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回想……そして今……

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始めは元始天尊が優勢だったのだが、封神フィールドを張り続けながらスーパー宝貝を操るのは流石に無理がある。
そして、聞仲と元始天尊の精神力と人間界を想う気持ちのわずかな差が影響したのか、元始天尊は聞仲に敗れた。
「ここまでだな、元始天尊。」
元始天尊に止めを刺そうとする聞仲。元始天尊とその近くにいた私と白鶴童子の三名に命の危機が迫る。
「なっ……何という事じゃ…。」
「これで崑崙は落ちた!!!」
聞仲が禁鞭を振るう。そして、その時…………。

「ククククク……お疲れさまだったな、聞仲…。」
一人の仙人がそこに現れた。彼は聞仲のかつての親友である武成王・黄飛虎も連れていた。
    …………お、王奕…………。
私は彼を一目見ただけで王奕だと認識する事が出来た。しかし今の彼には二百年前の面影は残されていない。
それ以前に、なぜ死んだはずの王天君がここにいるのかが私には疑問だった。
そんな私の疑問をよそに、聞仲と武成王はそれぞれの思いを胸に対峙している。

「よぉ、クソジジイ!!」
二人を見つめていた時、王天君がこちらの方へワープしてきた。
「テメェもヤキが回ったな!」
かつての自分の師を足蹴にする王天君。
しかし、王天君が元始天尊を足蹴にする事を、誰も責めることはできない。
なぜなら、彼こそが王天君の人生を地獄へ導いた張本人。
そして誰一人として壊れて行く王奕を救う事が出来なかったからだ。
………私も含めて………誰も………。
しかし頭ではわかっていても、王天君に一方的に虐げられていく元始天尊を見捨てる事は出来ない。
「おぬしっ!!!」
私は何とか王天君を止めようと思った。
無論、今のあやつが私の言う事を聞くなど初めから思っていなかったが……。
「おっと、やめときなプリンセス。あんた燃費の悪ぃ崑崙を動かしてカラップなんだろ?それじゃあオレは倒せねぇなぁ。」
やはり、あやつは私の言う事も聞こうとしなかった。
まあ当然であろう。私もあの時の約束を破ったのだから……。
王奕が一人になった時、助けに行ってやるという約束を……。
「よい…二人とも下がっておれ……。」
「―――!しかし元始天尊!!」
「これは……わしの業よ……。命令じゃ、下がっておれ…。」
「くっ……。」

私は仕方なくその場を遠退いた。そして、彼らを振り返らずに鳳凰山へ向かった。
王奕との思い出がたくさん残っている鳳凰山へ……。
最後ぐらい一目見ておきたいと思ったのだ。
しかし、鳳凰山はすでに跡形もなく崩れていた。
そして、改めて実感せざるを得なかった。
………王奕はもう心も体も残酷な妖怪仙人になってしまったと言う事を………。
そして、あの頃の王奕はもうどこにもいない。
………私の心の中にも………もうどこにも………。
私と王奕が共に過ごした楽しい日々、前までは鮮明だったその記憶さえも、今ではもうぼやけてしまった。



「公主!」
私が感傷に浸っていた時、一人の道士に後ろから呼ばれた。
「もうすぐ崑崙山は落ちます。あなたも直ちに脱出して下さい!」
「…………………。」
「何を固まっているのですか、公主!早く崑崙山から脱出して下さい!」
「…………楊ゼン…………。」
私はその道士の目を見つめ、今では似ても似つかないある面影を重ね合わせる。
そして、私は無意識の内にその青年をそっと抱きしめた。
「こ、公主!」
青年は頬を赤らめた。
彼からはあの頃の王奕と同じにおいがする。
「王奕………………。」
「………とにかく、ここは危険です。早く行きましょう。」
楊ゼンは私を崑崙山の外まで送ってくれた。





「楊ゼンよ………。」
「?何ですか、公主………?」
「おぬしはこの封神計画で最後まで生き残れる自信はあるか?」
そう問うと、彼は笑いながらこう言った。
「何を今更聞くんですか。天才たるこの僕が生き残らずに誰が生き残るのですか?」
「そうか………そう聞いて安心したよ。」
「何がですか?」
「必ず最後まで生き残るのじゃぞ。おぬしの父や師の分も………。
そして、おぬしと同じく故郷から引き離され、一生を大きく狂わされた王奕の分もな。」
「わかりました、公主。あなたの方こそお体を大事になさって下さいね。」
「私も出来るだけ長く生きれるよう、頑張ってみるよ。」
彼と話していると、王奕の時とは違う、また別の何かに心が満たされているような感じがした。
「僕はもっともっと強くなりますよ。仙界大戦で散っていった僕の周りの人達の分もね。」
「強くなれるよ、おぬしなら………。」
大切なモノを守れるくらい強く、またどんな状況に陥っても自分の力で抜け出せるくらいに強く、
私や王奕の過ちを繰り返さないくらいに強くな………。




後書き
うーむ、自分は竜吉公主と王奕(王天君)のつもりなのですが、
コレはどう見ても竜吉公主と楊ゼンですね………。
しかも表現とかも意味不明な部分が多いし、元始は何時の間にか話から消えてるし………。
まあ書いた奴がアホなので大目に見てください。(をいこら)
ダラダラ長ったらしいだけの駄作を読んでくれた方には感謝します。
limeでしたっ!




◆十年後の後書き

この小説は、私が中学3年生の頃にlime light名義で書いたもので、大手封神サイト、月刊封神様に投稿させて頂いた物です。

物語の補足としては、「王奕の正体=始祖」などといった設定が明かされる前です。

セリフ等には、仙界大戦編でのセリフをそのまま抜粋した個所などもあります。
この物語は、「元始天尊vs聞仲」のくだりを公主視点で私の想像を交えながら書いたものでもあります。


これを書いた少し前に、国語の授業で魯迅の「故郷」を習いました。
国語の授業などで読んだ事がある方は少しピンと来たかも知れません。



もう執筆して10年の時が経つのだな―・・・・・・と何とも感慨深い気分でございます。

「月刊封神」時代に、「lime light」こと私と仲良くして下さってた皆様は、今でも元気にしてるかな?
作品名:回想……そして今…… 作家名:さとし