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zoku勇者 ドラクエⅨ編1 性悪天使降臨

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「……もうすぐ神の国からお迎えが来るかもしれないのに……、
エルギオス……、あなたは等々戻らなかった……、……はっ……」
 
「よ、よう……」
 
「ジャミル、何時から其処にいたの……」
 
「いつからって、ずっとだけど……、さっきまで皆と話してたさあ……」
 
「そう……、もしもさっきの私の独り言が聞こえてしまったのなら
すぐに忘れなさい、……いいわね、さあ、もう行きなさい、オムイ様の
所に行くのでしょう……」
 
ラフェットはジャミルの顔を見ず、淡々と話す。この間も彼女と
イザヤールが話していた、エルギオスと言う、タブーらしい単語。
忘れろと言っても度々出てくる為、異様に忘れられなくなって
しまっていた。しかし、ラフェットの曇りがちな複雑な表情を覗い、
今はこのまま一時的に忘れてやろうと思った。
 
「分ったよ、じゃあ、俺、ボケ爺さんの所に顔出したら世界樹の
所に行ってみるよ」
 
「ジャミル……、ボケ爺さんじゃないでしょ、オムイ様でしょ!
ちゃんと呼びなさい!……全くもう!」
 
「!あ、ああ、そうだったかな……、じゃあ!」
 
ジャミルは慌てて誤魔化し、急いでその場から逃げようとする。
……その時はもう先程俯いていた彼女は呆れた様な表情をし、
しっかりジャミルの方を見ていた。
 
「ジャミル……」
 
「ん?」
 
「あなたの頭上に輝く光輪はあなたに天使としての様々な力を
与えてくれているの、大切にしなさい……、人間達に姿が
見えないのも、星のオーラを得る事が出来るのも全ては光輪の
たまもの、……天使は人間にその存在を決して知られてはならない、
けれど、頭上の光輪が有る限り大丈夫なのよ……、さあ、今度こそ
もう行きなさい、呼び止めてしまってごめんなさいね……」
 
「うん、いいのさ、またな……」
 
ジャミルはラフェットに後ろを向いたまま手を振る。ラフェットも
その後ろ姿を見送るのだった。
 
「何だか……、どうしたのかしら……、これきりあの子にもう
会えなくなる様な……、どうして……?……あの時と同じ感じだわ……」
 
そして、オムイの部屋に訪れたジャミル。オムイは一足先に
イザヤールと世界樹の元へ向かったそう。護衛の天使によると、
イザヤールからの報告を聞いたオムイはとても嬉しそうであり、
あんな表情の幸せそうなオムイ様はこれまで見た事がないとの事。
 
「じゃあ……、俺も行ってみるかね、世界樹の所に……」
 
ジャミルは外に出て、再び世界樹の元へと向かう。……まーたこの糞長ぇ
階段登んのかよとウンザリしつつ。
 
「ああ、ジャミルか、さっき、オムイ様とイザヤール様がこの階段を
登って行ったぞ!お2人が世界樹に向かったと言う事は、もう何かが
起きるのは間違いないな!」
 
……しかし、爺さん元気だなあと思いつつ、ジャミルもしぶしぶ後を追う。
オムイがどうか途中で昇天していない事を願いつつ……。登っている
最中でも途中、色んな天使と出くわす。皆、もうすぐの神の国への迎えに
心を躍らせている様子だった。
 
「世界樹には星のオーラのパワーがブリブリみなぎってるわ!此処に居ても
何だか凄い力を感じるの!後は果実が実るのを待つだけよ!」
 
「おねいさ~ん、見て~、ほ~ら、オーラのパワーもぶりぶりー!
ぶりぶりー!」
 
〔げんこつ〕
 
「……おバカっ!おほほ、ウチの子がどうもすみませ~ん!」
 
「いやああ~ん……」
 
「……」
 
母親は生ケツを出し、左右にひょこひょこ動き始めた子供に
制裁を加えると慌てて退場。変な親子天使である。
 
「なんかどっかで見た事有る様な……、ねえ様な……、まあいいか……」
 
長い階段を抜け、そして、根っこの部屋を通り、漸くオムイと
イザヤール、2人がいる世界樹の元へと……。
 
「おお、丁度良い処に……、ウォルロ村の守護天使ジャミルよ、見よ、
この世界樹の輝きを……、星のオーラの力が満ちて今にも溢れそうでは
ないか……」
 
「う、うっ……、すげえ……」
 
ジャミルは一瞬目を瞑る。あまりの世界樹の輝く眩しさに。
漸く眩しさに慣れ、改めて目の前の世界樹を見つめる。
……世界樹は黄金の光で満たされている。天使達は本当に……、
もうすぐ神の国へ導かれるのかも知れなかった……。
 
「あとほんの少しの星のオーラで輝きは実を結ぶ、女神の果実が実る時、
神の国への道は開かれる……、我ら天使は永遠の救いを得る……」
 
「そして、その道を誘うわ天の箱舟……、ジャミルよ、お前の持つ星の
オーラを世界樹に……、私とオムイ様の推測が正しければ、いよいよ
世界樹は実を結ぶであろう……」
 
「世界樹になる実は女神の果実と呼ばれるそう、女神の果実実りし時、
天の箱舟が我らを迎えに来ると言い伝えられておる、いざ!天駆ける
天の箱舟に乗り、神の国へと帰ろうよ!……じゃよ!」
 
オムイはジャミルに向かってピースサインする。何ともファンキーな
爺さんであった。
 
「さあ、ジャミルよ、星のオーラを世界樹に捧げよ、これが終わりなのか?
……それとも全ての始まりなのか?今こそ明かされよう!」
 
「ああ……」
 
ジャミルは頷くと、世界樹へ近づいて行く。そして、世界樹の前に立ち
両手を掲げ星のオーラを捧げる……。世界樹はこれまでで最高の輝きを
放つ。ジャミルは再び目を瞑り、眩しさを堪えるのだった。
 
「……おおおお!何と……、黄金の果実が!」
 
「遂に……、遂に……、実を結んだのですな!」
 
「……う……」
 
聞こえてきたイザヤールとオムイの歓喜の声にジャミルも目を開き、
目の前の世界樹を改めて見つめる……。等々世界樹に実った黄金の果実……。
これで、これで漸く……、天使達のお役目も終わるかと思われた。だが……。
 
「おお、オムイ様、あれをっ!」
 
「……天の箱舟じゃ!」
 
頭上に現れし、天駆ける天の箱舟……、間も無く天使界に降り立つ……、
筈であった。
 
 
だが。……裁きの時、運命の瞬間……、その時は訪れる……。
 
 
「あ、あ……、あああ……」
 
「……ジャミルっ!?」
 
その時、何が起きたのか……、誰にも分らなかった。その場にいた
イザヤールも、オムイも、……ジャミル自身でさえも。突如下界から
放たれた謎の閃光……。
 
全てを貫いた。崩壊していく天使界……。天使界を襲う凄まじい揺れ。
下界へと落下していく黄金の果実……。傷付いたジャミルも全てを失い、
地上へと落下していく……。落下していく瞬間、彼が覚えている事は……。
何処までも下へと落ちて行く自分、無残に散らばり何処かへと
飛ばされていく背中の翼……。
 
そして、自分の名前を必死に呼び、誰かがその手を差し伸べようとする。
だが、彼はその手を掴む事は出来なかった。地上へと落下する際、
彼は何時か何処かで誰かから聞いた地上の物語をうっすらと思い出した。
それは伝説なのか本当なのか……。
 
ロウで作った翼で空を飛び、太陽へと挑み敗北した哀れな男の話を。
ロウの翼は太陽の熱で無残に溶け地上へと落ちて男は死んだ。
多分自分も今、そんな状態なのだろうと……、薄れゆく意識の中で
そう思った。