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正しい馬鈴薯袋の担ぎ方

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「仕方がないな。一応、君の意向も聞いておこう。君は馬鈴薯袋のように担がれるのと、姫君のように抱き上げられるのと、どちらがいいかね?」
「は……?」
 夏目は暫し硬直する。彼の台詞を完全に理解しきれない内に、夏目の視界が一変した。いつのまにか、彼は宗方の左肩に担がれてしまっていたのだ。
 『意向を聞く』などと大嘘も良いところだ。聞く耳など全く持っていないではないか。
「降ろしっ……降ろしてくださいっ! 計画主任っ」
 しかし、夏目の抵抗も虚しく、彼に『もう時間がない』と一蹴されてしまった。周囲の若手尉官達の奇異の視線が、かなり痛い。
「ムナカタ……なんだ、それは」
 ロンメルの呆れたような声が耳に届き、夏目は耳朶まで赤く染めた。
「うちのかわいい分析官君さ。さて、諸君、さっさと移動するぞ」
「降ろしてあげたら、どうだね。涙目になっている」
「いやいや、まだ危険ですからな」
 ぬけぬけとロンメルに対して言う宗方に対し、夏目は叫んだ。
「危険なのは、あなたの方でしょうっ!」
「ほほぅ、どこがどういう風に?」
「だからっ! ……あ……いや……あの……その……」
 宗方の突っ込みに、思わず余計な発言をしそうになった夏目が口籠もる。その間にも、宗方は歩みを進めていた。



 こうして、不本意ながらも、馬鈴薯袋の如く宗方に運ばれていった夏目は、その後暫く、与太作家にからかわれ続けたという……。




(2004.1.19)
作品名:正しい馬鈴薯袋の担ぎ方 作家名:やた子