天空天河 十一
本体の飛流に悔しがられても、髪の毛の飛流は何をすれば良いのか、全くわからない。
梢の上から、床に転がる長蘇を見る事しか出来なかった。
ふッと、髪の毛の飛流に、『膝枕』の心像が浮かび上がった。
本体の飛流がよこしたものだった。
髪の毛飛流が、梢の上から、部屋に降り立ち、長蘇の側に跪き、おずおずと長蘇の頭を抱えて自分の膝の上にのせた。
「あぁ、、飛流か、、、。」
そう言って、飛流の膝をとんとんと指で叩くと、長蘇はす─と寝入ってしまった。
慣れない『魔』力を使って、疲れたのだ。
遠くで飛流が、更に悔しがっているのを感じたが。
髪の毛の飛流では、流れてくる飛流の気持ちを、どうもしょうがない。
金陵の長蘇の側に、戻りたくて堪らない気持ちが押し寄せてきた。
髪の毛の飛流は、長蘇の側に居ることが、自慢にも得意にも思わない。
ただ穏やかな波の様な気持ちで、何とも思う事は無い。
帰りたくて仕方ない本体の飛流だが、主である長蘇の命令は絶対だった。
靖王の側を少しでも離れようものならば、長蘇の逆鱗に触れるだろう。
怒った主は物凄く怖い。
何が分からなくとも、飛流は、それだけは分かっている。
ふつりと不貞腐れた感じが消えた。
飛流が長蘇を探るのを止めたのだ。
夜はまだ長く、深く眠りぴくりとも動かない長蘇に、飛流は困り果てたが、長蘇が起きるまで、このままの状態で居るべきなのだろう。
髪の毛の飛流は感情が乏しく、本体の飛流の様な、主への敬慕の念は湧かないが、自分の膝枕で眠る長蘇は、何よりも大切にすべき主なのだと思った。
勝手に触れてはならないものだと思ったが、
そっと乱れた長蘇の髪を撫でた。
─────十九章 竹簡 糸冬────



