キメツ学園の世界に転生した転生者達が徒党を組んだお話:オマケ
アルバイト先を追い出されていた高橋は元々岩崎流剣道教室の息子『岩崎洋助』の事が嫌いだった。実力が無い癖に経営者の息子というだけで偉そうな顔をしていた馬鹿の事が大嫌いだった。だけど、彼の近所には岩城流剣道教室しか無く、家庭の経済状況から其処しか選択肢が無かったのである。なので、適当に愛想笑いをして洋介とは距離を取っていたのだ。だが、中学二年生の時、鬼神教と名乗る複数のネット民達が洋介と剣道教室を誹謗中傷をし始めたのである。彼らのやり方は其処らのネットでしかイキるしか能の無いネット民と違い、洋助と彼に味方をする者達への凄まじい悪意に満ちており、本気で彼らを破滅させようとしているのが彼にも理解する事が出来た...高橋自身はその場にいなかったが、鬼神教は洋助と奴の腰巾着しかいなかった時、剣道教室に乗り込んで奴等に暴行を加えた事もある。鬼神教は全裸で四つん這いになった洋介の背中に何度も竹刀で叩いた後、奴の尻に竹刀を突き刺した時の映像をネット上で公開している...無修正の物をである。直ぐに削除されたが...幾らかは拡散されており、持っている人はいるだろう。他にも門下生が道で歩いていたら水をぶっかけたり、石をぶつける、腐った卵をぶつけるといった嫌がらせを行っていた。
鬼神教が現れる前は67人の生徒がいたが、彼を含めた全員の個人情報が“犯罪者予備軍”としてSNSに掲載されており、近所の貯水槽が設置されている施設にリストを送られて注意喚起されてしまった。店長が言っていた通り...市内で全国ニュースになる毒物混入事件が起こったので警察から事情を聴かれる羽目となってしまったのだ。そんな事を思い出しながら高橋が歩いていると人気の無い場所で聞き覚えのある声が聞こえて来たのである。
「離せ!離してくれぇ~!!」
大勢の顔を隠し、お揃いの黒ジャージが着用した男達の内1人に羽交い絞めされた全裸の少年が叫んでいた。件の剣道教室の息子であった。洋助は既に殴られた様であり、顔を腫らしている。泣きながら助けを求める少年に大柄で引き締まった身体をした男が洋助の顔面を殴った。格闘技の経験があるだろう...腰の入ったパンチである。
「ぎゃっ!!」
洋介を羽交い絞めにしていた男が手を離すと大柄な男は洋助の頭に両手を回して拘束すると奴の顔面や腹に膝蹴りを連続で叩き込み始めた。ムエタイで言う首相撲という技である。
「がっ!げぶっ!」
大柄な男は洋助をボコボコにしている。首を絞められているので彼は呼吸が出来ず、苦しそうにしている。クズ野郎への凄まじい攻撃に周りの男達も愉快そうに見ていた。そして……男がある程度殴って満足したのか拘束を解くと洋助はその場に崩れ落ちた。彼の顔は鼻が曲がり、前歯が何本も折れて出血しており、眼球にも痣が出来ていた。顔面だけなく彼の体格にあった鍛えられた肉体の至る所に青あざが出来ており、所々に血も出ている……誰が見ても大怪我であったが、男達は動じず...内4人が懐からスタンガンを取り出した。その4人は洋助に近寄ると1人が奴の頭髪を掴んで起き上がらせると洋助の身体にスタンガンを押し当てたのである。
「ぎゃあああぁぁぁ!!」
全身に走る電撃の激痛に洋助は悲鳴を上げて身体を痙攣させている。そして、男達は一斉にスイッチを入れた……先程よりも強烈な光と音が生じる!それはまるで爆弾だった。気絶していた洋助を電撃で無理矢理覚醒させたのだ。彼はもう声も出せないのか口をパクパクさせて必死に酸素を吸おうとしているが、かなり苦しそうにしている。だが、男達はそんな彼の事情などお構いなしに再びスタンガンを押し付けた!!今度は1人ずつではなく3人がかりである。
「あがあぁぁぁ!!」
電撃での苦痛に加えて3人がかりの攻撃に洋助は頭がショート寸前の状態となっている。それにも関わらず、男達はスタンガンを連続で押し当てる。もう悲鳴も上げられないのか彼の口からは涎と呻き声しか出て来ない。そして……何度もスタンガンを押し当てられている内に変化が現れ始めた。
「ぎゃっ!ひぐっ!ぎゃぁ!」
大きく目を見開いて涙を流しながら奇声を上げ始めたのである。身体中に異常な量の脂汗を出しており、小刻みに痙攣している。それを見ながら男達は愉快そうに嘲笑っている。男達の眼には狂気が宿っており、遠目から見ている高橋は身動き出来ない程の恐怖を感じていた。助けようなんて思考は微塵も無かった...もしも、飛び出したら、後で報復を受ける事は確実である。高橋自身...“毒殺流剣術”の一員だと思われているのだから
「今回はこれでいいか♪」
「あぁ、もしも、警察に被害届を出されたら......この情けねぇ姿を公開して始末してやろうぜ!」
「!?」
「俺達もコイツらもゴミだ!だから、ゴミ同士で戦争開始だ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
「狂ってる......本当に狂ってるんだ......!!」
高橋はそう呟きながら...ヨロヨロとその場を後にしたのだった。その後......彼は深海魚の様に高校生活を送り、卒業後に地元を出たのだった。一方、ボコボコにされた洋助は翌朝に近所の住人達に発見されて病院へと搬送されたのだった。