zoku勇者 ドラクエⅨ編18 働く4人組・1
こんなガラの悪そうな客は今までかつてこの宿に訪れた事が無かった。
……事態を見ているアルベルト達も不安が増す……。
「ロクサーヌさん……、あの、私が……」
「リッカ、大丈夫よ、……コホン、お客様……、ご注文を
お伺い致します……」
リッカは不安そうな顔をロクサーヌに向けるが、ロクサーヌは
平常心を保ちながら、もう一度客と向き合う。
「よし、じゃあ、特上のステーキ貰えるかね?」
「……ステーキ……」
ジャミルの耳がピクピク動く。そして顔に青筋を浮かべる。……朝っぱら
からんな、贅沢なモンオーダーしてんじゃねえぞと……。やっぱり腹が
立ってきて、男を殴りに行きたかった。
「……ジャミル、駄目だよ、僕達もそろそろ仕事に動かないとだよ……」
「分かってるよっ、んじゃ、飯も済んだしそろそろ動く……」
「んだとおおっ!?」
アルベルトに又注意されジャミルも席を立とうとするが、又、隣である。
男がロクサーヌを脅し、今にも掴み掛かろうとしていたのだった。
「俺はステーキが食いてえんだよっ!特上肉のよお!何で出来ねえんだよ、
ちゃんとした調理師も此処にはいるんだろうがよおおおっ!!」
「……ロクサーヌさんっ!あのっ、お客様……」
ロクサーヌは大丈夫だからと片手でリッカを制止、男と話し合おうと
する。ロビーにいた他の客は厄介沙汰に巻き込まれまいと、さっさと
部屋に逃げ帰ってしまう。騒ぎを聞きつけた他の従業員達も慌てて
ロビーに集まって来た。
「皆、落ち着いて!……お客様、申し訳ございません、きちんと
メニュー票をお渡しするべきでしたね、うちの宿屋は食事のみで
ご利用なさるお客様は余りおらっしゃられませんでしたので、以後、
気を付けます……、今回は簡単な食事のみ、ご用意出来るのですが……」
リッカもロクサーヌも従業員達も丁寧に一斉に男に頭を下げた。
しかし、ジャミルは段々と苛々してきた。はっきり言ってこんなのは
客でも何でも無い、只の迷惑なチンピラじゃねえかと。お持て成しの
心とやらを大事にするのも大切かと思うが……。言うべき事はちゃんと
言うべきだろうと……。心がモヤモヤしてきていた……。
「フン、分かりゃいいんだよっ!おい、又来るからよ、今度は
ちゃんとステーキの材料用意しとけよ!!」
「あ、お、お客様……?お食事は……」
男は乱暴にドアを蹴り上げ、外に出て行った。どうやら今回は
帰るらしいが、又来ると言っている。どうにか帰ってくれた
スキンヘッド男に、従業員達は一同安堵の溜息を漏らした。
「やれやれ、どうなる事かと思いましたが……、うちの宿屋を
専門レストランか何かと勘違いしている様でしたね……、傍迷惑な……」
「全くよ、嫌だわ……、又来るって言ってたし……、何か対策を
考えた方がいいんじゃないかしら……、警察に言っておいた方が
良くないですか……?」
「あの、皆さん……、どんなお客様でも誠意と真心を持って喜んで
頂ける様、対応させて頂きましょう、うちの宿に来てくれた方は皆、
大切なお客様です、それがうちの宿屋の心ですから……」
リッカは平然と従業員達に明るく言い放つ。だが、従業員達はリッカの
方を見て顔を曇らせる。
「……いつもそう言う訳にはいかないんですよ、リッカさん……」
「えっ……?」
「我々もいつも笑顔で仕事をしていられるとは限りません、特に
真っ向から面と向かって客の相手をする商売なんて、時には得体の
知れない……、悪い客にだって遭遇する事があると言う事です……、
大変なんですよ、人と接すると言う事、……働くと言う事はですね……、
ま、何の仕事でもですがね……、あなたはまだお若い、これから色々な
社会をもっと知って行くのでしょうが……」
「……」
従業員達はそれだけリッカに伝えるとそれぞれの持ち場に戻って行く。
リッカはそのまま無言になり、立ち尽くしていたが、ロクサーヌに
優しく肩を叩かれ我に返る。4人組も心配そうに事の成り行きを
見つめていた……。
「そう……、だね、私ももっと色々勉強しなくちゃ……」
「はあ、帰ってくれて良かったねえ~、本当に、迷惑だよお~……」
「モンモン!モンがおならを掛けてあげれば良かったんだモン!!」
「ま、またモンちゃんてば……、ジャミル……?」
アイシャはきょとんとするが、ジャミルも無言でリッカに近寄って行く。
見ていたアルベルトは、何となく奴がさっきから機嫌が悪くなって
いたのを感じ取っていた。
「リッカ、俺、外行って庭の水撒きしてくるよ、ホース貸してくれないか?
何処にある?」
「ああ、有り難う!えーと、ホースなら……」
ジャミルはリッカからホースが仕舞ってある場所を教えて貰い、
ホースを持ち、1人で外に出て行った。ダウドも何となく……。
ジャミルは機嫌が悪くなってくると、1人になりたがるクセが
あるからである。
「はあ、大丈夫かなあ~……、ジャミル……、何怒ってんのか
知らないけどさあ~……」
そして、1人外に出たジャミルは。何だか異様にヤケになってホースで
水を長小便の様にジャージャーそこら中に乱暴にまいていた。
「……たくっ、くそっ!」
「ちょ、あんた何やってんのッ!通り掛かるお客さんに掛かったら
どーすんのッ!!」
「……ガングロ……」
サンディが妖精モードで飛び出す。ジャミルの虚ろな顔を見て、何となく
サンディも理解した感じ。
「俺、あいつの力になれれば、話を少しでも聞いてやれたら……、そう思って、
少しの間……、此処で手伝いをさせて貰おうと思ったのに……」
「お持て成しの心とやらに苛々してきたカンジ……?図星……?」
「う、う……、返って余計心配になって来たんだよ、何時までも
俺らだって、此処にいられる訳じゃない、さっきのチンピラが
帰った後のやり取りを見てさ、……客じゃねえ奴はどうしたって
客じゃねえんだよ、誰でも何でもお持て成しの心じゃ……、この先
あいつもどうなるか……」
「ま、腕の立つ用心棒さんとかを呼ぶ事も考えた方がいいんじゃネ?
アンタがそう言ってやれば……?はあ……」
サンディは発光体に戻ると姿を消す。残されたジャミルはホースを
持ったままその場に暫く突っ立っていた。
「あなたもリッカさんのアマちゃん根性に苛々して来たんじゃ
ないかしら……?」
「……誰だっ!?……あ……」
「はあい……」
誰かと思えば、暫く姿を消していたレナであった……。
「何だよ、戻って来たんなら早く戻って仕事手伝えっての、今日は
これから客が沢山来るんだぞ……」
「いやよ、私、何があっても戻らないわよ、リッカさんが根性を
改善するまでね……」
「……改善て、……!?」
レナはくすっと笑うとジャミルの鼻に指をくっつけ、悪戯っぽく
クスリと笑う。そして、こう言葉を続けた。
「優しいだけじゃ商売人なんて勤まらないって事、実は私、さっき
こそっと様子を見てたの、あの子はやっぱり甘いのよ、……前に
路上に倒れてたヨッパライを連れ込んじゃって、宿中大騒ぎに
なった事があって、結局、酔いが覚めたらリッカの気持ちで
作品名:zoku勇者 ドラクエⅨ編18 働く4人組・1 作家名:流れ者



