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綺麗なものだけちょうだい

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綺麗なものだけちょうだい



最近やけにあの二人との遭遇率が高い気がする。あの二人とは池袋最強と最凶の男達。池袋に遊びにいく度、情報屋に至っては学校帰りにも現れては意味の分からないことをまくしたてていく。竜ヶ峰帝人はいい加減少し疲労を感じていた。ただ遭遇するだけならいい。だが、あの二人は顔を合わせる度にそこがどこであろうと喧嘩を始め、街を破壊するのだ。どうしてあそこまで仲が悪いのか。犬と猿だってもう少しは大人しいはずだ。二人の同級生だった新羅ならば知っているかもしれないと思い立ち、セルティを待っている間話しを振ってみた。

「うーん、もともと仲良くはなかったけど、顔合わせれば殺しあうくらいになったのは、いつだったっけ、ああ!そうそうなんか一回くっついてっていうか、セフレって呼べばいいのかな?僕はセルティ以外となんてセックスしたいと思ったことないからよく理解出来ないけど、そんな感じになってねぇ、それはすぐ終わったみたいだけどそれ以降かな?ああまで傍迷惑に憎み合うようになったのは」

頭が真っ白になった。

「帝人くん?どうしたの?」

どうもこうもない。ふつふつと腹の底から沸き上がるのは怒りだろうか嫌悪だろうか。裏切られたような気がするなんて、なんてバカバカしい。つまり、今ままで帝人は盛大な痴話喧嘩に巻き込まれていたというだけなのだ。臨也が事ある度に嘘くさい睦言を囁くのも、静雄が不器用に優しくしようとしてくれるのも、つまりはただのカモフラージュだったと。静雄の場合は、毎度毎度巻き込んでしまう帝人に対する申し訳なさだったのかもしれないが。どちらにしろ、当分、いやもう二度と、あの二人の顔など見たくもない。






「はろー!!帝人くん!元気かい?」

「今この瞬間に元気じゃなくなりました。はやく帰って休みたいので失礼します」

「え、え?どうしたの?」

表情を消した帝人に不穏な気配を察し、臨也は真面目は顔を作る。丁度その時、怒声と破壊音がびりびりと空気を震わせた。

「いぃいざああやああ!!!また竜ヶ峰に近づきやがって!!」

うわ、来ちゃったよと舌打ちをするより早く、帝人は盛大なため息をついた。それに怯んだのは自動喧嘩人形。普段は静雄に対して臨也より数段やさしく接する帝人の、今までにない態度に、野生の本能が警鐘を鳴らす。

「ふたりともいい加減素直になったらどうですか?僕をダシに使うのはもうやめてください。鬱陶しい」

冷め切った目で忌々しげに吐き捨てられた言葉の意味がつかめず、二人は困惑した。

「俺はいつでも素直だよ。臆病者のシズちゃんと違ってね!」

いちはやく自分のペースを取り戻した臨也が笑顔で答える。

「あなたがたの性的嗜好なんてどうでもいいですが、僕を巻き込まないでください。迷惑です」

いつになくきっぱりはっきりと拒絶され、ショックを受けた静雄の手から、変形した標識が滑り落ちる。

「帝人くん?どうしちゃったの?」

「み、帝人?」

「痴話喧嘩に巻き込まれるのはゴメンだという話です」

「はあ!?」

「ああ!?何言ってんだお前!」

「新羅さんから聞きました。付き合っていたんでしょう?あなた達が顔を合わせる度に喧嘩するようになったのはその後からだと。お互い未練があるからじゃないですか。もういい加減素直になって向きあってみてはどうですか」

「新羅の奴余計なことを!!」

「んー、まあそんなこともあったけどね。でもあれだよ、ぜんっぜんそんな感情はなかったし、好奇心っていうか?俺もお年頃だったしねー☆そんな経験もしてみたかったってだけだよ。っていうか、本気であんなの過去の汚点だよ!!あそこまで具合悪いなんて思わなかったしー。今は俺は帝人くん一筋だよ」

「てめえ!こっちだってあんなもんトラウマもんだ!思い出したくもねえ!竜ヶ峰、お、俺が今、す、すすす、すきなのはな!」

「不潔です」

蔑む潔癖な眼差しに、臨也は嗜虐心を煽られて背筋を震わせ、静雄は目に見えて沈み込んだ。

「何をそんなに怒ってるんだい?それってヤキモチ?ならかわいいけど。それとも初恋じゃなきゃだめとか言うの?そんな帝人くんも可愛いけど、あんまり現実的じゃないなあ。俺も23だし?経験があるからこそ帝人くんをリードできるってもんでしょ?」

「そんなことじゃないです」

「じゃあ何だってんだ?」

「やりたいだけなら他あたってくださいってことです」

「違う!俺はちゃんとお前が」

「やりたいだけなら可愛い女の子も男の子もたくさんいるでしょ?その中でも君を選んだ俺の気持ちを疑うの?」

「あなたの気持ちとやらを信じた覚えはありません。何の目的があるのかはわかりませんが、いい迷惑です。くだらない。からかうのもいい加減にしてください」

「っっっ!!!おい!!人の話を聞けよ!!」

耐えきれずに踏み鳴らした静雄の足元で、アスファルトが砕ける。飛んできた小石が腕をかすり、帝人は目を見開いて、後ずさった。その様子を見て少し正気を取り戻した静雄は、我慢だと自分に言い聞かせ、ぎりぎりと歯ぎしりをしながら、愛しい子供を見つめた。その視線の強さに顔を青くする帝人を見て、臨也は守るように颯爽と二人の間に立つ。

「シズちゃん暴力に訴えるのはよくないよー?でも、さすがに俺も傷ついちゃうなあ。新羅がどういう言い方したのかは知らないけど、過去は過去。今は今だよ。簡単に他人を信じないのも賢明だけど、現実に対して盲目になるのは愚かだよ。俺が大嫌いな奴と鉢合わせるってわかっててても君に会いに来るのは、君への愛のためだと思わない?」

「思いません。臨也さんの行動なんていつも気まぐれだし。面白そうだったらどこにだって現れるじゃないですか。それに、それは僕じゃなくて静雄さんに会いに来てるんじゃないですか。いつもいつも二人とも喧嘩しながらどこかに行っちゃうし」

「っ!ふざけんな!俺はお前を巻き込まないためにだなあ!!」

「だーかーらー、やめなよシズちゃん。帝人くんも怪我したくないでしょ?いい加減聞き分けてさ、」

「だからもういいんです。二人とも、そんな軽薄な人だなんて思ってませんでした。さよなら」

「っ、ほんっとムカつくなあ!なに、ここで俺たち二人怒らせて君になんのメリットがあるわけ?」

取り付くしまもない態度に苛立ったのか、単に脅しに路線を変えただけか、臨也も嘘くさい笑みを消して、凶悪な顔を見せる。

「ムカつくならもう会いに来ないでください。もう嫌なんです。すぐにいなくなっちゃうんなら、最初から関わりたくありません」

「お前誰のこと言ってるんだ?」

「…。そういうことかい。俺は、君の幼馴染じゃないよ」

「…正臣は、戻ってきます。だから、他はもういらないんです。確かじゃないものなんてもう」

所在さえ不確かな愛を悼む少年はあまりにも愚かで、ぐちゃぐちゃに踏みにじってやりたい気持ちとそっと手を触れずに見守っておきたい気持ちとの間でぐらぐらと揺れる。

いくら言い募っても聞きやしない。

(そうして、置き去りにした過去のように、きっといつか僕も捨てるんでしょう)