②五条悟が苦悩しながらも青春を謳歌し大団円を迎える話:黎明後
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──なんか……あったんじゃな?
ホテルで朝食を食べる妾の護衛四人を見つめる。
「おはよう! りこちゃん!」
「おはようなのじゃ!」
じーっと、見つめて何があったのかを推測していた。前髪の……えぇと夏油といったか? 目が赤いの……あれはフラれたか? 可哀想に……どうせ夜通し泣いて枕を濡らしたのじゃろ。せいらはまったく動じておらんな。これはせいらにフラれて泣き明かしたということか──不憫じゃ……。
そして白い頭のグラサンは五条だったか? そよかに朝からこっぴどく言われておるが、にやにやしておる。これは告白→OKの流れか!? カップリング成立!! そよかの彼ぴに……ふふっ、やりおったの!!
サックサクのトーストを口に頬張りながらも、妾は一挙一動を見守っている。ふふふ。人の恋路とはかくも面白いものじゃ。
「理子さん?」
「なーに朝からにやにやしてんだよ。昨日の暑さに頭の中までボイルされちまったか?」
「何を言うておる! 妾はいたって正常じゃ! むしろ主ら! 昨夜は何かあった! 苦しゅうない! 妾に報告せよ!」
「えー? 昨日はねー」
頬を赤らめるせいら。おぉ!?
「ずっとカードゲーム勝負をしていたのよ」
相変わらず表情が読めぬそよか。
「そんで傑が負けて、からし入りシュークリームの山を食べることになってまだ涙目なんだよなー?」
にやにや笑いの五条が夏油の肩に腕をのせる。なんじゃとー!? ずっこーーーッ!! 心の中で派手にひっくり返った。
──
──呪術高専、まもなく高専結界の中に入る。
沖縄からの移動はスムーズだった。そよかと二人並んで座って、見えないところで手を繋いだりして。
「……なんでずっと俺の後ろにいるんだよ」
呪術高専への長い階段をそよかは俺の後ろについて登っている。
「昨日からずっと術式を解いていないでしょう? もし立ちくらみでもしたら大変だわ──なんて……私が悟の前を登っていたら、スカート裾が気になって仕方がないでしょうに」
そんなわけあるかい!
「悟の行動がよまれているな」
そよかにつられるように傑もみんな微笑んでいた。
そしてようやく結界内に入る。
「みんな、お疲れ様」
「高専ついたぞー!!」
傑の横で、せいらが両手を振り上げて無邪気に喜び。
「これで一安心じゃな」
「ですね」
天内と黒井さんが顔を見合わせて微笑みあった。
「悟、本当にお疲れ」
傑の労りの言葉を受けてようやく術式を解く。
「もう二度と御免だ。ガキのお守りなんて」
「さt──」
背中に感じた衝撃、そよかに名前を呼ばれたような気がして振り返った。そよかが意識を失い倒れ込んでくるのを咄嗟に抱き止める。襲撃された? ここは高専結界の中だぞ?
「あーぁ、随分と勘のいいお嬢ちゃんだ。
一番の好機だったのに呪術師一人を行動不能する程度にしちまいやがった。それとも俺の腕が落ちたかな……」
「あんた……どっかで会ったか?」
襲撃者の男の顔……うっすらと見覚えがあった。
「気にすんな。俺も苦手だ。男の名前を覚えんのは」
不敵に笑う男に向かって、呪力を放つと男の身体は空中に吹っ飛んでいく。タイミングを合わせ傑は呪霊を飛ばし、その呪霊は大きな口をあけて男を呑み込んだ。
「そよか!!」
俺の呼びかけに応じることなく、そよかはぐったりと身体を預けたまま動かない。
「そよか!」
せいらが走り寄ってきた。
「傑、天内優先! 先に行け!
──せいら、そよかを頼む!」
「はいっ」
せいらがすぐさまそよかを背負い、傑と共にその場から離脱する。その背中を見送りながら、胸の奥に妙なざわめきが残っていた。そよかの顔色は悪くなかった。傷も、見えなかった。無事、無事だ。今はそう考えよう。
傑の呪霊に呑み込まれても、顔色ひとつ変えず男は呪霊を切り裂いて姿を現した。
作品名:②五条悟が苦悩しながらも青春を謳歌し大団円を迎える話:黎明後 作家名:ますだ



