加減、出来ます。
日が傾きかけた夕暮れ時の、鬼國隊の拠点である古雑貨屋の地下。
そこに広がる隊員たちのベッドルームのうちのひとつでは、押し殺した声が溢れては空間に溶け込むということを繰り返していた。
確約こそもらえなかったが、行為の予定を匂わせたのが二日前。
そのときはうまくはぐらかされてしまったが、鬼國隊としての活動に一区切りつけて拠点に戻ってきた時点で、鳥飼には確信めいたものがあった。
そして今、軍服を脱ぎ捨てたインナー姿でベッドに仰向けになった等々力颯が、俺の下で甘い声を必死に押し殺している。
左の手の甲は声を出すまいと口元を覆っていて、少しでも快感から逃れようとしているかのように顔を横に背けていて。
相手の後腔に収めている二本の指を軽く動かすと、整った柳眉が悩ましげに寄った。
「ぅ……っん」
これでもかというほどローションを塗りたくった指が狭い胎内を擦ると、にち、と粘性の水音がたって聴覚を犯してくる。
既に後腔は丹念にほぐしたおかげで熱く熟しており、等々力の雄からは先走りが竿を伝って流れ出ていた。
正直、今すぐにでも挿れたい。奥まで突き入れて、ぐちゃぐちゃになるまで抱き潰したい。
それが本心だが、今回はこの間と同じ轍は踏まないと決めている。欲の赴くまま獣のように抱くのではなく、しっかり理性を保って俺が颯をリードしなくては。
甘く、優しく、ぐずぐずに溶かしたい。
指を引き抜き、等々力の下腹部に手を添える。たったそれだけのことにもぴくりと引き攣る身体が愛しくて堪らない。
そのまま脇腹に手を滑らせて上へと移動させ、インナーをたくし上げた。
白い肌が露出し、胸の突起まで露わになる。薄く色づいているそれはなんだか背徳的で、非常に卑猥に見えた。
「…触ってもいいか?」
「…か、構わないが、面白くもないだろう…?」
戸惑いながらも、左手は口元にやったまま右手でインナーを自ら押さえる相手の姿に、鳥飼はひとり鼻血でも出てしまいそうなほどの興奮を覚えていた。
まるで胸を晒け出してこちらを誘っているかのような構図はシャッターチャンス以外の何物でもない。
もうその姿だけで満足してしまいそうになるが、顔には出さずに冷静な皮をかぶり、人差し指で左の飾りをふに、と優しく押し上げた。
薄い皮膚は柔らかく、まだまだ神経の蕾は閉じたままだ。
等々力からも特に反応らしい反応はなく、ただ恥ずかしそうに睫毛を伏せてこちらの指の動きを注視している。
指先で摘み、弱く揉み、その周囲もほぐしていく。
しばらくそれを繰り返し、突起の先にかざりそうでかざらない微妙な触れ方をすると、等々力がふっと息を吐いた。
「…なんだか擽ったいな」
「…マジ?擽ったいの?」
俗に、擽ったいという感覚は神経が過敏になっているが為に拾うものであり、突き詰めれば性感帯になるという。
鳥飼は小さな好奇心とともに、同様の触れ方のまま指の腹でくるくると円を描いた。
「じゃあこれは…?」
「っ…、」
等々力が息を詰め、僅かに腰を引いた。
「これも擽ったいのか?」
動きを止めずに訊ねると、等々力はインナーを握る手にぎゅっと力を入れ、固く目を瞑って細く息を吐く。その吐息は、耐え忍ぶように震えていた。
「よく…わからないがっ…、ま、待ってくれ…」
「……」
そんな小動物のようにぴるぴる震えながらよくわからないって……うちの大将、可愛すぎやしないか。
鳥飼は溢れ出そうになるどろどろとした愛情を胸の内に必死に押し留めると同時に、もっと強く捏ねくり回して開発していきたい欲望を殺し、全身全霊で手を止める。
嫌だ。やめろ。待て。
これらの言葉も、ちゃんと聞いてやるって決めたのだ。
怖いと言って泣いてしまった姿は堪らなかったが、ただの独りよがりにはなりたくない。
言われたとおり待っていると、等々力が高い位置で押さえていたインナーをのろのろと下ろし、申し訳なさそうにこちらを見上げてきた。…上目遣いで。
「すまない…、そこはやめてほしい」
「…なんで?」
「う……な、なんだかこう…、むず痒いというか……逃げ出したくなる感じがする」
うわあ…
鳥飼は天を仰ぎたくなるような感覚に打ちのめされつつ、顔に出さないよう至極真面目に問い返した。
「痒いなら俺が掻いてやろうか?」
ぐりぐりと指先で引っ掻いてやったら、どんな反応をするのだろう。きっと身体を跳ねさせながら甘い声を上げて、泣き出しそうな顔で俺の名を呼んでくれる。
淫らな妄想に、沸騰した血液が下半身に集まっていく。
が、現実はそううまくはいかず。
「いや、……今日は触れないでくれ」
「…了解。」
振られてしまったが、真っ赤な顔でそんなことを言われては頷かないわけにはいかない。
これから少しずつ、時間をかけて蕾を咲かせていけば良い。
内心落胆しつつ、鳥飼は小さく笑って等々力に触れるだけの口付けをする。
「お前が嫌がることはしたくない。無理に進めたりしないから、安心しろ」
「羽李…」
…もう尻も十分ほぐしたし、息子もとっくに臨戦態勢に入っている。
今すぐにでも挿れて、激しくぶち犯してしまいたい。
落ち着け。平常心だ。
大きく深呼吸をして、心を無にする。
等々力の額や頬、瞼、鼻等、至るところに口付けを落としていく。
目を閉じて甘んじて受け入れてくれている姿がまたぐっとくる。
この端整な顔を歪ませたくて、つい噛み付いてしまいたくなるが理性を強く持って優しいキスの雨を降らせた。



