ヒロアカ世界でありそうな事~人気調査2~
【君はヒロインにはなれない】
「何を読んでいるの?」
中学3年の初め頃、C組の女子生徒『弓川旭』は自分の席で少女漫画を読んでいたら男子生徒に話しかけられた。彼女が顔を上げると...其処には大人しそうな外見をした少年が立っていた。だが、少年は何処と無く冷たい眼で弓川を見ており、彼女も少年が誰なのかを知っていた。
「えっ...B組の四世君?」
それは『四世調』だった...基本的に大人しい男子生徒だが、いざという時に凄まじい行動力と根性を発揮して“悪”と見做した相手を潰す事で有名な少年である。何でも...人の顔を見ると平行世界で出版とかされている“創作物の登場人物”としての役割や評判が分かるのだという。その能力で小学6年生の時、担任が高校時代にクラスメイトを虐めで自殺に追い遣ったという過去を周囲に暴露して退職に追い込み、去年は未来に強姦幇助の罪を犯す予定の少年を学校から追い出したと聞いている。学校の皆は問題を起こす彼を厄介者と思うと同時に...彼の“個性”を頼りとしている面もある。
「あのさぁ...ちょっと、それ読ませてくれない?」
「うん...いいけど」
大人しい性格で臆病な弓川は他人の視線に敏感だった...だから、解ってしまった。調が“悪役”を見る眼で自分を眺めている事にである。彼女は恐る恐るという感じで読んでいた少女漫画を調へと渡す。周囲の生徒達は調の態度から弓川の“役割”が好ましいモノではない事を察していた。一部の生徒達はニヤニヤとした顔で弓川を見ている。調は少女漫画を読みながら独り言の様に呟いた。
「ふぅ~ん!中里舞衣さんみたいだね...」
「!?中里...舞衣...?」
弓川は聞き覚えの無い名前に呆気に取られた表情で聞き返してしまう。調は白い眼で彼女を見ながら口を開いた。
「あぁ...ヒロインだよ!ヒ・ロ・イ・ン!」
「ヒ...ヒロイン?」
「そうだよ...君が登場する予定の物語のね...」
どうやら、中里舞衣というのは...弓川が登場する物語のヒロインらしい。そして、彼女はヒロインを悪い意味で引き立てる役割みたいである。調は少女漫画を片手に持ちながら弓川を見下ろしながら言葉を続ける。
「あのさぁ...君はもしかして、自分もこの漫画のヒロインみたいになれる!とか思っている?」
「えっ!?」
「この漫画のヒロインも大人しい子だけどさぁ...物語のヒロインとして大事な場面では活躍出来る強さがあるじゃないか?」
「うん...」
弓川の返事を聞いた調は周囲で見ている生徒達にも判るレベルに明らかな怒りを籠めた表情で再び尋ねる。
「君......もしかして...自分もそういう場面に遭遇した時、そんな風に行動出来るとか思ってんのか!?」
「!?......」
調の顔には“お前が言うな!”という言わんばかりの嫌悪感と怒りが籠められており、そんな彼の怒りを前にした弓川は明らかに怯えている。だが、周囲の生徒達は誰も助けない...調は厄介者の正義マンだが...間違った事を言わない熱い男だと信用もしているのである。
「失礼だよ!中里舞衣さんにも!この漫画のヒロインにもさぁ!!」
「......」
弓川は目尻に涙を溜めながら席に座ってジッとしている。調は“個性”の影響でこの世界に売っている漫画やゲーム、放映されているアニメにも何処かの平行世界で登場人物が生きていると思っている。なので...どんなに内向的な性格でも大事な人の為に勇気を振り絞った行動が出来るヒロインに敬意を抱いていた。調は弓川の前に拳を差し出していた。
「君の“正体”を教えてあげるよ...手首を掴んで」
「えっ...?」
「君がまだ知らない...“読者と作者(みんな)”が知っている姿こそが本当の君だよ」
「うっ...うん」
弓川が調の手首を握ると彼女の脳裏に弓川が登場する物語が流れて来た...それは冤罪で陥れられた少年が周囲からの迫害で心身を壊し、冤罪が晴れた後も弓川を始めとした偽善者達の所為でとうとう精神疾患になる姿や最初から最後まで己を支えてくれたヒロインと結ばれる姿が描かれていた。その中での弓川の役割は無実を訴える少年を信じず...謝っても受け入れて貰えず...誰もいない教室で...もう帰って来ない少年の机を拭いている...惨めな偽善者だった...苦しむ少年の心を親身になって支えた中里舞衣や碓井という少年と違って
「......」
「分かっただろ?君はヒロインにはなれないんだよ」
「うぅぅぅ...」
「これからは...それを踏まえて生きるんだね」
「うっ...うぇぇぇえええん!うわぁぁぁあああん!!」
自分に対する情けなさと少年への罪悪感で泣き出してしまった弓川を調は冷たく一瞥すると......彼女を放置して教室を出て行ったのだった。その顔には強い決意が宿っていたのを誰も知らない。後日、泣き出した弓川のおかげで教師達に呼び出されたが、調は屹然とした態度で彼らに対して自分の視た物を伝えた上でどんな処分も受け入れる事を言い放った。幸い...調は暴力も振るわず、弓川に“真実”を伝えただけだったので説教を受けるだけで済んだ。弓川が登場する舞台である進学校はこの世界にもあったが、彼女は其処へは受験せず、明智学園の高等部に上がらず、別の学校へと進学したのだった。
『うわ...アイツ!マジでいいとこ無いわ♪』
『カワイソ~!リョースケくん!』
『マジモンの陰キャだな...優しさってのが無いわ♪』
『あぁ、アイツはマジで中里って女の子の引き立て役として生まれて来たんだな』
『自分で傷付けた相手の、もう帰って来ない奴の机を拭くとか...自分に酔ってるだけだろ』
『一番大事な時に行動出来なかった癖にな』
『いるよねぇ~...加害者の癖に“私って可哀想”って顔をしている奴』
『......僕も舞衣さんと恋がしたいな』
『......うん、私もこの子となら友達になりたいな』
『......』
調が伝えた“真実”から報いを受けた弓川の自己肯定感は著しく下がり、物事への積極性も低下して抜け殻の様な人間になってしまったという。彼女が自分の変えようの無い性質を受け入れて生きられるかは...調にも...彼女が出て来る物語の主役達にも関係無い話である。
【僕は君を助けに来たんだ】
「ねぇ、君が山本亮助君?」
「えっ...君は誰だい?」
都内の中学に通う少年『山本亮助』が家へと入ろうとした時だった。見知らぬ少年が話しかけて来たのである。見慣れない制服を着た、大人しそうな少年である。だけど...眼に強い意志を宿っているのが初対面でも理解出来た。見知らぬ少年は自分の事を明智学園に通っている中学三年生『四世調』と名乗った。
「あのさぁ...初対面でこんな事を言うのも何だけど...君に話があるんだ。少しでいいから時間を貰えないかい?」
「えっ...何で?」
「僕さ...“個性”で君の未来を知っちゃったんだよね...」
「......俺の未来?」
「うん...君って〇〇高校を受験するつもりじゃないかい?この近くにある進学校の...」
「あぁ、そうだけど」
「何を読んでいるの?」
中学3年の初め頃、C組の女子生徒『弓川旭』は自分の席で少女漫画を読んでいたら男子生徒に話しかけられた。彼女が顔を上げると...其処には大人しそうな外見をした少年が立っていた。だが、少年は何処と無く冷たい眼で弓川を見ており、彼女も少年が誰なのかを知っていた。
「えっ...B組の四世君?」
それは『四世調』だった...基本的に大人しい男子生徒だが、いざという時に凄まじい行動力と根性を発揮して“悪”と見做した相手を潰す事で有名な少年である。何でも...人の顔を見ると平行世界で出版とかされている“創作物の登場人物”としての役割や評判が分かるのだという。その能力で小学6年生の時、担任が高校時代にクラスメイトを虐めで自殺に追い遣ったという過去を周囲に暴露して退職に追い込み、去年は未来に強姦幇助の罪を犯す予定の少年を学校から追い出したと聞いている。学校の皆は問題を起こす彼を厄介者と思うと同時に...彼の“個性”を頼りとしている面もある。
「あのさぁ...ちょっと、それ読ませてくれない?」
「うん...いいけど」
大人しい性格で臆病な弓川は他人の視線に敏感だった...だから、解ってしまった。調が“悪役”を見る眼で自分を眺めている事にである。彼女は恐る恐るという感じで読んでいた少女漫画を調へと渡す。周囲の生徒達は調の態度から弓川の“役割”が好ましいモノではない事を察していた。一部の生徒達はニヤニヤとした顔で弓川を見ている。調は少女漫画を読みながら独り言の様に呟いた。
「ふぅ~ん!中里舞衣さんみたいだね...」
「!?中里...舞衣...?」
弓川は聞き覚えの無い名前に呆気に取られた表情で聞き返してしまう。調は白い眼で彼女を見ながら口を開いた。
「あぁ...ヒロインだよ!ヒ・ロ・イ・ン!」
「ヒ...ヒロイン?」
「そうだよ...君が登場する予定の物語のね...」
どうやら、中里舞衣というのは...弓川が登場する物語のヒロインらしい。そして、彼女はヒロインを悪い意味で引き立てる役割みたいである。調は少女漫画を片手に持ちながら弓川を見下ろしながら言葉を続ける。
「あのさぁ...君はもしかして、自分もこの漫画のヒロインみたいになれる!とか思っている?」
「えっ!?」
「この漫画のヒロインも大人しい子だけどさぁ...物語のヒロインとして大事な場面では活躍出来る強さがあるじゃないか?」
「うん...」
弓川の返事を聞いた調は周囲で見ている生徒達にも判るレベルに明らかな怒りを籠めた表情で再び尋ねる。
「君......もしかして...自分もそういう場面に遭遇した時、そんな風に行動出来るとか思ってんのか!?」
「!?......」
調の顔には“お前が言うな!”という言わんばかりの嫌悪感と怒りが籠められており、そんな彼の怒りを前にした弓川は明らかに怯えている。だが、周囲の生徒達は誰も助けない...調は厄介者の正義マンだが...間違った事を言わない熱い男だと信用もしているのである。
「失礼だよ!中里舞衣さんにも!この漫画のヒロインにもさぁ!!」
「......」
弓川は目尻に涙を溜めながら席に座ってジッとしている。調は“個性”の影響でこの世界に売っている漫画やゲーム、放映されているアニメにも何処かの平行世界で登場人物が生きていると思っている。なので...どんなに内向的な性格でも大事な人の為に勇気を振り絞った行動が出来るヒロインに敬意を抱いていた。調は弓川の前に拳を差し出していた。
「君の“正体”を教えてあげるよ...手首を掴んで」
「えっ...?」
「君がまだ知らない...“読者と作者(みんな)”が知っている姿こそが本当の君だよ」
「うっ...うん」
弓川が調の手首を握ると彼女の脳裏に弓川が登場する物語が流れて来た...それは冤罪で陥れられた少年が周囲からの迫害で心身を壊し、冤罪が晴れた後も弓川を始めとした偽善者達の所為でとうとう精神疾患になる姿や最初から最後まで己を支えてくれたヒロインと結ばれる姿が描かれていた。その中での弓川の役割は無実を訴える少年を信じず...謝っても受け入れて貰えず...誰もいない教室で...もう帰って来ない少年の机を拭いている...惨めな偽善者だった...苦しむ少年の心を親身になって支えた中里舞衣や碓井という少年と違って
「......」
「分かっただろ?君はヒロインにはなれないんだよ」
「うぅぅぅ...」
「これからは...それを踏まえて生きるんだね」
「うっ...うぇぇぇえええん!うわぁぁぁあああん!!」
自分に対する情けなさと少年への罪悪感で泣き出してしまった弓川を調は冷たく一瞥すると......彼女を放置して教室を出て行ったのだった。その顔には強い決意が宿っていたのを誰も知らない。後日、泣き出した弓川のおかげで教師達に呼び出されたが、調は屹然とした態度で彼らに対して自分の視た物を伝えた上でどんな処分も受け入れる事を言い放った。幸い...調は暴力も振るわず、弓川に“真実”を伝えただけだったので説教を受けるだけで済んだ。弓川が登場する舞台である進学校はこの世界にもあったが、彼女は其処へは受験せず、明智学園の高等部に上がらず、別の学校へと進学したのだった。
『うわ...アイツ!マジでいいとこ無いわ♪』
『カワイソ~!リョースケくん!』
『マジモンの陰キャだな...優しさってのが無いわ♪』
『あぁ、アイツはマジで中里って女の子の引き立て役として生まれて来たんだな』
『自分で傷付けた相手の、もう帰って来ない奴の机を拭くとか...自分に酔ってるだけだろ』
『一番大事な時に行動出来なかった癖にな』
『いるよねぇ~...加害者の癖に“私って可哀想”って顔をしている奴』
『......僕も舞衣さんと恋がしたいな』
『......うん、私もこの子となら友達になりたいな』
『......』
調が伝えた“真実”から報いを受けた弓川の自己肯定感は著しく下がり、物事への積極性も低下して抜け殻の様な人間になってしまったという。彼女が自分の変えようの無い性質を受け入れて生きられるかは...調にも...彼女が出て来る物語の主役達にも関係無い話である。
【僕は君を助けに来たんだ】
「ねぇ、君が山本亮助君?」
「えっ...君は誰だい?」
都内の中学に通う少年『山本亮助』が家へと入ろうとした時だった。見知らぬ少年が話しかけて来たのである。見慣れない制服を着た、大人しそうな少年である。だけど...眼に強い意志を宿っているのが初対面でも理解出来た。見知らぬ少年は自分の事を明智学園に通っている中学三年生『四世調』と名乗った。
「あのさぁ...初対面でこんな事を言うのも何だけど...君に話があるんだ。少しでいいから時間を貰えないかい?」
「えっ...何で?」
「僕さ...“個性”で君の未来を知っちゃったんだよね...」
「......俺の未来?」
「うん...君って〇〇高校を受験するつもりじゃないかい?この近くにある進学校の...」
「あぁ、そうだけど」
作品名:ヒロアカ世界でありそうな事~人気調査2~ 作家名:ブロンズ・ハーミット