zokuダチ。セッション18 冒険編2
しんのすけが絶叫した……。いろはの背中にはおぶわれたままの
ひまわりが……。荒くれがいろはに的を絞り、さっと接近すると
こむぎ、シロを蹴飛ばすといろはを捕えた。その動きは純情でなく、
かなり素早い動きである。荒くれはごつい体型に似合わず、
そのままいろはを脇に抱え、猛スピードで掻っ攫っていこうとした……。
「……うっく、ひっく……」
「へへへ、うるせえ糞共だ、ゲヘ、ゲヘヘへ……、黙れっ!この
バカガキめっ!泣き止まねえとブッ飛ばすぞ!」
「……びえええーーっ!!」
「……ひまちゃんっ!お願い、小さな子に乱暴するのは止めて下さいっ!」
いろはの背中でひまわりの泣き声がこだまする……。自分が連れ去られ
ようとしている中で、赤ん坊のひまわりだけでも何とか逃がして、皆に
託そうといろはは思うのだが、必死で後を追って来る仲間達も変態男の
素早さに追いつけず……。連れ去られそうになるいろはとひまわりは
皆からどんどん遠ざかってしまう……。
「駄目だ、このままじゃ……、うう……、や、やっぱり……、
シフの追う通りだ、……僕の体力が無い所為で……」
「チビでも追いつけないよおーーっ!」
「……いろはちゃん、ひまちゃんっ!!」
「オイラ、もう駄目ですうう~……」
「……ひまーーっ!ひまーーっ!」
「……ボオオオーーっ!!」
「……こむぎーーっ!!」
「……いろは……、い、嫌だ……、こむぎはどんな時でも
いろはといっしょ、……プリキュアになれなくても、いろはと
はなればなれはもう嫌……、ずっといっしょにいるんだ……、
あのとき……、いろはがひとりぼっちのこむぎをたすけてくれた、
……今度はこむぎがいろはをたすけるーーっ!大好きないろはを……、
……わおおおーーーんっ!!」
「こ、こむぎちゃん……!?きゃっ!?」
こむぎは力強く遠吠えすると、再び人間モードになる。そして、
超人とも思えるダッシュ力で、前方を走っている荒くれ男に遂に
追いつく……、チビが空を飛んでも追いつけなかった……。そして、
思い切り荒くれ男にプニプニバリアーのポーズで両手張り手を噛まし、
荒くれをどーんと遠くへ突き飛ばした……。
「……いろはとひまをかえせーーっ!!」
「お、おおおお~……な、な、な……、あぎゃあーーっ!!」
「いろはーーっ!!」
「……こむぎーーっ!!」
「こっちだよっ!ケガはないっ!?ひまも大丈夫!?」
「大丈夫だよ、ひまちゃんも……、ちょっとびっくりしちゃった
みたいだけどね……、こわかったよね……」
「びええ~、ひっく、ひっく……」
「さあ、行くよっ!いろは、しっかりつかまっててね!ひまもねっ!」
荒くれが倒れた隙にこむぎはいろはを無事救出。そしてそのまま、
シイタケ目になり、いろはをお姫様抱っこ。ひまわりを負ぶうと
再び鼻から湯気を出し、皆の処にダッシュで戻って来た……。
その様子を、何も出来ず、残った仲間達は唖然として眺めていたが、
無事戻って来たいろは達を歓喜と大絶賛の嵐で迎えるのだった。
「凄いわっ、こむぎちゃん!」
「ああ、本当に、僕も益々負けてられないな……」
「チビ、負けちゃったきゅぴ~、でも、本当にスゴイよおおー!」
「……オリンピック出られるんでないの?……何か彼女も
ジャミル級だなあ~……」
「大好きないろはのためならっ!こむぎはがんばるんだもん!はい、
しんちゃん、ひまもちゃんと無事だよ、良かったね!」
「……こむぎちゃん、ありがとねなんだゾ、……ひま~、
よかったぞオ~……」
「ボオ、……あいの、ち、から……、ポッ……」
「たいい~……」
「アンっ!アンっ!」
こむぎはひまわりの無事な姿をしんのすけに見せると、しんのすけも
ほっと安心した様だった。
「……あのね、こむぎ……、何だか恥ずかしいから……、そ、
そろそろ下ろして……」
「わん?」
「……ち、畜生っ、このバカアマめ……、もう一人隠れてたのか、
舐めやがってからにい~……」
「あっ!?」
こむぎに張り手を喰らった荒くれ、ヨロヨロしながら再び起き上がると
隠し持っていたバタフライナイフを取り出す……。
「てめえ、ふざけてんじゃねえぞ……」
「……み、皆っ!掛れーーっ!!今度は僕らで一斉に総攻撃だーーっ!
こむぎちゃん、いろはちゃんを守っていて!」
「分かったよっ!」
アルベルトが慌てて号令を掛けると同時に、仲間達も一斉に
戦闘態勢を取る。
「「おおお~っ!!」」
荒くれがまだダメージから完全に立ち直らない内にと、ダウド、
アイシャ、そして、アルベルトも荒くれに飛び掛かって行った……。
「このガキ共~っ!!何しやが……ふぎゃあああーーっ!!」
哀れ荒くれ、暴走お子様集団にあっという間に伸される……。
案外大した男では無かったらしいが……。
「ボオ!はな、みず、だい、……かいてん!」
「ほいっ!」
「……キャンっ!キャンっ!」
「……ぎゃあああーーっ!!きたねえーっ!くっせええええーーっ!!」
止めはボーちゃんの回転鼻水攻撃、しんのすけの半ケツ
生おならである……。そして、さっきの仕返しにシロも
荒くれの足に噛み付き反撃モードに出る。
「オラ、もう、うんちでる爆発寸前だからくさいよ?」
「ぐ、ぐえええええ~……」
荒くれは気絶しそうになるが、こむぎが荒くれの目の前で腰に
手を当てて、怒りモードになった。
「……よくも大好きないろはをいじめたなっ!わたし、本当に
おこってるんだからっ!……許さないわん!……めっ!」
「……ぎゅっぴいいい~っ!!」
チビも男の前に立ち塞がり、男を威嚇する……。
「……な、あんだああっ!?ひいっっ!ド、ドラゴンだとおっ!?」
「ジャミルを何処に連れて行ったのっ!?赤毛のお団子頭の
女の子だよ、言わないとっ……!!おじさん燃やしちゃうよおおっ!!」
チビは荒くれの目の前で思いっ切り炎のブレスを吐いた……。
「ひいいいっ!?分ったっ!こ、小娘のいる場所まで連れて行く、
ちく、しょう……、本物のドラゴン……、ぬいぐるみじゃ……、
なかった、のか……」
荒くれはそのままコテンと……、本当にその場に気を失ってしまった……。
作品名:zokuダチ。セッション18 冒険編2 作家名:流れ者