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炎柱を知る(甘露寺編)

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元来より裏表のない性格である煉獄だが、常に威厳をまとい、頼りになる炎柱として張り詰めている印象があった。誰よりも強くて優しくて、笑顔を絶やさない人。
そんな煉獄が、こんなに気を許して話すことができている。

そして辛い過去があったのであろう猗窩座も、自らの過ちから逃げずに前向きに笑うことができている。


「煉獄さん、猗窩座さん」

「む」「ん」


両手に持っていた饅頭を風呂敷にそっと置いて、甘露寺は右手を高々と挙げて正々堂々と宣言した。


「甘露寺蜜璃は!猗窩煉を全力で応援します!!」

「あか、れん…?」

「おお!良い闘気だ!お前俺と鍛錬しないか?」

「ええっ?ちょっと貴方たたたたた鍛錬だなんてダメよそんなの!煉獄さんがいるんでしょ!?男の人は一途じゃなきゃ!」

嬉々として提案する猗窩座の膝を甘露寺は容赦なくはたき、室内にはぱあん!と清々しい破裂音が響いた。
その力強さにぞっとして顔色を変える猗窩座には目もくれず、甘露寺は一人捲し立てていく。

「夜の鍛錬なんて軽々しく口にしちゃいけないわ!これからお二人で励むなら私はここで待たせてもらうけど差し支えないかしら!?」


大興奮とばかりに自身の両肩を抱き締めて真っ赤になっている甘露寺を、猗窩座は未知の生物でも目にしたように唖然として眺めていたが、あまりの恥じらいようにはっとした。


「…お前、とんでもないエロ柱じゃないか」

「貴方が節操なしに誘うからじゃない!」

「誰がお前なぞ閨に誘うか。俺は杏寿郎にしか興味はない。柱に持ちかける鍛錬といえばひとつしかないだろう」

「あ……もしかして鍛錬って本当の鍛錬のことなのっ?きゃー!私ったら!もうっ、紛らわしい言い方しないでほしいわっ」


照れ隠しによる甘露寺の張り手がもう一発猗窩座の膝にぱあん!と炸裂する。
何気ない一撃のようでこの威力。見かけは女だがやはり侮れない。猗窩座は考え、にっと笑った。


「さすがは杏寿郎の元継子だ。お前のことは認めてやっても良い」

「本当?じゃあ煉獄さんとの夜の鍛錬も見せてくれるのっ?」

「情事の杏寿郎はすごいぞ。雄みもあるのに儚く、ひたすら色っぽい」

「まあ…!」


甘露寺が瞳を輝かせたそのとき。

空気が、震撼した。
風が吹いているわけでもないのに障子ががたがたと音を立てる。畳の目からいぐさが反り返り、甘露寺と猗窩座は全身が全方位から抑えつけられるような強烈な圧迫感に言葉を詰まらせた。

煉獄が、陽炎すら見えそうな揺らめく怒気を発して二人のあいだにゆったりと仁王立ちになる。


「…甘露寺」

「ひっ」


動くことを許さないほどの重苦しい重圧を携えて、煉獄がぐっと拳を振り上げる。
甘露寺が咄嗟に首を竦めてぎゅっと目を閉じると、ぽかっと脳天に優しい拳骨が落ちてきて。


「し、師範…?」


恐る恐る目を開けて見上げると、背後に燃え盛る怒気をそのまま従えた煉獄が笑顔を浮かべていた。
ただし、その額や首筋には幾本もの青筋が浮き上がっている。


「今夜は泊まっていくと良い。千寿郎の隣の部屋を使いなさい。布団の場所はわかるな?手土産をありがとう。美味かった」

「は、はい…」


肩透かしを食らいつつも、恐怖のあまり力が入らない足腰を叱咤して慌てて立ち上がろうとする甘露寺の横を、首根っこを掴まれた猗窩座が廊下へと引き摺られていった。
その途中、なんとも嬉しそうな顔の猗窩座がこちらにひらひらと手を振る。


「またな、蜜璃」


あれほどまでの暴力的な気をぶつけられて喜んでいる猗窩座に、変態的な何かを感じずにはいられない。

れ、煉獄さん怖かったわ…
猗窩座さんは嬉しそうだったけど、このあと何が起こるのかしら……生きていればまたお話ししたいわ。
名前まで呼んでもらえたし、もっと仲良くなれたら良いのだけれど…


どうにか立ち上がり、甘露寺がドキドキしながら部屋をあとにした頃、別の部屋では。


「杏寿郎!先程の闘気は凄まじかった!鳥肌が立ったぞ!」

「…見損なったぞ。明朝、俺は君を陽光に晒そうと思う」

「ま、待て、…何をそんなに怒っている?」

「君は人の気持ちを推し量ることが出来ないのか?俺との行為を安易に他人に吹聴するその口、今削ぎ落としてやるから顔を貸せ。ほら、こっちに来なさい」

「ぶ、物騒だぞ杏寿郎…!」

「俺が悲しむことはしないと宣いつつも、矜持を踏みにじることに微塵も厭いはないらしい」

「そ……そんなつもりは…。…すまなかった」

「む…、揶揄っていたわけではないのか?」

「あ、あれは褒めたつもりだった…。いや、褒めるというか…自慢したんだ。元継子で今は柱…付き合いが長そうなあいつに、俺だけが知る杏寿郎がいると…」

「君…」

「……悪かった」

「なるほど。君の心理は理解した。しかし俺の痴態など、君以外に知られたくはない。今後は控えてくれ」

「…わかった。ならば俺だけのお前の痴態、拝ませてもらってもいいか?」

「この流れでそれはなしだろう!」

「いやありだろう!匂いを嗅がせろ杏寿郎!」

「断るっ!」

「ほんの少しで良いんだっ」

「甘露寺がいるんだぞ、自重しろ!」


そんな犬も食わない応酬が、明け方まで続いたのだとか。

fin.
作品名:炎柱を知る(甘露寺編) 作家名:緋鴉