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向日葵が消えてしまった

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「ギルベルト君。今日から此処が君の部屋だよ」

北方の地に連れて来られた俺にあてがわれた部屋は思っていたより大きく綺麗で、驚いたってもんじゃない。
そして、隣でニコニコ笑うイヴァンは本当に嬉しそうな顔をしていた。







「ギルベルト君、此処の生活には慣れた?」
「・・・まあまあだな」
こちらに来てはや一ヶ月。初めの頃は流石に抵抗はしたが所詮そんなものは建前だ。正直そんな体力を失うような事はしたくない。何より面倒だし、正直此処の生活も悪くは無いと思っている。・・・一点を抜かせば、だが。

「ギルベルト君、今度僕と一緒に温室に行こうよ。向日葵が綺麗なんだ」

「お前は本当に向日葵が好きなんだな」

「うん。凄く好きだよ。本当、世界中の向日葵が僕のものになればいいのに」

ちらり、とイヴァンはギルベルトを盗み見る。
彼はまるで向日葵の咲く、夏の日を切り取ったようだと思う。キラキラと輝く黄金色の髪。瞳は蒼く澄んでおり、夏の晴天を彷彿とさせる。

「……何だ?」

「ううん。ただ向日葵みたいだなって思って」

本当に全ての向日葵が僕のものになればいいのに。







そうしたら君も僕のものだよね?







あれから更に長い年月が過ぎた。勿論国の化身である僕たちには時間などは関係ない。

関係ないということは、老いもしないしかといってその逆もない。……成長途中の国以外だけど。

関係ないはずだった。確かに彼は老いてはいないし、本当に外見年齢は変わっていない。
いや、少しこちらに来て細くなったと思う。細くはなったが力は変わらないのはどういうことなんだろう?

そして一番の変化は、色。

僕の好きな、あの色が消えた。

蒼く、晴れ渡った夏の日のような空の色は、紅い、緋い、まるで血のような紫緋色。
向日葵みたいな金の髪は、月のような銀色。

肌の色も白さを増した。


全てが、全ての色が、僕の好きな色が変わった。


僕の好きな色の彼の色が変わってしまった。

けれど、どうしてかな。

僕の好きな色は消えてしまったけど、彼にはこの色がとても似合っていると思うんだ。





「ギルベルト君」

「……何だ?」

「その色……」

「あぁ……今朝起きたら綺麗に色が変わっていた。それがどうした?」

「ううん。向日葵が消えてしまったと思っただけ」