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②五条悟が苦悩しながらも青春を謳歌し大団円を迎える話:黎明後

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●16

 ベランダから遠く、夜の海岸近くを歩く二人の姿を見守っていた。
「あぁいうのが青春っていうのかな──」
 二人の近くにいた呪霊が会話の内容を教えてくれる。不思議と自分には縁のないもののように思えた。
「すぐるー?」
 せいらが目を擦りながらやってくる。
「目が覚めてしまったのかい? 朝まで寝ていても良かったのに」
「えー? 今日はねむらないでオールで過ごすって、さとるも言ってたし、楽しみにしてたんだよ」
 せいらはぶーと頬を膨らます。
「わかったわかった。でも悟とそよかは、帰ってくるまでもう少しかかると思うよ」
 ちらりと遠くにいる二人に視線を向けると、
「えー?」
 せいらが近付いてくる。そしてベランダから二人の姿を見つけた。
「あー。これは、もしかして、もしかしました?」
 にこにこと微笑むせいら。
「そうだね。もしかしたのかもしれない」
「良かったー」
 遠い目をして目に涙を溜めるせいらの姿が不思議でつい見つめてしまう。
「──どうして?」
「え?」
 涙の雫が頬を伝った。
「あれ……」
 せいらが袖で涙を拭う。
「良かったなーと思ったら泣けてきちゃった」
 えへへと恥ずかしそうに微笑むから、つい腕を引いて抱きしめてしまった。
 腕の中のせいらが身じろぎして上目遣いに私を見る。
「すぐる? わたしは大丈夫だよ。ありがとう」
「……」
「心配してくれたんだよね」
 心配して抱きしめたのかと自問自答する。
「──違う」
「ならどうしたの?」
「君は、誰にでも優しいね。博愛とでもいうのか──誰にでも笑顔を振りまいて、無邪気に周囲を明るくしてくれる。私の呪霊に対しても」
 そうだ。せいらは誰にでも優しくて、純粋で。
「私の呪霊が喧嘩をする姿を初めて見たんだ。誰が君のところに行くかって、何を馬鹿なって思ったけど君は呪霊を呪霊として見ていないんだね。ひとつひとつを独立した個として接してくれる」
「……」
「私は生まれて初めて嫉妬した。そして思った。君の特別になってみたいって」
「……私の特別でいいの?」
 せいらは困った様子で微笑んだ。
「すぐるは我慢しすぎているんだよ。笑いたい時に笑って、泣きたい時に泣いてもいいんだから。それは、私の特別にならなくても出来ることなんだよ」
 彼女を独占したいと思う私の気持ちすら、せいらは赦し受け入れてくれる。私の目から涙が溢れ、片膝をついた。
 せいらは優しく私を抱きしめ、耳元で囁く。
「私はずっと前からすぐるのことが大好きだよ。
だからすぐるが本当に私を選んでくれるなら、すごくすごく嬉しいことなの。だから時間をかけてゆっくり考えてみて。ね?」
 目に涙を浮かべながらせいらを見る。
 月光が涙によって屈折して、彼女の背に天使の翼が生えているように見えた。