コールドハート・ストーンレッグ
通信画面に苛立たしげな顔を見せた芝村は、しかし何も言わない。彼女は僕をどうするだろう。士魂号から降りろというだろうか。司令権限で配置換えを決めるかもしれない。同時に彼女は気づいているはずだ。これからの戦いに僕の力は必要なのだ、と。
君にはわからないだろうな。自由になる足を持ち、戦場を軽やかに駆ける君には、持たざるものの気持ちは理解できない。凍りついた心と動かない石の足を抱えた僕の闇は、きっと。
人の手を借りて士魂号を降りると、加藤が待っていた。青ざめた彼女の顔を見ることなく、背を向ける。
何か言いたげな顔をしていたけれど、僕は何も言わなかった。加藤も気づいたんだろう、僕が人ならざるものになりつつあることを。
それでいい。どうせみんな離れていく。恋人も友人も、みんな僕の元を去っていった。
士魂号だけは裏切らない。僕の足はもう僕を裏切らない。
「――それは違うよ」
ぽつりと、加藤が呟いたのが聞こえた気がしたけれど。
――これが僕の選択肢。コールドハート・ストーンレッグ。
作品名:コールドハート・ストーンレッグ 作家名:すか