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しかし等々力が想像していた内容ではなかったようで、鳥飼は言葉を繋げた。


「明後日だ……明後日という確約を俺にくれ…!」

「か、確約…?」


鳥飼は茶化すでもなく、至って真剣な様子で懇願してくる。
意図がつかめずに問い返すと、膝の上で拳を握り込んでまっすぐ見つめられた。


「明後日になればお前を抱けると思えば、俺は今耐えることができる」

「なんだ、そういうことか。」

覚悟を決めたような顔で何を言い出すかと思えば。

等々力は相手を安心させるように穏やかな笑みを見せ、手を伸ばして固く握られた鳥飼の右手をそっと掬い上げた。

「いいか、羽李。なにも明後日まで耐える必要なんてない」

「っ……え、…それって…、」

戸惑う瞳の中に、期待の色を滲ませる鳥飼。
緊張したようにきつく握り締めたその拳を、指先でそっと撫でさする。浮き出た血管や節の形を確かめるように、丁寧に。
向かいから、ごくりと生唾を飲み下す音が聞こえた気がした。

「い、いや…駄目って颯が言ったんだろ…?そりゃ俺はお前が良いなら今ここでしたって構わないっていうか、寧ろ望むところっていうか」


早口で捲し立てるように言う鳥飼の腕の角度と位置を調節し、等々力は頷いた。


「ここだ。腕の力だけではなく、腰を捻ってその遠心力も拳に乗せると良いのが入る」

「……、…何?」

「腹筋は緩めすぎると後がツラい。全力でいくなら固めておくことをお勧めする」

「……お前、俺に自傷行為させようとしてる?」

「えっ」


唐突にトーンの下がった声に違和感を覚えて顔を上げると、鳥飼が何やら遠い目をして微笑んでいて。
兆してしまった男の象徴を自ら鎮める方法をレクチャーしていた等々力は、逡巡する間を置いてから首肯する。


「確かに、言い方を変えれば自傷行為とも言えるな。」

経験上、加減を誤れば急所への一撃は相当堪える。

「だが問題ない。加減に関して、今の俺の右に出る者はない。自らいくのが心配なら、俺がやろう」


座った姿勢でうまくできるかはわからないが、まあなんとかなるだろう。
膝を擦って鳥飼との距離を詰めると、腕を突っ張って肩を押さえられた。
きょとんとして動きを止める等々力に、鳥飼がぶんぶんと勢い良く首を振る。


「違う…!なんか違う!」

「ど、どうした羽李…」

「俺はそういうのは大丈夫!」

「そうか…?しかし覚えておいて損はない。いざというとき使えるからな」

「いざっていつ!」


嘆く鳥飼とそんな応酬をしていると、複数の足音が聞こえてきた。


「戻りました。随分賑やかですね」

「あ、ボロいけど布団になってるー。みんなで雑魚寝しようよ」


夜のうちに取れる情報を取り終えた面々が帰ってきた。


「ただいま。…なんで二人して膝突き合わせて正座してるの?」


二人きりの時間はあっという間に終わり、少しだけ惜しい気もしたが、等々力は大切な仲間たちを笑顔で迎える。


「みんな、おかえり!」

「全員集まったら情報まとめようぜ」


正座したままのこちら周りを、隊員たちはそれぞれが寝転んだり座ったりと思い思いの体勢で埋めていく。

いつの間にか痛みを与えなくても欲はおさまっており、鳥飼に視線を投げるとどうやら彼も同じようだった。
今回は伝授することはできなかったが、この好調が続くうちはいくらでも教えてやることができるだろう。


「…嬉しそうにしやがって。」

殴られずに済んだ鳥飼の困ったような吐息混じりの声が聞こえて、横目で窺うと目があった。

「あとで、覚えとけよ」

「お互いにな」

「それはまじで勘弁…」


咄嗟に腹を両手で押さえ、本気で逃げ腰になっている男の反応が可愛くて、等々力は声を上げて笑った。


fin.
作品名:加減 作家名:緋鴉