ヒロアカ世界でありそうな事~人気調査2~
「正直さ...今の君にとって辛いモノを見せるかも知れない...!」
「......」
「でも!あんなのを見て見ぬ振りは出来ないんだ!!」
調の眼は真剣であった。そして、亮助には解った...彼が他人の為に一生懸命になれる人間である事を...自分の為に会いに来てくれたのを理解してしまった。調は右手を亮助へと差し出して来た。
「僕の能力は視たモノを君に伝える事が出来る。見た後で後悔しても、僕を罵っても構わない」
「分かった」
亮助は調が差し出した手をギュッと握り締めた...この見知らぬ少年への信頼を籠めながら...それから、彼の脳に自身が主人公である物語が流れて来た...松田有希というクズ女達の所為で婦女暴行の冤罪を掛けられ、母親や幼馴染を除いた周囲の人々から見放されて迫害を受けた一年後に冤罪が晴らされ、奴らから手の平を返される事、自分との和解に執着した姉の所為で精神を病んだ挙句に統合失調症になってしまった事、自分の精神を守る為に姉を認識出来なくなる事、最後まで自分を支えてくれた幼馴染『中里舞衣』と結婚して終わった。
「大丈夫かな?少しキツかったかい?」
「......」
亮助の心には姉と父親への怒りと失望感、まだ見ぬ犯人達と偽善者達への激しい怒りが渦巻いていた。
「今のは...何?」
「僕の個性は...」
調は亮助に自分の個性を説明し始める...平行世界で出版とかされている“創作物の登場人物”としての役割や評判が分かるのだという。
「つまり...今のは平行世界の未来で本当に起こった事だと?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、父さんや姉さんは...あんな奴等だっていうの?」
「人間ってさぁ...普段は取り繕っているけど...困った時に“本性”ってのが出るモノだと思うよ?」
「......そうだね」
母親と麻衣、そして、まだ見ぬ親友は物語の最初から最後まで自分の味方だった...多分、自分から裏切らなかったら何も変わらないだろう。己の保身を優先した挙句に自分以外にも犠牲者を増やした父親(クズ)や他の偽善者達と違い、周囲に流されずに自分自身の眼で亮介を判断した上で“心”から味方になってくれる人間である。本当に大事にするべきなのは...そういう人間だと思う。記憶の中の自分の言う通りに...そして、亮助は気付いた...目の前の少年が彼女らと同じ眼差しを自分に向けているのを
「ありがとう」
「えっ...?」
「何も関わりの無い俺の為に...此処まで来てくれて!教えてくれてありがとう!」
亮助は頭を下げてお礼を言っていた。目には涙が溜まっている。調は少し戸惑いながら頭を上げる様に促す。
「気にしなくてもいいよ...僕が意地の為にしているんだし」
「うん、ありがとう」
亮助が頭を上げたのを確認すると...調は話を切り出す。
「あのさぁ...あの物語と今の君の境遇で違いってある?“個性”以外で...」
「特に無いよ...伯父さんがジャーナリストなのも母さんが働いているのも一緒だ」
「じゃあさ...君のお母さんと伯父さんにも同じ物を見せたいんだけどいい?」
「......いいよ。俺はもう父さんや姉さんを信用出来ない」
「僕があれを見せて...“反省する”や“知っていれば、そんな事はしない”だの言っても?」
「うん...俺はアレを見せられて...アイツらを信用出来る様なお人好しじゃないよ」
アイツら...とは父親や姉以外にもいる事を調は察していた。でも...それを咎める事をしなかった。面識の無い...悪いイメージのある相手を受け入れるのは...よっぽどのお花畑ではない限りは無理だろう。多分、調の両親みたいに...彼の母親や伯父が“可能性の話”だの言っても亮助はこれからの人生で犯罪者共は勿論、クラスメイト(予定)を始めとした進学校の連中や父親と姉を絶対に信用しないだろう。
「分かった...じゃあ、スマホの番号を渡すからお母さん達の都合が付いたら連絡してよ」
「うん」
「じゃあ、元気でね」
「ありがとう」
それから、
「なっ!?今のは!?」
「えっ...今の誠之くん!?」
「今のが...君達の幼馴染の“正体”だよ」
「「......」」
「なぁっ...何だ!?今のは!?」
「有希と公平......あんな事を...その所為であの人が...!?」
「あなた達には同情するよ」
「すまない...」
「間違いだったの?あの子達を産んだ事が...?」
「私は......何て事を...」
「お前は教師失格だ...元々向いてなかったんだよ」
「...あぁ...!」
「文香?何て事だ!」
「最低よ...気持ち悪い!」
「あのクズ女を放置するとどうなるのか?解った...?」
「「......」」
「今の...私?...何て酷い事を...」
「解った?あんたは自分で思っているほど...賢くも無ければ、善人でも、優れた人間でもないのさ」
「......」
「主人公の彼はあんたに関わらないつもりらしいよ?精々...彼と遭遇しない様に生きるんだね?」
「......止めて...!」
「偏差値の高い進学校で成績優秀な優等生で美人だからって調子に乗ったんだよな?でも、勉強が出来るのと...賢いのと本当に人間として強いのとは別問題なんだよ!中里舞衣さんや碓井君みたいになぁ!!」
「......止めてよぉ!!」
「忘れるなよ!あんたにとっては身に覚えの無い話だろうけど!あんた達が馬鹿で情けない偽善者だってのは!あんた達の知らない場所で“読者(みんな)”が知っているんだからな!!この恥ずかしい悪役がぁ!!」
「分かってる!分かったわよぉ!!」
それから少し経って...亮助の母親は彼と一緒に家を出てマンションへと引っ越した。離婚はしていないが、亮助も母親も父親(クズ)への信用は地に落ちているので“財布”として彼を利用するつもりらしい。世の中には取返しの付かない失敗というモノは確かに存在する。それが例え...未来の話でも被害者である亮助は赦せなかったのだろう。父親本人も想定外のトラブルに陥った時の己の醜態に絶望しており、原作同様に仕事へと逃げている。
『最低だわ......あなた、自分の保身の為に逃げているだけじゃない!』
『コイツは酷い......亮助が統合失調症になるまで追い詰められるなんて』
『私は何をしているんだ......言う事為す事...間違ってばかりじゃないか?』
『違う!こんなのはデタラメだ!!私が亮助にこんな事をする訳が無い!!』
作品名:ヒロアカ世界でありそうな事~人気調査2~ 作家名:ブロンズ・ハーミット