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【APH】諦めと達観

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「重ぇよ!!俺の上から、とっとどきやがれ!!」
「え〜?重くないよ。それより、プロイセン君、かまってよ〜」

 薄ら寒い、暖房などそんな上等なものあるはずない寒い寒すぎる事務室にはお粗末なただ板きれを組み合わせたような棚とその棚に入りきらない書類が溢れ、ダンボール箱が詰まれている。後は年代物のスチールのデスクと軋む椅子があり、そこにはプロイセンがいるだけである。
 どさりとロシアが持ち込んだ目の前に置かれた書類の山にプロイセンはこめかみを引き攣らせたものの、何も言わずにその書類の束に物凄い速さで目を通し、サインをし、上司に提出するものと再提出の判を押して仕分けていく。プロイセンの仕事を増やすべく書類を持ってきたロシアはのんびりとそれを観察していたが、早々に飽き、プロイセンの背後に回ると圧し掛かってきた。それに、プロイセンは冷たい机面から顔を5センチ浮かせ、今にもへばりそうな腕の力だけで、体勢を維持し、視線だけをロシアに寄越し、噛み付いた。

「お前に構ってるヒマなんかあるか!大体、仕事持って来たのはテメェだろーが!!」

「そうだけど。僕を構うのもプロイセン君の仕事だよ?」
ぎゃんぎゃんと犬のように吠えるプロイセンにおっとりとロシアは返し、微笑んだ。
「んなの、俺の仕事じゃねぇ!!構ってもらいたきゃ、バルトか姉ちゃんか、妹んとこ行きやがれ!!」
「えー、ヤダよ。プロイセン君、構ってよ」
ぐっと体重を掛けられ、その圧力に屈し、プロイセンの頬はぺたりと机に張り付く。
(…何なんだよ?…っとによ)
北に来てからと言うもの、異様なまでにロシアに懐かれている。最初は戸惑うばかりだったが、今やすっかり慣れてしまった。慣れざる得なくなった…と、言うべきか。…何だか、ぐったりと疲れて、プロイセンは息を吐く。その吐息すらも白い。この部屋、一体、何度なんだよと思いつつ、背中にべったりと張りついて離れないロシアをプロイセンは見やった。
「仕事、片付けたら構ってやるから、取り敢えず、どけ」
「やだ。今、構ってよ」
べったりと張り付かれ、ロシアの首に巻かれた褪せたベージュのマフラーの擦り切れた端っこがプロイセンの頬を掠める。ロシアが片時も離さないそれ。プロイセンはちょっとくらい構ってやるかと僅かに身じろいだ。
「…お前さ、そのマフラーいつもしてるよな。かれこれ、数百年くらい?」
作品名:【APH】諦めと達観 作家名:冬故