【APH】諦めと達観
この身体を維持し、西に全てを返すその日が来るまでは。
「うん。そうだね。君の心臓だもんね」
骨と薄い肉、皮膚の守るその上を、繊細なものを撫でるように這う指。ぴたりと鼓動を確かめるように押し当てられたどこまでも冷たく、凍えた手のひら。
…怖くはない。だから、大丈夫だ。
その冷たさに竦みそうになる身体に言い聞かせ、プロイセンは何事もなかったかのように、書類へと手を伸ばす。
「ロシア、今日の夕飯、何?」
「姉さんがボルシチ作るって言ってたよ」
「そりゃいい。あったまりそうだ」
忙しなく仕事を再開したプロイセンの薄い背中にロシアは耳を押し当てる。
…やっぱり、君がもっと全部欲しいな。
偽ることすらやめたプロイセンのやさしさは酷く心地よく、ロシアの耳に響いた。
オワリ
補足※カリーニングラード
元プロイセン領ケーニヒスベルク。東プロイセンの古都で元ドイツ騎士団領でもあった。今はロシアの飛び地。バルト三国とポーランドに挟まれてる。冷戦下、軍事都市、ソ連側にとって不凍港、バルト艦隊の主要軍港でもだったこともあり、外国人の出入りが厳しく規制された閉鎖都市であった。やがて、ソ連の社会主義の崩壊と共に、その煽りを受け、経済が崩壊、治安が悪化した。現在は某上司の奥様の出身地と言うこともあって、かなり復興している模様。
作品名:【APH】諦めと達観 作家名:冬故