zoku勇者 ドラクエⅨ編7 ……いつもあなたと・2
「ああ、モン、話は終わったよ、また世界樹の処に行くんだ、戻ろう……」
「モンーっ!このお兄ちゃんが遊んでくれたモン!」
「はは、この子可愛いね、モンスターなのにこんなに懐いちゃって……、
しかも天使界に来ちゃうとか前代未聞だよ、……やっぱりジャミルって
何か変な電波と言うか、何かを呼んじゃう変わったオーラがあるよね!」
「変モンーっ!」
「……るせー!おい、モン、お前も同調してんじゃねえってのっ!たくっ、
オラ行くぞっ!」
「モォ~ン!ばいばいモン!」
「ははは、ばいばい!」
天使は苦笑いしながら蟹股で歩いて行くジャミルを見送りつつ、
モンに手を振った。
「……さてと、これでアタシも天使界にアンタを送り届けるって
言うお役目、無事果たせたワケね、なんかアンタもこれからまた
大変そうだけど、頑張ってね、一応応援しといてあげるわ、そんじゃ
アタシもやることあるから、ジャミル、短いつきあいだったけど、ま、
これからもおたがいガンバロ、んじゃ、ばーい♪」
「……あ、おい!……い、行った……のか?」
サンディはジャミルの身体から離れると何処かへ飛んでいった。
……一応、これでうるせー奴からは解放されたのかな……、と、
思ってみるが。
「ジャミル、……本当は寂しいモン?」
「ば、バカ言うなよっ!お前はっ!……よし、デコピンするぞ?」
「……イギャーモン!ジャミルのバカモン!」
「……あのなあ~……」
ジャミルはブツブツ言いながら、何となく複雑な気分で、再び世界樹の
元を目指しモンを連れて歩き出した。
「う~ん……」
「ジャミル、どうかしたモン?」
「折角だから……、情報収集もしていくかなと思ってさ、俺がいない間、
此処の皆はどうしてたのか……、色々聞いてみるかなと……」
「モォ~ン」
ジャミルは世界樹の元に行く前に天使界の事も聞いてみて回る事に。
そう考えて、いつの間にかある場所まで歩いて来ていた。……あらゆる
情報が沢山詰まった図書室。
「……うえ」
……アルベルトを連れて来れば奴は鼻血を出して喜んだであろうが。
だが此処では普通の人間達は行動出来ない為、無理だが。ジャミルは
中に入るのをためらったが、此処には守護天使イザヤールの親友でも
あるラフェットが普段は仕事をしている。彼女はジャミルが地上に赴く前、
とても心配してくれていた。
「……ちわ」
「あっ、ジャミルだっ!」
「まあ、ジャミル!……ああ、無事で本当に良かった……」
「えへへ、ご無沙汰……、かな……」
中に入ると、ラフェットの弟子の少年とカウンター受付の
女性天使が出迎えてくれた。だが、ラフェット本人の姿は見えない。
ジャミルは心配になるが……。
「ねえねえ、ジャミル、イザヤール様は……、一緒じゃないの?
えっと、ねえ~、あの日ね……、ジャミルが人間界に落ちた後に……、
な、なんでもないよ……、それより、ラフェット様は多分下の階に
いる筈だよ、元気な顔を見せてあげて!」
「ウォルロ村の守護天使ジャミル、本当に良く無事で戻りました……、
天使の力も何もかも全て失っても人間達を救うなんて……、あなたは
本当に天使の鏡だわ……」
「い、いや、俺は別に、そんな……」
「柄にもなく、照れております……、モン」
「……モン、やっぱ一発デコピンしておくか?」
「嫌プップーモン!」
「あの日、天使達は長オムイ様の命で、地上に落ちた仲間の天使達や
女神の果実を探しに人間界へと降り立ったのですが……、それきり
誰一人として戻って来る事はありませんでした……、でも、ジャミル、
あなたがこうして無事に戻って来たのですから、きっと……」
「……」
ジャミルは図書室を後にする。取りあえず、下の階にラフェットが
いる様なので会って行こうと思った。……途中で天使達から色んな話を
耳にする事となる。……天使界は現在、世界樹の力でどうにか持ち堪えて
いるが、既に限界状態である事……、オムイは地上の何処かに邪悪な光を
放った主がいると考え、邪悪な光の源を突き止める為、多くの天使達を
地上へ派遣させたが……、結局、その天使達も皆失ってしまう事となり、
……天使界にはもう僅かな天使達しか残されていない現状だった。
……人間は愚かな生き物、地上に落ちた聖なる女神の果実がもしも
邪悪な人間達の手に渡れば大変な事になってしまう……らしい。そして、
天使達との話の中で、……エルギオス……、再びこの名前を頭に刻む事となる。
「あんなに沢山の天使が地上へと降り立ったと言うに、戻って来たのは
お前だけ……、エルギオス……、これではまるであの時と同じじゃ
ないか……、い、いや、きっと、みんな手こずっているんだよ、そうだよ、
それだけさ……、それよりも、ラフェットを探しているんだろう?其処の
扉の奥に入って行くのをみたよ、早く顔を見せてあげなよ、お前が
行方不明の間、凄く心配していたよ、じゃあな……」
「そうか……、随分と心配掛けちゃったみたいだなあ、に、しても、
エルギオス……、何処までタブーなんだよ……、そろそろ色々ともう
避けられなくなってくる時期だよな……」
……ジャミルはブツブツ言いながら、ラフェットがいるらしき
部屋の扉を開く。中には確かにラフェットがいた。……彼女は
文字が刻まれた石碑の前で祈りを捧げていた。
「……偉大なる天使……、エルギオスよ……、どうか……、ジャミルと
イザヤールが無事にお戻り下さります様……、どうか……」
「ラフェット……、俺だよ、ジャミルだよ……」
「……ジャミル?その声は!……ああ!」
ラフェットは声に気づくと顔を上げ、そして此方に急いで駆けて来た。
「モーン!」
「あ、あああ?……ジャミル、あなた、話は聞いていたけど、
地上に行ってから随分と本当に容姿が変わっ……」
「それ、俺じゃねえから、俺こっち……」
「あ、あああ!ご、ごめんなさい!つい焦ってしまって!私ったら……、
でもジャミル、本当に無事で良かった……」
「うん、色々心配掛けてごめんよ、俺は元気だよ、取りあえずさ、
んで、こいつはモーモンのモン、地上でダチになったんだよ」
「モンです、こんにちはモン!」
「まあ……、この子モンスターなのに……、どうして天使界に……?
それに、とっても純粋で優しい子だわ……、温かい気持ちが伝わってくるわ、
不思議ね……」
「……モォ~ン……」
「い、いや……、純粋かどうかは……、ちょっと目ェはなせば屁ェするわ、
悪戯ばっかしてるしよ……」
「……ブーモンだ!」
……それは明らかにお前に似たんである。
「それにしても……、ふに、ちょい」
「モ、モン……」
ラフェットに腹をくすぐられ……、モンは顔を赤くしている。ラフェットも
モンの腹のぷにぷにの触り心地がいいのか……。
「モンの事についてはちょっと聞いて貰いたい事が……」
「ふにふにふに、ふにふにふに……、ここの処……、い、いやああ~ん……、
も、もしかしたら……」
「あのさ……」
「は!やだ私ったら!つい病み付きになりそうだったわ!」
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編7 ……いつもあなたと・2 作家名:流れ者