計画主任と私
しまった。不覚にも、すっかり失念していた。
訓練など受けたことのない、銃もまともに持ったことのない自分では、はっきり言って護衛になどなりえない。しかし、なりえないからといって、ここで彼を独りで放り出すわけにはいかない。そんなことをして取り返しの付かないことになったら、母国の存亡に関わる。
「まぁ、たまには独りもよかろう」
夏目の動揺を尻目に、宗方はさっさと彼を追い越して歩みを進めている。
「ちょっ……ちょっと待ってくださいよっ! そんな単独で行動されては危険です!」
私も行きますからっ。一緒に乗りますよっ。
慌てて彼に駆け寄って腕を掴んで引き留め、そう口にした瞬間、夏目は紛うかたなき地獄の魔王の微笑みを目にした。音をたてて血の気が引き、彼は立ち竦む。
「そうか。それではよろしく頼む」
心底、嬉しそうな宗方の声も右から左へと抜けてゆく。
は……嵌められた……。
どう好意的に解釈しても、無理矢理好意的に思い込もうとしても、嵌められたとしか思えない。だが、既に手遅れだ。
そして……己の粗忽さを心の底から呪いつつ、哀れな羊は涙に暮れることとなる。
(2005.6.5)