zokuダチ。セッション18 冒険編2
こむぎちゃんや皆にも謝っていいか分からない、ごめんよ……」
「いや、一番悪いのは皆を巻きこんじまった張本人の俺だよ、
ごめんな、本当にさ……、俺も今はこれ以上言葉が出ねえんだ、
どうしたらいいのか……、マジで困ってる……」
「ジャミル……」
ダウドは漸く、少しだけジャミルの方を見る……。
……きゅぴ~っ!!
「あ、あの鳴き声っ……!」
「チビだっ!戻ってきたっ!!」
「みんな~、遅くなってごめんねー!薬草取ってきたよおー!」
「……チビちゃん……、ふぇっ……」
「ありが……とう……」
涙目になるアイシャといろは……。チビは約束通り、ちゃんと無事に
戻って来た。怪我もしておらず、両手にしっかりと薬草を抱えて。
「チビっ、お前!やってくれたな!ははっ!」
「……良かった……、ホントに……、無事で良かったよーっ!
チビちゃあーーんっ!」
いろはとアイシャはチビに飛び付き思い切りハグする。
ジャミルも皆も、チビと頑なに抱き合ういろはとアイシャの
姿を暫くの間、そっと見守っていたのだった。
「さあ、こむぎちゃんに急いで薬草を飲ませるよお!
薬草をお湯で溶かして飲ませるんだよお!
「おう!……お湯の準備だ!」
「はいっ!」
いろはは急いでケトルを使い、お湯を沸かし薬草茶を作りこむぎに
飲ませた。……皆が見守る中、こむぎの表情に赤みが差して……。
あれ程酷かった腕の傷も忽ち消えた。
「いろは……、みんな、こむぎ、もうだいじょうぶ……、ありがとね」
「……こむぎっ!よかったーっ!よかったよーーっ!……あ、あはははっ!
……ぐすっ、ひっく……」
「いろはってば、くすぐったいよー、わんだふるー!」
「うん、怪我は完全に治ったみたいだね、でも、直ぐに無理は出来ないよ、
もう一日この辺でゆっくり休もう、焦りは禁物だしね……」
「そうだな……」
「……チビちゃん、本当にありがとうね……、頑張ってくれて……、
お疲れ様……」
「ぴっ!」
「ハア、一時はどうなる事かと……、よ、よかったよおお~……」
泣き笑いしているいろはと元気になってはしゃぐこむぎの姿を
皆は暫くの間静かに見つめていた。
「よいしょ!チビっ!おかげでこむぎ、又元気になれたよっ!
ありがとー!人間はね、うれしい時はこうするんだってー!ちゅっ♡」
「ぴ、ぴいっ!……何か幸せぴい~……」
「もうっ、こむぎったら……、ふふっ!」
ガサ……
こむぎは再び少女モードに。チビへのお礼のほっぺにチュウ、
……その時、側の茂みが揺れ始め、再び何かが姿を現しそうであった。
異変に気付いたジャミルは直に皆に声を掛けた。
「……気を付けろっ、お前ら!」
ジャミルは警戒し、側に転がっている木の棒を拾って構えると、
女の子達を庇って後ろに下がらせる。
「ゥゥ……」
草むらから出て来たのは、ダウドを襲い、庇ったこむぎに
怪我を負わせたあの時の大きなイノシシであった……。
「こいつだよお!こむぎちゃんを襲ったのは!」
「そうかっ!畜生、また性懲りもなくっ!」
「きゅっぴ!待ってええーっ!」
「ダメだようーっ!」
「チビ……?」
「チビちゃん……?」
「こむぎ……」
チビはジャミルの正面に飛ぶと、イノシシを刺激しない様、
注意をし、庇う。こむぎもイノシシの前に立ち塞がると
大きく両手を広げる。
「イノシシさんにもおこってる理由があるんだよ!」
被害者の筈のこむぎは、必死にイノシシを庇うのである……。
「ど、どうなってんだよ……、これ……」
「ジャミル、此処はチビちゃん達のお話を聞いた方が
いいかも知れないわ……」
「……そうだね、あの感じだと、イノシシも僕らに危害を加えてくる
感じでもなさそうだよ……」
「わ、分ったよ……、仕方ねえ……」
アイシャとアルベルトの意見も耳に入れ、ジャミルは持っていた
木の棒を投げ捨てた。
「ジャミル、ありがとぴい!あのね、あのイノシシさんは、皆の事、
ちょっと誤解してただけなんだよお、またお山を荒しに来たのかと
思ったんだって……、それにね……、食べる物が無くなっちゃって、
とっても困ってるんだよお……、だから、お腹が空いて山を下りて
人間に見つかって、殺されちゃう仲間もいたり……、イノシシさんは
人間が恐いんだよお……、それでね、このイノシシさんにはちっちゃい
赤ちゃんがいるんだよお……」
「……ゥゥ……」
「……イノシシさん……、そっか、あなたはお母さんなんだね……」
いろはは切なそうな顔で目の前のイノシシを見つめる。人間と
決して避けられない野生動物との衝突……。動物が大好きな
優しい彼女の心はズキズキし、悲しみに溢れていた……。
「そうか、コイツが苛めてくると思って、……子供を守る為に、
警戒して興奮しちまったのか……」
「なんでそうなるんだよお!……オイラだって気が弱いんだから!
そんな事しないよお~、とほほ~……、けど、ずっとあんな処で
いじけてたから、びっくりさせちゃったのかな、ごめんね……」
「……」
ダウドはイノシシに向かって頭を下げる……。その様子をイノシシは
静かに眺めている。
「それでね、イノシシさんも……、おやまがあらされて、段々住むところも
なくなってるんだよ…………」
「環境破壊だね……」
いろはもこむぎの方を見る。イノシシ達の現状を理解した様子である……。
「最近はこの島も、人が沢山多くなって来て……、山にも人が沢山遊びに、
来てくれる様になったり、それはとても嬉しい事かも知れないけど……、
でも、山にゴミを捨てたり、木を沢山切り倒したり……、自然豊かな
モンブラン山の自然も破壊されつつあるんだよお、何れはもしかしたら、
このモンブラン山にもリゾート地が建つかも知れないって、チビ達、
リーダーのドラゴンさんが言ってる……、他の動物さん達も住処を
追われたり、どんどん居場所がなくなっているんだよお……」
「……そうね、此処最近は常識では考えられない恐ろしい異常気象も
続いているものね……」
「人と自然の共存か……、そうだな、……バカの俺でも真剣に
取り組んで考えなきゃいけない課題なんだよな……」
アイシャも、ジャミルまで……、今日は何時になく、真剣な表情をしていた。
「プ……、えーと……、バ、バカ……、プ……、バカの課題……」
「アル……、お前、なぜ其処で吹く?……んーっ!?」
「ご、ごめん……、君が言うとどうしても……、プ、ププププ……」
真面目に呟いているのに、ジャミルが言うとどうしても
アルベルトにはツボに来て困るらしかった……。
「……うわああーーんっ!!」
「ダウドっ!?」
「君達の事情も知らないで……、酷い事言ってごめんよおおーーっ!!
誤解してたよおーーっ!!少ないけどこれ食べてええーーっ!!」
「こ、こらっ!……ダウドおおおーーーっ!!」
ダウドは号泣しながらリュックに入っていた焼きおにぎりを
イノシシに全部渡してしまうのであった……。その途端、
作品名:zokuダチ。セッション18 冒険編2 作家名:流れ者