは……、皆から顔を背け、俯いて座った状態のままである。
ひまわりは完全に眠ってしまった為、皆で交代で見守っている。
……ボーちゃんも。やがて、しんのすけも今度は完全に眠った様子であった。
「ダウド……」
「何?ジャミル……」
ダウドはジャミルから顔を背けたままの状態で口を開いた。
「全部オイラが悪いんだよ、分かってるよ、オイラが立ち止まったり
なんかしなければ……、でも、オイラどうやっていろはちゃんに……、
作品名:zokuダチ。セッション18 冒険編2 作家名:流れ者